日本内視鏡外科学会雑誌 25巻6号 (2020年11月)

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◆要旨:当院で鼠径ヘルニアに対して経腹的腹膜前到達法(TAPP)を2014年より導入した.TAPP導入後の治療成績把握のため,2014年4月〜2018年3月までの4年間で鼠径ヘルニアの手術を施行した患者326人について,2019年4月にアンケート調査を行い,術後成績や合併症に関して前方到達法との比較検討を行った.回答数は215人(69%)で,他病死,小児症例,JHSⅠ,Ⅱ以外のヘルニア,両側同時手術例を除く167人,169症例を対象とし,手術時間,合併症・再発の有無,術後疼痛の期間,満足度について検討した.結果は手術時間以外に有意な差は認めなかった.手術時間については導入初期の症例も含まれているためと考えられた.今後,症例を蓄積することで改善されると考える.

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◆要旨:子宮頸癌に対するセンチネルリンパ節ナビゲーション手術(SNNS)は諸外国を中心に普及が進んでいる.当院では2015年より,子宮頸癌に対するセンチネルリンパ節マッピング手術を開始した.トレーサーとしてフチン酸テクネシウム・インドシアニングリーン・パテントブルーを使用し,センチネルリンパ節を同定後,骨盤リンパ節郭清を行った.手技の習熟を得,良好なセンチネルリンパ節の同定率を示したため,2017年からは限られた症例に対してSNNSを導入した.これまでに16例のセンチネルリンパ節マッピング手術を,13例にSNNSを行ったため,それらの治療成績を後方視的に検討した.手術時間・出血量は,SNNSを行うことにより有意に減少していた.

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◆要旨:症例は75歳,女性.早期胃癌の加療目的に当院へ紹介された.術前の造影CTおよび3D血管構築では,総肝動脈が上腸間膜動脈から分枝し門脈の背面を走行するAdachi VI型の血管走行異常を認めた.精査の結果,胃癌 M, Less, cT1aN0M0 cStage I の術前診断を得て,腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した.通常Adachi VI型の血管走行の場合はNo.8aリンパ節の郭清が問題となるが,本症例では,網囊右側の生理的癒着が軽度であり,右胃大網動静脈の血管茎が通常よりも外側にあったため,No.6リンパ節郭清に時間を要した.血管走行異常症例に関しては,術前3D CTによる血管走行の把握だけでなく術中所見にて周囲臓器との関係を理解することが重要であり,より慎重な腹腔鏡操作が必要と考えられた.

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◆要旨:近年,遊走脾に対する腹腔鏡下脾固定術の報告が散見されるが,単孔式腹腔鏡下脾固定術の報告はない.今回,臍部の創から左側腹部に腹膜外パウチを作成した後に,同創部直下の腹膜を切開し,脾動静脈の捻転を解除しつつ脾固定術を施行した.遊走脾に対する単孔式腹腔鏡下脾固定術は,脾機能が温存でき,整容性にも優れており,有用であると考えられたので文献的考察を加えて報告する.

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◆要旨:食道切除術後の胃管気管瘻に対し,右胸鎖乳突筋弁を用いて胸腔鏡下に気管瘻孔部修復を施行した1例を経験した.患者は55歳男性.胸部中部食道癌,cT3N2M0, StageⅢに対し,術前FP療法後に腹臥位胸腔鏡下食道亜全摘,後縦隔経路頸部胃管再建術を施行した.術後13日目に胃管気管瘻をきたし,再手術を施行した.頸部操作で胃管気管瘻を開放し食道瘻を造設,頭側を茎とする右胸鎖乳突筋弁を作成した.気管膜様部欠損孔は腹臥位胸腔鏡下に胸鎖乳突筋弁で被覆した.患者は合併症なく回復し,再手術後44日目に胃管および遊離空腸を用いた再々建術を施行した.頸胸境界部の胃管気管瘻に対して胸鎖乳突筋弁による修復術は有用と考えられた.

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◆要旨:症例は54歳女性,前日から続く下腹部痛を主訴に当院へ搬送された.開腹歴はないが,子宮筋腫に対して腟式子宮全摘の既往があった.腸閉塞が疑われたため緊急で腹腔鏡下手術を施行したところ,S状結腸腹膜垂と腟断端が癒着し形成された索状物による絞扼性腸閉塞と診断された.癒着剝離を行い,術後3日に軽快退院となった.開腹歴がなく腟式子宮全摘術が原因となった絞扼性腸閉塞は非常に稀であり,若干の文献的考察を加えてこれを報告する.

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◆要旨:症例は51歳の女性である.既往歴として,48歳時に左視床出血に伴う水頭症に対し脳室腹腔シャント(以後,VPS)を造設している.発熱の精査のため,腹部造影CTを施行したところ,VPSが横行結腸内へと迷入している所見を認めた.腹部に圧痛はなく,腹膜刺激徴候も認めなかった.発熱の原因は,VPSを介する逆行性感染による髄膜炎と考えられた.腹腔鏡下にて,VPSの抜去と瘻孔結紮を行った.術後は髄膜炎に対し抗菌薬投与を行った.VPSの消化管穿通は稀に認める合併症であり,逆行性感染による髄膜炎が起こる.治療法はVPSの抜去と抗菌薬治療である.抜去において,低侵襲に適切な処置が行える点から,腹腔鏡下手術は有用であると考えられた.

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◆要旨:稀な成人腸回転異常症に対し,腹腔鏡下に治療し得た症例を報告する.症例は30歳代女性,幼少期からの腹痛の精査,加療目的に当科紹介となった.精査によりnon-rotation typeの腸回転異常症と診断し,腹腔鏡下Ladd手術を行った.腹腔内には膜状のLadd靱帯がかかり,これがヘルニア囊のようになり一部小腸が反時計回りに捻転しつつ嵌入していた.捻転を解除しLadd靱帯を切離して腸管を並べ直して手術を終了した.術後8か月間の症状再燃はない.多彩な病態を示す腸回転異常症において,腹腔鏡手術は正確な術中診断ができ,かつ低侵襲治療としても有用と考えられる.

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◆要旨:食道胃静脈瘤に対するHassab手術において,完全腹腔鏡下に他部位の手術を同時施行した報告は,検索し得た限り1例もない.今回,胃粘膜下腫瘍を合併した食道胃静脈瘤に対し,腹腔鏡下Hassab手術とlaparoscopy and endoscopy cooperative surgery(LECS)での胃部分切除術を一期的に行い得た1例を経験した.症例は72歳女性.非B非C肝硬変による食道胃静脈瘤の増悪および胃粘膜下腫瘍の増大傾向を認めた.胃静脈瘤は胃粘膜下腫瘍上に及んでおり,腹腔鏡下Hassab手術およびLECSでの胃部分切除術を行った.脾機能亢進による血小板減少を呈していたが,術中内視鏡の使用により静脈瘤の消失を確認したうえで胃部分切除術を行ったことにより,安全な腹腔鏡下同時手術が可能であった.

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◆要旨:症例は6か月の男児.活気低下,不機嫌,嘔吐を主訴に,前医を受診した.血液検査で肝胆道系酵素の上昇があり,腹部超音波検査で胆囊結石を複数認め,胆石性胆囊炎と診断された.保存的加療で軽快を認め退院したが,その後1か月で2回再燃した.有症状の胆石症のため,手術目的に当院へ紹介入院となった.遺伝性球状赤血球症などの溶血性疾患,先天性胆道拡張症は否定的であった.腹腔鏡下胆囊摘出術を施行したが,術翌日の血液検査で胆道系酵素の上昇を認め,CTで総胆管内に結石を認めた.胆囊結石の総胆管への落石と考えられたが,保存的加療により術後4日目には自然排石され,術後9日目で退院となった.

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◆要旨:症例は37歳の男性で,下腹部痛を主訴に近医を受診,骨盤内に囊胞性腫瘤を指摘され,当院に紹介となった.腹部CT・MRIでS状結腸間膜内に多房性囊胞性腫瘤が認められた.腸間膜に発生した囊胞性の良性腫瘍と考え,腹腔鏡手術を施行した.病理組織診では,脂肪組織内にリンパ管腫様の部位が認められ,lymphangiolipomaと診断された.術後再発は認められていない. Lymphangiolipomaは非常に稀な良性腫瘍で,他の腸間膜原発良性腫瘍と同様に完全切除が治療の原則となる.今回,lymphangiolipomaに対して腹腔鏡手術で根治手術を施行し得た1例を経験したので報告する.

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◆要旨:ロボット胃切除術が2018年4月に保険収載され,全国的に手術件数が増加傾向にある.われわれは腹腔鏡下胃切除術においてreduced port surgery(RPS)としてsingle incision laparoscopic surgery(SILS)を積極的に施行してきた.da Vinci Xi®などロボット支援手術機器の発達に伴い,その手術手技の経験を生かしてロボット胃切除術でのRPSとしてdual incision robotic surgery(DIRS)を考案し導入した.DIRSとしてロボット支援幽門側胃切除術7例を経験し,合併症なく安全に施行できた.

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欧文目次

投稿時のチェックリスト

編集後記 須田 康一
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 2か月に1回開催される本誌編集委員会は,2018年から医学書院会議室とWeb会議のハイブリッド形式で開催されています.当初は,編集委員が現地に一堂に会することによって生まれる熱気や温度感が感じられなくなることに不安や物足りなさを感じましたが,慣れてくると,移動しなくて済む利便性はもちろんのこと,電子資料を共有できたり,クリアな音声と適度な距離感から討議が活発になったりと,Web会議ならではの利点にも気づくようになりました.

 コロナ禍の長期化により,学会や研究会もWeb化が急激に進んでいます.お盆に開催された第120回日本外科学会定期学術集会では,管理された遠隔地からご献体を用いた手術手技研修(cadaver surgical training:CST)に参加する「remote CST」が日本外科学会CST推進委員会公認で初めて実施され,その概要がWeb配信されました.昨年,日本外科学会には遠隔手術実施推進委員会が設置され,遠隔手術のガイドライン策定に向けた活動が始まっています.本年8月には,本邦初の実用型内視鏡下手術用ロボットhinotoriTM サージカルロボットシステム(メディカロイド社)が泌尿器科領域でPMDA承認を取得し,国産ロボットを用いた遠隔手術プラットフォームの開発も急ピッチで進んでいます.Web配信されるスライドや動画,音声の著作権保護,遠隔手術トレーニングにおけるご献体に対する礼意,遠隔手術における患者個人情報保護や責任の所在など解決すべき課題も多々ありますが,激変する時代の流れとテクノロジーの進化に適応しつつ,本誌ともども新しい外科医療の構築に微力ながら貢献したいと考えています.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
25巻6号 (2020年11月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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