日本内視鏡外科学会雑誌 23巻2号 (2018年3月)

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◆要旨:末梢性肺結節性病変に対する胸腔鏡下手術の病変部位同定のためCTガイド下皮膚マーキングを22症例25病変に行った.術前CT室にて呼気時に撮影し,結節直上の皮膚にマーキングした.術中マーキングから結節直上胸膜までの距離は10mm以下で,病変の局在による相違は認められなかった.25病変すべて用指的に確認可能であった.結節径,マーキング部位の皮膚から胸腔までの距離,胸膜から結節までの距離,それぞれの因子と,術中マーキングから結節直上胸膜までの距離との間に相関は認められなかった.CTガイド下皮膚マーキングは,安全・簡便であり,精度も高く,胸腔鏡下手術の術前マーキングとして選択肢になりうると考えられた.

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◆要旨:患者は91歳の女性で,食欲不振・嘔吐を主訴に受診した.CT・理学的所見から,右大腿ヘルニア嵌頓と診断し,用手還納後にTAPP(transabdominal preperitoneal repair)法を施行した.術中に大腿輪から膀胱の一部が脱出する所見を認め,大腿ヘルニアに伴った膀胱ヘルニアと診断した.一般に,膀胱ヘルニアの診断にはCTが有用と考えられている.しかし術前CTでも膀胱ヘルニアの診断ができないことがあり,腹腔内から観察が可能なTAPP法は有用な術式である.

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◆要旨:開胸食道癌切除後の乳び胸を胸腔鏡下に治癒しえた症例を経験したので報告する.患者は65歳,男性.嚥下困難を主訴に来院し,食道癌T3, N0, M0, StageⅡと診断され,術前化学療法を施行後,右開胸開腹食道亜全摘術,胃管胸骨後再建,3領域郭清術を施行した.胸管は横隔膜上で2重結紮し切除した.第4病日に白濁胸水を認め,乳び胸と診断した.オクトレオチドの保存的加療で改善せず,第38病日に胸腔鏡下手術を施行した.胸管結紮部近傍に乳びの漏出を認め,胸管を剝離,再結紮し手術を終了した.術後胸水は減少し,第48病日に胸腔ドレーンを抜去した.胸腔鏡下胸管結紮術は低侵襲で安全に良好な視野で漏出部位の同定,処置が可能であり,開胸術後でも有用である.

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◆要旨:患者は86歳,女性.嘔吐と腹部膨満を主訴に受診し,CTで腹部大動脈と上腸間膜動脈間の十二指腸水平脚圧迫と,胃から十二指腸の著明な拡張を認め,上腸間膜動脈症候群と診断した.保存的治療で一度改善したが再燃し,腹腔鏡下十二指腸空腸吻合術を施行した.十二指腸水平脚および下行脚を露出し,Treitz靱帯から約30cmの空腸と十二指腸水平脚を逆蠕動方向に自動縫合器で側側吻合を行い,挿入孔は牽引糸を腹腔鏡下でかけ自動縫合器で閉鎖し,完全腹腔鏡下で手術を終えた.上腸間膜動脈症候群に対する腹腔鏡下十二指腸空腸吻合において,側側吻合・挿入孔閉鎖いずれも自動縫合器を用いた本術式は完全腹腔鏡下での手技をより容易で安全にし,有用と考えられた.

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◆要旨:患者は82歳,男性.下血,倦怠感を主訴に受診した.下部消化管内視鏡検査で,横行結腸脾彎曲部からS状結腸にかけて多発血管腫を認めた.貧血は血管腫からの出血が原因と考えられたため,腹腔鏡補助下結腸左半切除術を施行した.血管腫は,左側結腸の粘膜面,漿膜面だけでなく腸間膜や腹膜にも広範囲に存在していたが,腹腔鏡にて全体を観察し,ベッセルシーリングデバイスを使用することにより安全に切除可能であった.大腸血管腫は稀で,特に静脈型血管腫の報告例は非常に少ない.今回,広範な大腸静脈型血管腫の1切除例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する.

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◆要旨:食道良性腫瘍の中でも極めて稀な食道神経鞘腫に対して腹臥位胸腔鏡下腫瘍核出術を施行した症例を経験した.患者は69歳,女性.2014年頃よりつかえ感を自覚し,徐々に増悪したため,2016年に近医より当科へ紹介され受診した.胸腹部造影CT検査にて気管分岐部背側に30mm大の腫瘤を認め,食道原発腫瘍が疑われた.上部消化管内視鏡検査では,胸部中部食道に30mm大の粘膜下腫瘍を認めた.Endoscopic ultrasound-fine needle aspiration (以下,EUS-FNA)を施行し,細胞診より非上皮性腫瘍が疑われたが,確定診断には至らなかった.有症状かつ本人の希望もあり,腹臥位胸腔鏡下腫瘍核出術を施行した.切除材料の病理組織学的検索により神経鞘腫と診断された.ここに考察を加えて報告する.

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◆要旨:患者は53歳,女性.統合失調症で入院中に嘔吐・腹痛を主訴に当院を受診し,画像所見から前方型短軸性胃軸捻転症と診断した.上部消化管内視鏡的に整復したが,4か月後に再発を認め,内視鏡的整復後に腹腔鏡下胃固定術を施行した.手術は3 ポートで行った.穹窿部の拡張伸展および胃幽門部の後腹膜への固定不良を認め,特発性と診断した.胃穹窿部から噴門部までの大彎側を横隔膜に3-0 V-LocTM180で連続縫合し,さらに逆V字状になるよう縫合開始点から胃大彎側を横隔膜,腹壁に縫合した.合併症はなく術後2日目に退院となり,術後1年の時点で再発は認めない.胃軸捻転に対して腹腔鏡下胃固定術を施行した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

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◆要旨:患者は40歳,女性.4回の開腹術歴(子宮筋腫核出術2回,帝王切開術2回)があり,2回目の帝王切開術時に膀胱を損傷し,膀胱子宮瘻となった.腟性尿失禁のほか,月経時血尿と慢性骨盤痛を主訴に,発症1年後に当院紹介となった.膀胱鏡および膀胱内色素注入検査で膀胱子宮瘻と診断し,腹腔鏡下子宮全摘出術および膀胱瘻修復術を施行した.瘻孔部分の子宮筋層を膀胱壁に残すように切開し,いったん子宮を摘出したのちに膀胱鏡を併用しながら瘻孔部から残存子宮筋層と膀胱筋層を除去後,瘻孔を閉鎖した.術後より骨盤痛は消失し,術後1年6か月経過したが瘻孔の再発も認めていない.膀胱子宮瘻症例にも,手技の工夫により,腹腔鏡下手術が可能である.

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◆要旨:患者は39歳,女性.夕食後の右季肋部痛を主訴に紹介されCT検査,MRCP検査で胆石発作と診断された.既往歴として2年前,臍頭側の白線ヘルニアに対して腹腔鏡下メッシュ修復術が行われていた.メッシュ損傷なしに腹腔鏡下手術を行う目的に3DCTでメッシュの存在範囲を確認し,メッシュ留置部を避けて右腹直筋外側に小開腹創を置き単孔式腹腔鏡下胆囊摘出術を行った.術後3日目に合併症なく退院した.上腹部にメッシュが留置されている症例において,3DCTを用いてメッシュの存在範囲を確認することは,メッシュ損傷なしに腹腔鏡下胆囊摘出術を行う際のポート位置決定のために有用な方法であると考えられた.

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◆要旨:患者は20歳,男性.激しい腹痛を主訴に前医を受診した.造影CT検査にて腸回転異常に伴う腸閉塞と診断され,当院へ転院となった.腸回転異常と右傍十二指腸ヘルニアに起因する腸閉塞の診断にて,腹腔鏡下に緊急手術を施行した.手術所見ではLadd靱帯が形成するヘルニア囊に腸管が入り込み,内ヘルニアの状態となっていた.腸閉塞を解除し,ヘルニア囊を大きく開放した.腸管血流は保たれており腸管切除は施行しなかった.術後経過は良好で術後4日目に退院し現在まで再燃することなく経過している.本疾患は比較的稀であるが,画像診断で疑われた場合,確定診断を兼ねて腹腔鏡下手術も積極的に考慮すべきと考える.

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◆要旨:患者は腹部手術歴のない62歳,男性.腹部膨満感と徐々に増強する腹痛を主訴に救急搬送された.軽度の腹満を認め,左側腹部に圧痛を認めた.腹部CT検査で下行結腸の背側に迷入する浮腫状の小腸と腸間膜を認め,腹水を伴っていた.以上より内ヘルニアによる絞扼性腸閉塞と診断し緊急で腹腔鏡下手術を施行した.腹腔鏡で観察すると下行結腸外側の腹膜窩にうっ血した小腸が嵌入していた.ヘルニア門を切開し,嵌頓した小腸を整復した.腸切除は行わず,ヘルニア囊を広く開放し手術を終了した.患者は術後4日で退院した.内ヘルニアのなかでも非常に稀である傍下行結腸窩ヘルニアに対して腹腔鏡下手術が有用であった症例を経験したので報告する.

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◆要旨:患者は30歳代,女性.飲酒歴のある高度肥満患者.前医で膵囊胞性病変に対し術中囊胞内容液中アミラーゼ値が高値であったことから仮性囊胞と診断され,開腹下囊胞空腸吻合術を施行された.3年後に心窩部痛再燃と囊胞再増大を認め当科紹介となった.画像所見より膵粘液性囊胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm of the pancreas;以下,MCN)と診断し,囊胞に吻合された空腸断端から剝離を行い,安全に腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行しえた.最終病理診断はMCN, low grade dysplasiaであった.囊胞内容液中アミラーゼ高値のMCNが存在し仮性囊胞との鑑別を要する点,また,囊胞消化管吻合後でさらに高度肥満患者でも手術手技の工夫で腹腔鏡下手術が安全に実施可能であった点で示唆に富むと思われ報告する.

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◆要旨:患者は57歳,女性.検診の上部消化管造影検査で異常を指摘され当院を紹介された.造影CT検査やMRI検査で胃穹隆部と脾臓の間に境界明瞭な内部に造影効果のない約5cm大の囊胞性病変を認めた.囊胞性変化を伴う胃間葉系腫瘍や神経内分泌腫瘍,表皮囊胞を疑い,診断的治療を目的に腹腔鏡下胃部分切除術を施行した.病理組織学的な所見で大部分の囊胞壁は線維・硝子化していたが,一部では胃の腺窩上皮や多列繊毛上皮が裏打ちしており胃重複囊胞と診断した.胃重複囊胞は稀な疾患であるため,様々な鑑別疾患とともに術前診断は困難である場合もあるが,診断・治療のための腹腔鏡下手術は有用な方法と考えられた.

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目次

欧文目次

2017年度会計監査報告書

日本内視鏡外科学会への入会について

EVENT NEWS

投稿時のチェックリスト

編集後記 渡邊 昌彦
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 内視鏡外科学会との関わりは,遡ること1991年と記憶している.以来,25年間に亘りこの学会の急成長を目の当たりにしてきた. 研究会は1995年に学会へと姿を変え,翌年に発刊された本誌JSESは学会の発展とともに出版部数を拡大してきた.当時,既に会員数は2,000人を超え,われわれは新しい外科の到来を予感していた.本誌創刊の辞には「活き活きとした情報を満載した,魅力あるジャーナル」を目指すと故出月会長が記している.創刊号の特集は「大腸癌に対する腹腔鏡下手術のcontroversy」とあり,その5年後には腹腔鏡下大腸癌手術は「標準治療」として最も早く認知されるに至った.このように,大腸癌手術をいち早く特集した当時の編集委員諸氏の先見性には敬意を表さざるを得ない.もっとも創刊号に掲載された第3回のアンケート集計結果によると,大腸癌は478例と悪性腫瘍で群を抜いて症例数が多かった.因みに胃部分切除240例に対し幽門側胃切除は僅か23例と,胃切除のハードルが如何に高かったかをアンケートは物語っている.この結果をみるにつけ,20年余の内視鏡外科の急速な普及には改めて驚愕するものである.

 さて,此処まで普及した内視鏡外科と本誌の将来を考えてみよう.既に英文誌が発刊され年々投稿数も増え続け,今やIF獲得も近いと目されている.一方,会員間の連絡はWebで,話題提供はニュースレターが担っている.即ち,和文雑誌の意義そのものが今や問われ始めていると考えざるを得ない.ましてや編集作業や雑誌発行は,学会にとって金銭的負担が極めて大きい.委員が2カ月に一度顔を突き合わせて議論し,苦笑しつつも丁寧に変な日本語を校正する牧歌的なムードの編集委員会が個人的には大好きである.とはいえ科学論文を自国語で書く能力を身に付けることは大切であるが,日本語の教育は編集委員の仕事ではない.学会抄録や発表などが次第に英語化されていく中,和文誌のJSESも位置付けが問われている.まずは経費削減を目指して,編集会議をテレビ会議に置き換え,雑誌をWeb化することから始めていくべきであろう.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
23巻2号 (2018年3月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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