日本内視鏡外科学会雑誌 25巻1号 (2020年1月)

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◆要旨:【緒言】大腸癌の内視鏡外科手術教育を行う際には,安全性と両立させる必要がある.今回筆者らは当院の小切開先行腹腔鏡補助下結腸右半切除術が,教育のために初級者が施行しても手術の質を担保しうるかを検討した.【方法】対象は2014年から2017年に癌に対し上記手術を行った82例で,手術の質の指標を手術時間,出血量,郭清度,リンパ節郭清個数,合併症の有無,術後在院日数とし,術者の経験に応じ3群に分け比較した.【結果】手術の質の指標を3群間において比較したが,有意な差を認めなかった.【結論】小切開先行腹腔鏡補助下結腸右半切除術は,初級者が施行しても質が担保された安全性の高い手術法であり,教育に有用と考えられた.

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◆要旨:患者は75歳,男性.右腰背部膨隆を主訴に当院を受診し,右上腰ヘルニアと診断した.体表アプローチによる修復術を施行し,腹横筋腱膜の欠損部を介してBARD direct Kugel patch®を横筋筋膜背側に留置した.術後2週後に腹部MRIで再発と診断し,術後5か月目に再手術を行った.初回手術による腰背部筋群および後腹膜腔の癒着を懸念し,またヘルニア門の確実な同定,再発形式の評価を目的に腹腔鏡下に修復を行った.ヘルニア門を中心にBARD Ventralight ST®を配置し背側筋膜に固定した.前回留置したメッシュは上腰三角の尾側に位置しており,剝離過程で損傷した腱膜を修復していた可能性が示唆された.腰ヘルニアに対する再修復術の術式として,腹腔鏡下手術は有用と考えられた.

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◆要旨:症例1は59歳,男性.左鼠径部腫脹と疼痛が悪化し当院を受診した.左鼠径部膨隆を認め,腹部CT検査では左内鼠径ヘルニアが疑われ腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した.術中,左内側臍ヒダより内側にヘルニア門を認め,左外膀胱上窩ヘルニアと診断した.症例2は74歳,男性.右鼠径部腫脹が徐々に悪化するため当院を紹介され受診した.両鼠径部に膨隆(右>左)を認め,腹部CT検査では両側内鼠径ヘルニア(右>左)が疑われ腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した.術中,両側とも内側臍ヒダより内側にヘルニア門があり両側外膀胱上窩ヘルニアと診断した.さらに右側は外鼠径ヘルニア,左側は内外鼠径ヘルニアを合併していた.内側臍ヒダの内側にヘルニア門が位置する外膀胱上窩ヘルニアはこれまで稀とされており術前診断は困難であるが,近年の腹腔鏡下手術の普及により,従来の前方アプローチと比較して正確な術中診断と治療が可能となった.外膀胱上窩ヘルニアの確実な診断と治療のためには腹腔鏡下手術が有用と考えられた.

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◆要旨:患者は78歳,女性.腰部脊柱管狭窄症に対して側方経路腰椎椎体間固定術が行われ,その後から左下腹部の膨隆感を訴えるようになった.視触診では腹部皮下の膨隆やヘルニア門を確認できなかったが,腹部CTで左腹直筋外縁と腹横筋間から腸管が脱出していたためSpigelian herniaを疑った.Totally extraperitoneal(TEP)法による修復術を施行した.腹膜前腔の広範な剝離は可能であり,左内鼠径輪の頭外側に腹横筋腱膜の欠損を認め,Spigelian herniaと確定診断した.側方経路脊椎手術後のSpigelian herniaに対してTEP法は有用な術式であった.

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◆要旨:Carney triadはGIST・肺軟骨腫・副腎外傍神経節腫の3病変のうち,2病変以上を合併する症例を1つの症候群として捉えたもので稀な疾患である.今回筆者らはGISTに対する腹腔鏡下胃局所切除後約8年で残胃に発生した計7個のGISTに対し胃局所切除術を施行した1例を経験した.腹腔鏡下胃局所切除術を2か所で行い,集簇した5個の腫瘍はLECS手技で一括切除しえた.Carney triadは複数回の手術を要する疾患である.腹腔鏡下手術は癒着も少なく,今後の手術を行ううえでも適した術式と考える.また最小限の胃切除に留めることで,患者希望があれば胃温存の手術を複数回行える可能性も示唆された.〔なお本報告は2012年に坪井らが報告した症例(日呼外会誌26 : 79-84, 2012)の経過観察中に再切除を行ったものである.〕

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◆要旨:患者は53歳,男性.当院呼吸器外科にて左上葉肺腺癌に対して胸腔鏡下左舌区区域切除術+S8合併切除術を施行した.術中所見で胸腔内に強固な癒着を認め,癒着剝離時に横隔膜を損傷し,自動縫合器を用いて損傷部を縫合閉鎖した.術後5日目に左季肋部痛の増悪と食事摂取困難を認め,胸腹部CT検査にて左横隔膜をヘルニア門とした左胸腔内への胃と大網の脱出を認め,横隔膜ヘルニアと診断した.術後7日目に腹腔鏡下左横隔膜ヘルニア修復術を施行した.腹腔鏡操作にて経横隔膜的に癒着剝離を行い,ヘルニア門を縫合閉鎖した後,横隔膜欠損部に対してsymbotexTM compositeメッシュを用いて被覆し,安全に手術施行可能であった.

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◆要旨:患者は74歳,男性.2002年に他院で早期胃癌に対して,開腹幽門側胃切除術・B-I法再建を施行した既往があった.2016年,血便を主訴に受診し,上部消化管内視鏡検査を施行され,非断端部に13mmの0-IIc病変を認め,生検で高分化型腺癌を認めた.深達度はT1aと考えられたが,瘢痕が高度であり安全なESDの施行が困難と判断し,非穿孔式内視鏡的胃壁内反切除術(non-exposed endoscopic wall-inversion surgery:NEWS)を行う方針とした.手術は5ポートで行い,残胃周囲の癒着を剝離し残胃後壁を露出させ,内視鏡的に病変部をマーキングした.続いて腹腔鏡下に病変部周囲に全周性に漿膜筋層切開を行い,病変を内翻させるように漿膜筋層縫合を行った後に,内視鏡的に病変を切除し摘出した.さらに,腹腔鏡下に縫合を追加し手術を終えた.術後は腹腔内ドレーン排液の軽度混濁を認めたが保存的に軽快し,術後21日目に軽快退院した.病理学的にtub1/tub2, T1a, ly0, v0, HM0, VM0 であり,これ以上の追加外科切除は不要と考えられた.術後17か月経過したが再発なく外来で経過観察中である.

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◆要旨:患者は30代,女性.心窩部痛を主訴に近医を受診し,CTで直径8cm大の脾囊胞を指摘され,当科紹介となった.良性囊胞と考えられたが腫瘍径が大きく有症状であり手術適応と考えられた.若年女性であることから正常脾を温存する方針とした.腹腔鏡下に脾動静脈本幹・上下極枝をそれぞれ確保し,脾動静脈上極枝のみを切離して虚血域に囊胞が含まれることを確認したのちに脾実質を切離し,脾上極を摘出した.術後は合併症なく退院となった.病理組織学的検査では上皮性囊胞の診断であった.脾囊胞に対する腹腔鏡下脾部分切除術は根治性・低侵襲性に優れ,安全性に考慮したうえで実施可能な有用な術式であると思われた.

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◆要旨:患者は71歳,女性.増大する臀部膨隆を主訴に当院を紹介された.画像検査では前仙骨部から後仙骨部にわたる10cm大の囊胞性腫瘤であったが,明らかな充実性成分は認めなかった.経皮的生検を行ったが確定診断は得られなかった.有症状かつ本人の希望もあり,腹腔鏡下,経仙骨的腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は直腸を前方に著明に圧排し,また仙尾骨と強固に癒着していたが腸切除を行わず標本を摘出しえた.病理組織学的所見では粘液癌との診断であった.腹腔鏡下手術が有用であった症例を経験したので報告する.

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◆要旨:患者は66歳,女性.腹部膨満,嘔吐を主訴に腸閉塞の診断で当院を紹介され受診した.減圧後のイレウス管造影で小腸に約5cm長の不完全狭窄像を認め,腹部CTで同部位の小腸間膜内にガス像を認めた.小腸の間膜内穿通に伴う消化管通過障害を疑って手術を施行した.腹腔鏡下に小腸の穿通部位を同定し,小開腹で小腸部分切除術を行った.病理組織学的検査を踏まえて結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PAN)と診断した.術後経過は問題なく,内科でステロイド内服治療を導入し,以降再発なく経過している.PANによる小腸間膜内穿通の報告はなく,腹腔鏡下手術による治療を行った貴重な症例と考えられ報告する.

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◆要旨:患者は64歳,男性.1年前からの左鼠径部膨隆を主訴に受診した.左鼠径部に鶏卵大の膨隆を認め,左鼠径ヘルニアと診断し,TAPP法を施行した.術中所見は左内鼠径ヘルニア,左大腿ヘルニアを認め,右は認めなかった.術後問題なく退院したが,半年後に術後からの疼痛を主訴に再受診となった.再発の所見はなく,しびれや感覚異常,Tinel徴候は認めなかった.前傾姿勢時のみ疼痛を認めることからメッシュによる機械的圧迫によるものと考えた.3か月の経過観察でも改善がないため,腹腔鏡下メッシュ除去術を施行し,術後疼痛の改善を認めている.ヘルニアに関しては二期的にMesh plug法による修復術を施行した.今回筆者らはメッシュ除去により改善したTAPP術後の慢性疼痛の1例を経験したので報告する.

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投稿時のチェックリスト

編集後記 上原 圭介
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 皆様,明けましておめでとうございます.昨年1月より編集委員を拝命致しました,名古屋大学の上原です.初めての大役でまだ毎回,渡邊昌彦編集主幹をはじめ諸先輩方のご指導・ご助言を頂きながら務め,何とか無事に1年が過ぎました.

 1年が過ぎるのはあっと言う間で,平成31年(令和元年)も終わり,令和2年になりました.思い返せば昭和64年(平成元年,1989年),昭和天皇が崩御されたのは私が高校3年生の時です.国民全員が喪に服し,バラエティーは自粛,消費も伸び悩む何か暗いムードの幕開けでした.そんな平成2年には山川達郎先生が日本で初めての腹腔鏡下胆囊摘出術を,平成4年には渡邊昌彦先生が腹腔鏡下大腸切除術を施行されました.しかし,腹腔鏡手術の一般化への道は決して平坦ではなく,厳しい逆風の中で普及に尽力された諸先輩方には感謝致します.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
25巻1号 (2020年1月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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