日本内視鏡外科学会雑誌 23巻3号 (2018年5月)

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◆要旨:当科におけるシニアレジデントに対する腹腔鏡下結腸切除術トレーニングプログラムの結果を報告する.2014年4月から2017年3月までに20名が参加した.初期1か月にカメラ助手を経験後,1日間の動物実習,残り3か月間に内視鏡外科技術認定医指導下に術者を経験した.63症例の手術がレジデントにより施行された.回盲部切除術(40例)とS状結腸切除術(23例)の手術時間(中央値)はそれぞれ190分と232分であった.51/63例(81%)で術者交代なく完遂されていた.術後,縫合不全やイレウスなどの重篤な合併症は認められなかった.シニアレジデントによる腹腔鏡下結腸切除術は本プログラム下に安全に施行されていた.

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◆要旨:【目的】胸腔鏡下食道切除術患者の腹臥位シミュレーション施行の効果を検討する.【対象と方法】2014年4月から2017年9月に胸腔鏡下食道切除術を受けた患者を腹臥位シミュレーション非施行群11名と腹臥位シミュレーション施行群27名に分け,統計学的検討を行った.【結果】挿管から腹臥位固定完了時間の中央値(最小値-最大値)は,非施行群は23分(11〜36分),施行群は17分(7〜29分)であり,施行群が有意に短縮した(p<0.01).非施行群は術後皮膚障害が2例あり,施行群はなく,有意差がみられた(p=0.02).術後神経障害は両群ともになかった.【結論】胸腔鏡下食道切除術前における腹臥位シミュレーションは,術前体位固定時間短縮と術後皮膚障害予防に有効である.

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◆要旨:当センターでは腹腔鏡下大腸切除術(laparoscopic assisted colectomy;以下,LAC)の術後疼痛管理として硬膜外麻酔法から2014年11月にフェンタニルの経静脈持続投与(以下,F法)に変更し,さらに2016年1月からアセトアミノフェンの間歇的静脈投与(以下,A法)を開始した.当センターでLACを施行した192例を対象とし,F法とA法の鎮痛と副作用を後方視的に比較検討した.疼痛時鎮痛剤使用回数はF法では1.4±0.1回,A法は0.7±0.1回であった(p=0.0002).またフェンタニル総使用量はF法では0.9±0.02mg,A法で0.2±0.01mgであった(p<0.0001).術後嘔吐率はF法では17.0%,A法は9.0%であった(p=0.09).A法はLAC術後の鎮痛効果に優れておりフェンタニルによる副作用を軽減できる可能性が示唆された.

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◆要旨:[目的]両側鼠径ヘルニアに対するtransabdominal preperitoneal hernia repair(以下,TAPP)法の短期手術成績を検討する.[方法]TAPPを施行した(複雑症例を除外)鼠径ヘルニア597例677病変を対象とした.片側修復517例をUnilateral群(以下,U群),両側80例160病変をBilateral群(以下,B群)に分類し,手術成績,術後アンケート調査の結果を比較した.[結果]手術時間,術中出血量はB群で有意に増加したが,術後在院日数や翌日退院症例の割合は両群に有意差を認めなかった.再発率(U群0%,B群1.3%),合併症発症率(U群1.9%,B群3.8%),鎮痛剤使用回数や患者アンケート結果は両群間で有意な差を認めなかった.[結論]TAPPは両側修復が必要な症例に対して短期的手術成績は良好であると考えられた.

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◆要旨:先進部に腫瘍性病変を認めない非常に稀な胃十二指腸重積に対し腹腔鏡下にて整復しえた1例を経験した.患者は53歳,男性.アルコール性肝硬変の増悪にて当院入院中に心窩部の激痛,嘔吐が出現し,腹部造影CTにて胃壁全体の浮腫と,前庭部から幽門の十二指腸下行脚への嵌頓,重積像を認めた.以上の画像所見より胃十二指腸重積と診断した.肝硬変(Child C)の全身状態も考慮し腹腔鏡下にて整復し良好な経過を得た.胃十二指腸重積の報告例はすでに多くあるが,すべて開腹にて整復されており,腹腔鏡下で整復しえたのは自験例が初めてであった.

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◆要旨:上腰ヘルニアは症例が少なく,様々な術式で治療されている.本疾患例に対する腹腔鏡下手術を経験した.患者は74歳,男性.左腰背部の鈍痛を伴う膨隆を主訴に来院した.CTでは左腎周囲脂肪が第12肋骨下,腰方形筋外側の腹壁欠損部から広背筋に覆われて背側に突出していた.左上腰ヘルニアと診断して手術を行った.腹腔鏡下に左腎臓を授動すると腹横筋腱膜にヘルニア門が確認でき,ポリプロピレンメッシュで修復した.腹腔鏡下tension-free修復術は直視下修復術と比べて術後疼痛・入院期間・社会復帰までの期間において優位性が示され,再発率も少ない傾向にある.標準術式となりうるか,集積された症例の検討に期待したい.

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◆要旨:患者は76歳,男性.右腰背部膨隆を主訴に当科外来を受診した.腹部CTにて右上腰三角より上行結腸,脂肪組織の脱出を認め,右上腰ヘルニアと診断した.また,右鼠径ヘルニアも認めた.両ヘルニアを同一視野でアプローチするため,腹腔鏡下手術を選択した.手術台のローテーションを利用し体位変換することで4ポートでの同時修復が可能であった.術後経過は良好で,第3病日に退院した.上腰ヘルニアと鼠径ヘルニアを腹腔鏡下に同時修復した症例は検索しえた範囲内では初めての報告であり,手技は簡便で有用な術式であると考えられた.

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◆要旨:患者は62歳,男性.2015年に前医で前立腺癌に対しロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術が施行された.術後1か月で直腸膀胱瘻を指摘された.保存療法で改善せず,術後11か月目に薄筋筋皮弁充塡による瘻孔閉鎖術が施行された.術後1か月で再発し,当院に紹介となった.術後7か月後にTEMおよび人工肛門造設術を施行した.瘻孔部の切除を行い,直腸筋層重層縫合で閉鎖した.術後2か月目に完全閉鎖を確認し,人工肛門を閉鎖した.6か月後の現在,瘻孔の再発はない.前立腺癌手術後の難治性直腸膀胱瘻の薄筋筋皮弁充塡術後再発に対し,TEMによる修復術を行い良好な経過を得た症例を経験したので報告する.

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◆要旨:患者は88歳の女性.数か月前からの右鼠径部膨隆を主訴に近医より紹介となった.理学所見で右鼠径ヘルニアと診断したが,CTで膀胱嵌頓の右閉鎖孔ヘルニアも指摘された.頻尿と残尿感を自覚しており腹腔鏡下にtransabdominal preperitoneal approach(以下,TAPP法)で同時修復を行う方針とした.腹腔内より観察したところ上記ヘルニアに加えて,大腿輪も開大しており,これら3種ヘルニアに対し,メッシュを2枚用いて一期的に修復した.上記3種ヘルニアに対するTAPP法を用いた一期的腹腔鏡下修復術の報告は少なく,有用であったので報告する.

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◆要旨:患者は40歳,男性.2日前より発熱,右季肋部痛を認め,前医より急性胆囊炎疑いで当院を紹介された.心窩部から右季肋部に著明な圧痛と,局所では腹膜刺激症状があり,造影CT検査で胃幽門前庭部頭側に内部に渦巻き状構造を伴う脂肪構造を認め小網捻転と診断され,同日腹腔鏡下で緊急手術を施行した.手術所見では胃幽門前庭部頭側腹側に大網に被覆され腫瘤状に捻転した小網を認め,小網捻転症と診断し切除を施行した.術後経過は良好で,術後6日目に退院となった.小網捻転症は非常に稀な疾患だが,造影CT検査で特徴的な所見を認めれば術前診断は可能で,腹腔鏡下手術は診断の確定および治療において低侵襲で有用であった.

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◆要旨:患者は81歳,男性.約2年前に他院で早期食道癌に対して内視鏡下食道亜全摘術を施行された.昼食後から左上腹部痛が出現し,当院に救急搬送された.CTで小腸と横行結腸が左胸腔内に脱出していた.食道裂孔ヘルニアと判断し緊急手術を行った.手術は腹腔鏡下に行った.挙上胃管左側と左横隔膜脚の間に食道裂孔ヘルニアを認めた.脱出腸管を腹腔内に還納したところ脱出腸管に血流障害は認めなかった.左横隔膜脚と胃管を結紮縫合することでヘルニア門を閉鎖した.経過は良好で術後4日目に退院となった.術後8か月経過し再発は認めていない.

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◆要旨:患者は70代の男性.横行結腸双孔式人工肛門造設術3か月目より傍ストーマヘルニアおよび人工肛門脱出を認めた.次第に症状が悪化しストーマパウチの貼付が困難になってきたため,同術5か月目に腹腔鏡下傍ストーマヘルニア修復術を施行した.経過良好のため術後9日目に退院となった.双孔式人工肛門に合併した傍ストーマヘルニアの修復例の報告は少なく,治療法として確立されたものは存在しないと考えられる.今回筆者らは,Sugarbaker法を腹腔鏡下に横行結腸双孔式人工肛門に応用することで根治を得ることができた.

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◆要旨:患者は60代の女性.便秘・下血を主訴に近医を受診し,腹部CTで直腸重積が疑われ当科紹介となった.精査の結果S状結腸癌による直腸重積の診断となり,非観血的整復を試みたが困難で手術を施行した.術中に経肛門的および腹腔鏡操作の併用で整復を行った.重積部は高度腸管浮腫を認めたため腹腔鏡下Hartmann手術を行った.術後経過良好で退院後約3か月でストーマ閉鎖術を行った.S状結腸癌の直腸重積の整復に経肛門的および腹腔鏡操作の併用が有用であった.また整復することで腹腔鏡による根治術や,肛門機能の温存が可能であった.

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◆要旨:患者は69歳,男性.57歳時に僧帽弁置換術を施行され,ワルファリン内服中であった.右鼠径ヘルニアの診断で,ヘパリン置換後に,TAPP法を施行した.術後4日目にショック状態となり,術後出血の診断で輸血を施行した.術後6日目,CTにて血腫は増大し,膀胱内圧が33mmHgと上昇しており,腹部コンパートメント症候群と診断した.同日,緊急手術を施行した.膀胱前腔に多量に血腫を認め,出血源は恥骨結節周囲からの可能性が考えられた.術後経過良好で,再手術後21日目に退院した.今回筆者らは,TAPP法術後血腫による腹部コンパートメント症候群の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

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◆要旨:患者は73歳,男性.約9年前に胸腔鏡補助下横隔膜上食道憩室切除術を行い,術後縫合不全をきたしその後憩室再発を認めた.諸検査では右胸腔内へ突出する6cm大の多房性囊状憩室を認め,腹部食道方向への入口部は圧迫狭窄を受け胃内への通過障害が存在した.初回手術時の食道内圧検査では平均下部食道蠕動波高が239mmHgと高値を示し一次性食道運動障害と診断していた.以上の所見から長期間通過障害を伴う横隔膜上食道憩室再発と随伴する一次性食道運動障害を考慮し,胸腔鏡補助下憩室切除術と腹腔鏡下腹部食道筋層切開術ならびに噴門形成術(Heller-Dor)を施行した.術後6か月を経過したが通過障害は改善され食道逆流症状も認めない.

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◆要旨:腹腔鏡下ヘルニア修復術は,腹腔鏡用と切離デバイス用,そして牽引用に各々1ポートを用いて行うことが一般的であるが,単ポートによる牽引では剝離層を確実に視認できる良好な術野展開がしばしば容易でない.筆者らは,術野展開を容易にすることを目的に,剝離したヘルニア囊にナイロン糸をかけ持続的な牽引を可能にするヘルニア囊牽引法(hernia sac-traction method:HST法)を考案した.対象はヘルニア囊の剝離に強い牽引を要する外鼠径ヘルニア症例で,本法を用いることにより良好な術野展開のもと,ヘルニア囊の境界を確実に確認することができた.本法を用いることで安定したストレスの少ないヘルニア手術が可能となると思われる.

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日本内視鏡外科学会への入会について

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投稿時のチェックリスト

編集後記 井上 貴博
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 日本内視鏡外科学会雑誌の編集に携わってから早2年が経過しましたが,毎回他科の内視鏡手技や手術法・適応などを学ぶことができ,非常に貴重な経験をさせてもらっています.最近,症例報告は症例の蓄積も有り掲載のハードルが高くなっています.気の毒に思いますが,各自が経験した症例を考察してきちんと纏めて報告することは,医師としてのある意味義務だと思います.症例報告を書かないと原著は書けません.症例報告を書くことでより高度な原著を書く練習をしてください.

 非常に稀な症例であれば掲載の可能性が高まりますが,これまで報告があるような症例は掲載されるためには考察に少し工夫を加える必要があります.症例をこれまでの報告とは違った側面から考察すること,読者に有意義な内容になるよう過去の同様な症例を詳細にまとめて考察することなどの方法があります.ただしどの症例も適切な診断・治療をしているかが問われます.たとえば悪性疾患であればどんなに腹腔鏡できれいに手術ができたとしてもoncologicalに問題があれば採用にはいたりません.あくまでも患者を適切に治療していることが最優先事項ですので間違いの無いようにお願いします.図や表も明快で簡潔なものが求められます.分かりづらいfigureでは査読の時にマイナスポイントになります.それと前号でも渡邊理事長が編集後記に書かれていますが,論理的かつ科学的な日本語の文章でないと採用にはいたりません.日頃から正しい日本語を意識して書く練習をすると同時に会員に読んでもらうことを念頭に文章を書き上げてください.独りよがりの文章では相手に内容が伝わりません.必ず自分以外の人,とくに指導医に校正してもらって投稿をするようにしてください.以上のステップを踏んでも採用にいたらないこともあります.別の雑誌を薦めることもありますし,どの雑誌にも採用にいたらないこともあるかもしれません.それでもこの過程を踏むことで必ず次のあらたな症例報告や原著を書く糧になります.せっかく患者の体にメスを入れさせてもらう機会をいただいたのですから,その経験を後生の道標になるように積極的に症例報告を書いて本誌に投稿してください.よろしくお願いします.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
23巻3号 (2018年5月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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