日本内視鏡外科学会雑誌 26巻1号 (2021年1月)

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◆要旨:本邦では長期にわたる経腸栄養管理において,経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)が選択されることが多いが,解剖学的な問題などから施行困難な症例も存在する.PEGが施行困難であった6例に,腹腔鏡補助下経皮内視鏡的胃瘻造設術(LAPEG)を施行し,その手術成績を検討し,他の外科的胃瘻造設術との比較について文献的に考察した.全身麻酔下に施行し,年齢77.5歳(31〜81),性別(男:女)6:0,手術時間は32.5分(26〜54),術後合併症は認めなかった.PEG施行困難症例に対するLAPEGは,外科的な胃瘻造設術の選択肢の一つである.

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◆要旨:症例は72歳,男性.胃癌に対する開腹胃全摘,Roux-en-Y再建術の既往あり.血液検査で肝胆道系酵素の異常値を認め,精査目的に当科へ紹介となった.CT検査,MRI検査で,独立して総胆管に合流する右後区域胆管枝と胆囊管との合流部に嵌頓した結石を認め,合流部結石と診断した.胃切除後で内視鏡的なアプローチが困難なため,腹腔鏡下胆管截石術を施行した.胆囊を肝床から遊離した後,胆囊管を縦切開し結石へのアプローチを試みたが,結石を確認することができなかった.術中胆道造影を行ったところ,結石が割れて総胆管と右後区域胆管枝に落下していることを確認し,胆道鏡で截石した.本症例のような異所性胆管と胆囊管との合流部に発生した結石の報告はほとんどなく,非常に稀と考えられたので文献的考察を加え報告する.

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◆要旨:女性におけるNuck管水腫は,腹膜鞘状突起が遺残し体液が貯留した状態であり,男性の精索・陰囊水腫に相当する.治療は主に鼠径部切開による水腫摘出術が行われるが,腹腔鏡下手術の報告は少ない.今回われわれは,成人Nuck管水腫に対する腹腔鏡下手術を5例経験した.平均年齢は40.4歳,右側3例,左側2例であった.鼠径部の疼痛を自覚する者が4例あった.術前にCT検査を施行し,水腫の存在と局在を確認した.手術はtransabdominal preperitoneal repair(TAPP)法にて行った.平均手術時間は97分,平均在院日数は3.6日であり,術後合併症なく良好な経過を得たので報告する.

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◆要旨:患者は38歳,女性.36歳時に胆囊炎に対して腹腔鏡下胆囊摘出術が行われた.また,3回の帝王切開の既往がある.最終帝王切開1週間後より上腹部の膨隆と疼痛が出現したため当院産婦人科を受診し,当初腹壁瘢痕ヘルニアが疑われたため当科紹介となった.腹部造影CTで計測した臍部での腹直筋間距離は40.7mmであり,分娩後の腹直筋離開の可能性があると考えられたが,胆囊摘出術時の臍部ポート孔部に生じた腹壁瘢痕ヘルニアの可能性もあり,疼痛も伴っていたことから手術適応とした.手術は腹腔鏡下に行い,腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復術(intraperitoneal onlay mesh : IPOM)に腹壁縫合を加えたIPOM plus法に準じて行った.術後経過は良好で,術後5日目に退院となった.妊娠・出産に伴う腹直筋離開は,本邦では手術適応とされることは少ないが,離開の程度が高度な場合や有症状の症例では腹腔鏡下修復術が有用である.

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◆要旨:76歳,女性.2年前に大腸癌に対して腹腔鏡下結腸右半切除術後であり,臍部の膨隆と疼痛を主訴に来院し,腹部CTで横径55mmの腹部正中切開創部の腹壁瘢痕ヘルニアと診断された.術前は内視鏡下Rives-Stoppa法を予定していたが,後鞘の緊張が強く寄らなかったことから右側のみtransversus abdominis muscle release(TAR)法を施行し,縦30cm×横15cmのself-gripping meshを用いて修復した.合併症なく術後3日で自宅退院となり,退院時には疼痛は消失していた.術後9か月経過したが,再発や合併症を認めていない.

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◆要旨:症例は66歳,男性.脾腫瘍と腹腔内リンパ節腫大を指摘された.腋窩リンパ節生検でびまん性大細胞性B細胞リンパ腫と診断され,EPOCH療法を開始した.治療開始6日後に突然の左上腹部痛とともに血圧低下をきたし,ショック状態となった.造影CT検査で脾腫瘍破裂による腹腔内出血と診断され,緊急で用手補助腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した.術後合併症なく術後11日目に自宅退院となり,術後12か月無再発生存中である.悪性リンパ腫による脾破裂は稀な病態であり,過去の報告では開腹脾臓摘出術が多く報告されているが,全身状態によっては用手補助腹腔鏡下脾臓摘出術も有用な選択肢になると考えられた.

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◆要旨:症例は60代の男性.大動脈弁閉鎖不全症の精査目的に入院中,便潜血陽性を指摘され,下部消化管内視鏡検査にて上行結腸癌の診断となった.造影CT検査にて小腸が体の右側に偏在し,上腸間膜動脈の左側に上腸間膜静脈が並走するSMV rotation signを認め,腸回転異常が疑われた.手術は腹腔鏡下に施行した.血管の走行異常に注意しながら回結腸動静脈を処理してリンパ節郭清を行った.結腸は広範囲で後腹膜に固定されていたため,結腸の脱転操作を最小限にすべく腸管切除と吻合は体腔内で行った.術後は経過良好であった.腸回転異常を合併した大腸癌に対する腹腔鏡下手術は,解剖の理解と手技の工夫により安全に施行可能である.

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◆要旨:症例は60歳,女性.腹痛,嘔吐にて前医を受診し腸閉塞の診断でイレウス管留置されるも改善なく,手術目的に当院へ紹介となった.直腸癌に対し腹腔鏡補助下直腸切断術,両側側方リンパ節郭清術の既往があり,CTで骨盤左側への内ヘルニア嵌頓を疑って腹腔鏡下腸閉塞解除術を施行した.腹腔内を観察すると,左側方リンパ節郭清後に形成された臍動脈-内腸骨動脈の間隙に小腸が嵌入しており,嵌入を解除してヘルニア門を縫合閉鎖し手術を終了した.以後腸閉塞の再燃は認めない.稀な合併症ではあるが,腹腔鏡下側方リンパ節郭清手技の普及とともに増加が予測され,文献的考察を加えて報告する.

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◆要旨:症例は83歳,男性.両側鼠径ヘルニアに対して腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(transabdominal preperitoneal repair:以下,TAPP法)を施行し,7か月後に右鼠径部痛が出現した.腹部造影CT検査で右鼠径部から腹膜前腔に長径55mmの膿瘍を認め,メッシュ感染と診断し,腹腔鏡下メッシュ除去術を施行した.術後10か月が経過したが,感染の再燃やヘルニアの再発を認めていない.今回われわれはTAPP法施行後のメッシュ感染に対して腹腔鏡下メッシュ除去術を施行し,良好な経過を得られた1例を経験したので報告する.

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◆要旨:症例は77歳,女性.4年前より糞便性腸閉塞の診断で計6回入退院を繰り返した.腹部CT検査と注腸造影検査で結腸全体に著明な拡張と蠕動不良を認め,大腸通過時間検査(放射線非透過性マーカー使用)では服用5日目で結腸内に多数の停滞を認めた.以上より慢性特発性大腸偽性腸閉塞症と診断し,排便造影検査で肛門機能が保たれていたため,大腸亜全摘の適応とし腹腔鏡下大腸亜全摘術を施行した.術後は良好に経過し,腸閉塞症状の再燃なく外来通院中である.慢性特発性大腸偽性腸閉塞症は薬物療法が抵抗性の場合には罹患腸管の切除が有効とする報告が多い.本邦の腹腔鏡手術の報告例は5例と少ないが,腹腔鏡手術はよい選択肢になると考えられた.

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◆要旨:ヘルニア偽還納は稀な病態であり,診断や手術操作が困難であり開腹手術が行われることが多い.今回,腹腔鏡下に修復し得た鼠径ヘルニア偽還納の1例を経験したので報告する.

 症例は72歳,女性.右鼠径部痛を主訴に救急外来を受診した.右鼠径ヘルニア嵌頓と診断し用手還納したが,疼痛が持続した.超音波検査で右鼠径部に囊状病変の内部に拡張した腸管を認め,鼠径ヘルニア偽還納を疑い緊急腹腔鏡手術を施行した.小腸が肥厚した腹膜で嵌頓したまま腹膜前腔に腫瘤を形成しており,偽還納と診断した.腹膜絞扼輪を切開し嵌頓を解除し,transabdominal preperitoneal approach(以下,TAPP)法でヘルニア修復した.TAPP法は嵌頓の解除が簡便にでき,ヘルニア偽還納に対して有用な術式と考えられた.

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◆要旨:[背景]ダ・ヴィンチに次ぐ第2の手術支援ロボットを目指し,腹腔鏡補助器具としてセンハンスが臨床使用されている.今回,センハンスを使用した結腸癌手術を本邦で初めて施行し得たので報告する.[方法と結果]回盲部切除を施行した9例が対象.助手鉗子によるアシストを活用する従来法に準じた方法と助手鉗子によるアシストを活用しないreduced-port surgeryに準じた方法を施行した.年齢中央値71歳,男性4例,女性5例.手術時間は中央値222分,出血量は中央値5ml,術中合併症はなし,Clavien Dindo分類Grade2以上の術後合併症1例,術後在院日数の中央値は6日.[結語]従来の腹腔鏡下手術と遜色ない結果であった.

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投稿時のチェックリスト

編集後記 寺尾 泰久
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 4年前に『日本内視鏡外科学会雑誌』の編集委員にさせていただいた.その頃と比べると編集会議も大きく様変わりしてきた.4年前は医学書院に編集委員全員が集まって編集会議を開催していた.遠方の先生方は会議時間よりも,移動時間のほうが長くなってしまっていたため,1年ほど前からWebで参加と変化していた.現在,コロナウイルス感染拡大の状況下であり,全員がWebでの参加になっている.査読するデータはすべて紙ベースで郵送されてきていたが,これも2年前からはPDFファイルの形式でe-mailで送られてくるようになった.パソコンがあればいつでも査読できるので便利である.2019年1月号から電子版のみとなったが,写真はカラーとなり見やすくなった.いち個人読者としては電子化になって良かったことのほうが多いが,冊子が送られてくることで新刊が出たことに気づき,パラパラ眺めていたので,その点はデメリットである.新刊が出たことを知らせる会員メールから,ポチッとして電子版を眺めることができればさらに便利になるのにと思っている.この点は上申したい.このように編集会議も変化し,あの赤い雑誌が送られてこなくなってそろそろ2年である.『日本内視鏡外科学会雑誌』の表紙は赤であることを知らない会員の先生が出てくるのかもしれない.編集会議の形態は変われど,「読者にとって有意義な情報であるか」の査読基準は変わることなく審査しております.

 本誌の原稿様式は,原著,総説,症例報告,手術手技,私の工夫,短報の6つのカテゴリーに分けられています.送られてくる原稿はほとんどが「症例報告」ですが,これは重要なことだと思っています.医学の進歩は「症例報告」からです.症例の現象を正確に記述し,報告することは非常に重要です.手術内容を正確に記述することで,手術をより深く理解することができ,「手術手技」や「私の工夫」につながると思います.また,症例報告は仮説の形成に不可欠です.その仮説を証明することができれば,「原著」になります.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
26巻1号 (2021年1月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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