日本内視鏡外科学会雑誌 24巻6号 (2019年11月)

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◆要旨:左側結腸癌に対する腹腔鏡下手術では煩雑な手技を伴う脾彎曲やSD junctionの授動を要することが多いが,体内再建を行うことで十分なリンパ節郭清範囲を確保したうえで不要な授動を減らすことが可能になると考えた.当科での体内再建(8例)の手技を提示し,体外再建(13例)と手術成績を比較した.合併症に差はなく,手術時間は有意差はないが短い傾向にあり(中央値247分 vs 290分,p=0.10),出血量は少なかった(中央値3ml vs 37ml,p=0.01).腫瘍散布や細菌汚染の懸念もあるため,十分な化学的・機械的腸管前処置,迅速な共通孔縫合閉鎖,十分な腹腔内洗浄を行うことが重要と考えられるが,適応を選べば左側結腸癌に対する体内再建は有用な手技と考えられた.

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◆要旨:【目的】腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)における経腟的検体回収による腟壁・会陰裂傷に関連する危険因子を抽出する.【方法】2014年4月〜2019年4月に施行したTLHで経腟的に検体回収した1,138例を対象とした.裂傷の有無によって2群に分け,患者背景および手術成績を比較した.【結果】51例(4%)で裂傷を認め,経腟分娩歴,術前エストリオール腟錠,子宮重量および横径が裂傷リスクと関連していた.経腟未産婦でもエストリオール腟錠挿入で裂傷のリスクが低下していた.【結論】TLHの経腟回収では検体サイズや分娩歴の考慮のみならず,エストリオール腟錠の挿入による腟粘膜萎縮の改善も裂傷のリスクの軽減に重要と思われた.

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◆要旨:近年,鼠径ヘルニア手術は腹腔鏡下手術,特にtransabdominal preperitoneal approach(TAPP法)が盛んに行われている.TAPP法は各種メッシュを用いた鼠径部切開法と比較して術後疼痛が軽度であると報告される一方で,再手術を余儀なくされる神経障害性疼痛の発症例も報告されることから,後腹膜神経解剖の十分な理解が必須である.腸骨鼠径神経,腸骨下腹神経,および,陰部大腿神経陰部枝は,鼠径部切開法で術中に注意すべき神経としてガイドラインにも記載されているが,TAPP法術中に注意すべき神経の記載はない.本総説では,特に若手外科医師が安全にTAPP法を施行することができるよう,前述の3神経に加え,TAPP法術中に損傷しうる陰部大腿神経大腿枝,大腿神経,外側大腿皮神経の計6神経の走行と注意すべきポイントを述べた.

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◆要旨:患者は64歳,女性.虫垂切除術の開腹歴があった.上腹部痛と嘔吐を主訴に当院を受診した.腹部造影CTにて横行結腸間膜ヘルニアによる内ヘルニアと診断し,同日緊急手術を施行した.腹腔鏡下に観察すると,Treitz靱帯左側の横行結腸間膜にヘルニア門を認め,空腸の嵌入を認めた.ヘルニア内容である空腸をヘルニア囊外へ引き出し,ヘルニア門を切開開放した.ヘルニア囊を形成する横行結腸間膜は平坦となり,腸管の再嵌入は起こらないと判断し,縫合閉鎖は不要とした.経過良好で術後7日目に退院となった.今回,比較的稀な横行結腸間膜ヘルニアに対し,術前に診断し腹腔鏡下腸閉塞解除術を施行した症例を経験したので報告する.

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◆要旨:患者は3歳,女児.排便時に直腸脱を認めるようになり,当科外来へ紹介となった.徐々に脱出が頻回となり,疼痛を伴うようになったため,腹腔鏡下直腸固定術を施行した.術中所見では,Douglas窩にたるんだ直腸を認めていた.直腸を剝離,挙上し,仙骨前面と直腸後壁を縫合固定した.術後2日目に退院し,現在も再発は認めていない.小児の直腸脱には保存的加療が優先されることが多いが,無効時には外科的加療が選択される.腹腔鏡下直腸固定術は成人で広く行われている術式であるが,小児においても,安全に施行することは可能であり,有用な術式であると考えられた.

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◆要旨:患者は84歳の男性で,左鼠径部膨隆および疼痛を認めたため当科を紹介され入院した.腹部CT検査で左大腿ヘルニア嵌頓と診断した.ヘルニア内容は大網と考えられた.腸閉塞症の所見は認めなかったため,待機的に腹膜外腔アプローチによる内視鏡下ヘルニア修復術を行った.内視鏡下に観察すると,大腿輪にヘルニア囊が陥入していた.鉗子による牽引でヘルニア囊を整復し,大腿輪を確実に覆うようにメッシュを貼付した.術後経過は順調であり,第4病日に退院となった.術後5か月が経過した現在,再発や感染の徴候は認めていない.確実な診断と修復が行える腹膜外腔アプローチによる内視鏡下ヘルニア修復術は大腿ヘルニア嵌頓に対し有用な術式である.

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◆要旨:患者は72歳,男性.両側内鼠径ヘルニアに対する腹膜外腔到達法による腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術の12日後に,腹痛と嘔吐が出現し腹部造影CTで右下腹部に狭窄部位を伴う小腸の拡張を認めた.癒着性腸閉塞と診断して手術を施行し,ステープルにより小腸が癒着していたためステープルを除去して通過障害を解除した.腹膜外腔到達法による腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術後の腸閉塞は少ないが,自験例は脱落したステープルが腹腔内に迷入して小腸の癒着を併発した稀な症例である.

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◆要旨:患者は53歳,女性.意識消失して転倒し,床に立ててあった一升瓶の注ぎ口に左側腹部を打ちつけ,当院に救急搬送された.左側腹部に径5cm大の発赤と膨隆を認めた.CTで外傷性肋間ヘルニアを認めた.シネCTで呼吸性移動を確認すると,大網が横隔膜と胸腔を経由している外傷性肋間ヘルニアと診断できた.腹腔鏡下に観察すると横隔膜欠損孔をヘルニア門として大網が嵌頓しており,横隔膜欠損孔は腹腔鏡下に直接縫合閉鎖した.術後10か月,合併症やヘルニアの再発なく経過している.稀な受傷機転で発症した,横隔膜を経由した外傷性肋間ヘルニアの1例を経験した.シネCTは損傷部位の正確な診断と術式選択に有益であった.

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◆要旨:患者は74歳,男性.41歳時,進行胃癌に対し開腹胃全摘を行った.経過観察中に表在型食道癌を認め,内視鏡的切除を施行した.病理診断はpT1b(SM2),ly0,v0であったが,本人希望で追加治療なしで経過観察した.術後3か月のCT検査で肝門部に18mmのリンパ節を認め,PET-CT検査で同部だけにFDG集積を認めた.治療方針を決めるうえで病理学的診断が必要と判断し,手術を施行した.初回手術時に剝離操作が及んでいない部位を辿り,比較的容易に腹腔鏡下にリンパ節を切除し,食道癌リンパ節再発と診断した.これまで開腹既往例で腹腔鏡下に肝門部リンパ節生検を行った報告はなく,若干の文献的考察を加えて報告する.

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◆要旨:患者は62歳,女性.他院にて1年前に肝右葉巨大肝囊胞に対し腹腔鏡下肝囊胞天蓋切除術を施行された既往がある.腹痛を認め,当院救急外来を受診した.腹部CT検査で右側横行結腸と大網が右横隔膜を通して胸腔内に脱出しており,横隔膜ヘルニアと診断した.腹腔鏡下に脱出した腸管と大網を腹腔内に還納し,直接縫合によるヘルニア修復術を施行した.術後経過は良好であった.

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◆要旨:患者は77歳,女性.右臀部から大腿部にかけての疼痛があり,近医整形外科の腹部CT検査で右股関節背側の軟部腫瘍を疑われ,当院を紹介され受診した.腹部CT検査にて右大坐骨孔より脱出する小腸を認め,大坐骨孔ヘルニアと診断した.腸閉塞症状は認めなかったが,疼痛が持続するため,待機的に手術の方針とした.手術は腹腔鏡下に行い,メッシュを用いて修復を行った.術後経過は良好で,右臀部から大腿部の疼痛は消失し,現在まで3か月再発所見なく経過している.坐骨孔ヘルニアは骨盤底ヘルニアの中でも稀な疾患である.腹腔鏡下手術による修復の報告例は非常に少なく,文献的考察を加えて報告する.

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◆要旨:TAPP法にて修復した鼠径部半月状線ヘルニアの1例を経験した.患者は91歳の女性で,左鼠径ヘルニア嵌頓が疑われ当院に搬送された.左鼠径部に膨隆を認めたが用手還納は可能であり,腹部CTにて腸管の脱出を伴う左鼠径ヘルニアと診断された.翌日,待機的に腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した.術中当初は併存型鼠径ヘルニアと判断し,腹膜前修復法(TAPP法)に準じて腹膜前腔の剝離を進めると,実際のヘルニア門は内鼠経輪の頭側かつ腹直筋外側の腹横筋腱膜弓下に存在した.ヘルニア門と近傍のmyopectineal orifice(MPO)を覆う範囲にメッシュを留置した.術後経過は良好で,現在まで再発は認めていない.

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編集後記 竹内 裕也
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 ここ数年秋になると,毎年のように日本人科学者がノーベル賞を受賞されています.自称アカデミアの末席にいる私も日本人研究者の活躍に胸躍らせる季節となるわけですが,ふと我に返ると「もっと英文論文を書かないと(教室員に書いてもらわないと)……」と少し暗い気持ちになります.

 しかし,ノーベル化学賞(2000年)を受賞された白川英樹・筑波大学名誉教授は,かつて「ノーベル賞受賞者がアジア諸国の中で日本に非常に多いのはなぜだと思うか」という海外の記者の質問に対してこう答えられたそうです.「日本人は日本語で書かれた教科書を使い,日本語で学んでいるからではないか」.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
24巻6号 (2019年11月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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