日本内視鏡外科学会雑誌 23巻1号 (2018年1月)

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◆要旨:手根管症候群に対する遠位one portalによる鏡視下手根管開放術(endoscopic carpal tunnel release;以下,ECTR)の手術方法,短期成績について報告する.手術はwrist blockにて行い,約1.5cmの皮切をKaplanのcardinal lineと中指環指間の交差部に置き,溝付きガラス管を用いてECTRを施行した.本法を施行した21例22手(平均69.7歳)に合併症の発生はなく,遠位潜時は術前平均8.8msecから術後3か月時平均5.9msecと有意に改善した(p<0.05).本法は,浅掌動脈弓の表層で操作をすることで横手根靱帯を切離することができ,切離後に運動枝や指神経を直視下に確認できる.合併症予防としても有用な手術法であると考える.

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◆要旨:[背景]2D腹腔鏡(2D)を用いて行う手術での深部感覚に関する困難性の問題を解決すべく3D腹腔鏡(3D)が開発されてきた.[目的]腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術を想定したトレーニングボックス内での腹膜縫合における3Dの有益性を評価する.[方法]12人の医師が与えられたタスクとしての鼠径部モデルでの腹腔鏡下腹膜縫合閉鎖を2Dと3Dの両者によって遂行した.客観的評価として所要時間およびエラー回数を測定し,主観的評価としてアンケートによる自己評価を行った.[結果]タスク遂行に要した時間は3Dが2Dより短く(3D:943秒,2D:1,365秒,p<0.01),エラー回数は3Dが2Dより少なかった(3D:6回,2D:33回,p<0.01).アンケートではすべての参加者が3Dを2Dよりも高く評価した(p<0.01).[結論]腹腔鏡下の縫合結紮おける3Dは外科医にとって助けとなる可能性が示唆された.臨床における有用性確認には今後の検討が必要である.

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◆要旨:患者は58歳,男性.健診異常で行った胸部CTで左横隔膜にヘルニアを認め,胸腔内へ大網の脱出を認めた.Bochdalek孔ヘルニアの診断で手術の方針となった.手術は腹腔鏡で行うこととしたが,胸腔内に嵌入した大網量が多く,胸腔鏡操作も行えるように準備した.まず,腹腔鏡下で大網の還納を試みたが,胸腔内への大網の癒着が懸念され,胸腔鏡下手術を追加した.ヘルニア門は腹腔鏡下にて縫合閉鎖し,メッシュも併用した.術後経過は良好であり,術後5日目に退院となった.成人Bochdalek孔ヘルニアに対する完全内視鏡下手術の報告は少なく,胸腔鏡・腹腔鏡を併用することでより安全で確実かつ低侵襲な手術を施行できたため,若干の文献的考察を加えて報告する.

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◆要旨:患者は80代,男性.自転車走行中に転倒し近医へ搬送された.左下腿の骨折の加療目的に当院へ転院となった.CT検査にて左横隔膜ヘルニアを認め,外傷性横隔膜破裂によるヘルニアの診断で緊急手術となった.また,患者には食道癌の手術の既往があり,右開胸および上腹部正中に胃管作製時の手術創が認められた.胃管は後縦隔経路で再建されており,上腹部には手術による癒着が予想されたが,脱出腸管の色調を確認する目的で腹腔鏡によるアプローチを選択した.手術は,3本のポートを用いて腹腔鏡下に行った.胃管は後縦隔経路で挙上されており,その部分よりやや左側の横隔膜が破裂し小腸が胸腔内へ脱出していた.小腸を腹腔内に還納し,横隔膜は腹腔鏡下に連続縫合修復した.食道癌の手術歴を有する外傷性横隔膜ヘルニア症例においても,腹腔鏡下に修復が可能な症例が存在する.

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◆要旨:患者は51歳の男性で,8か月前に左鼠径ヘルニアに対しTAPP(transabdominal preperitoneal repair)法を行った既往がある.再度左鼠径部の膨隆を認めたため当院紹介入院となった.腹部CT検査では,左鼠径部に軟部陰影を認め膀胱と連続していたため,左鼠径部膀胱ヘルニアと診断しTAPP法によるヘルニア修復術を行った.術後の経過は良好であり,第3病日に退院となった.術後約20か月の現在,再発は認めていない.膀胱ヘルニアは術中膀胱損傷の可能性があるため,術前診断することが重要であり,診断にはCTが有用であると考えられた.またTAPP法は膀胱ヘルニアに対しても,安全に修復することができる有用な術式であると思われた.

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◆要旨:患者は86歳,女性.左閉鎖孔ヘルニア小腸嵌頓の診断で緊急手術となった.臍部にカメラポートを留置し,臍下に2ポートを追加して腹腔鏡下に嵌頓を解除した.続いて内視鏡下腹膜外到達法(totally extraperitoneal repair:TEP)でヘルニア囊周囲を剝離し,メッシュを留置した.再度腹腔内を観察すると,小腸の色調が改善しないため,臍を2cm縦切開して体外で切除吻合した.術後は順調に回復し,11日目に退院した.腹腔鏡操作を伴う内視鏡下腹膜外到達法(hybrid TEP)は腹腔と腹膜前腔の分離が容易で,ヘルニア門修復に人工物を使用しやすい.また視野良好で,十分なサイズのメッシュが留置でき,閉鎖孔ヘルニア嵌頓に有効な術式であると考えられた.

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◆要旨:患者は64歳,男性.PSA高値の精査中に仙骨前面腫瘍を指摘された.CT,MRI検査で第2〜5仙椎レベルにまたがる34mm大の囊胞性腫瘍であった.手術は腹腔鏡下に直腸後壁と囊胞の剥離を先行し,経仙骨的切除を併用して根治切除を行うことが可能であった.術後合併症なく退院した.病理診断はtailgut cystで悪性所見は認めなかった.仙骨前面腫瘍は稀な疾患であるが術前診断が困難なことが多く,悪性の可能性もあるため外科的切除が第一選択となる.切除は経仙骨的アプローチが一般的だが,腹腔鏡アプローチを併用することで,腫瘍頭側の剝離が安全かつ確実に施行可能となり,狭い骨盤内での拡大視効果とあいまって有効な術式と考えられた.

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◆要旨:患者は82歳,男性.脳梗塞治療のため入院中に心窩部痛と嘔気・嘔吐が出現し,保存的治療で改善せず外科転科となった.左下腹部に圧痛があり腹部CTで下行結腸背側に小腸の係蹄を認め,傍下行結腸窩ヘルニアと診断し腹腔鏡で緊急手術を施行した.傍下行結腸溝の2cmの裂孔に小腸が陥入していたが,容易に整復され裂孔を縫合閉鎖して手術を終了した.経過良好で術後7日で転科となった.傍下行結腸窩ヘルニアは報告例の少ない希少な内ヘルニアで,CTで特徴的な下行結腸背側の小腸係蹄を認め,その発生機序として傍下行結腸溝の裂開や過伸展が考えられる.

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◆要旨:患者は92歳,女性.腹痛,嘔吐が出現したため当院を受診した.腹部CT検査にて胃幽門部と横行結腸の右胸腔内への脱出が認められ,横隔膜ヘルニアと診断した.保存的治療で軽快したが,経口摂取を開始すると症状が増悪するため,腹腔鏡下ヘルニア修復術を行った.術中所見では,大網,胃幽門部,横行結腸が肝鎌状間膜の左側より右胸腔内へ脱出しており,Morgagni-Larrey孔ヘルニアと診断した.ヘルニア門を腹壁外結紮法を用い閉鎖し,Composix Mesh(メディコン) で補強した.術後経過は良好であった.本疾患に対する腹腔鏡下修復術は安全に施行できる低侵襲な術式であり,腹壁外結紮法は,ストレスなく,安全確実に施行できる有用な手技であった.

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◆要旨:患者は45歳,男性.統合失調症にて当院精神神経科に通院していた.背部痛で近医を受診し,CT検査にて十二指腸下行脚の背尾側に4cm大の低吸収域を認めた.病変はCT検査で経過観察中に増大傾向を示し,超音波内視鏡下穿刺吸引法による生検などの検査を試みたが鎮静困難で中止となった.侵襲的検査が困難で手術目的に当科へ紹介となり,腹腔鏡下に後腹膜腫瘍を切除した.腫瘍は暗赤色の囊腫状で,周囲組織への浸潤は認めなかった.術後病理診断では静脈性血管腫の診断となった.後腹膜腫瘍,そのなかでも後腹膜血管腫は稀な疾患である.術前診断は困難なことが多く,腹腔鏡下に切除した症例は非常に稀であるため,報告する.

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◆要旨:患者は68歳,男性.PSA高値を指摘され,当科を紹介受診し,生検にて前立腺癌を検出した.骨盤造影MRIにて右骨盤内に境界明瞭な腫瘍を認め,T2強調画像では辺縁高信号,内部は不均一な造影効果がみられた.発生部位,画像所見から神経鞘腫が考えられたが,本症例では骨盤内腫瘍がリンパ節転移など,前立腺癌由来であることを否定できなかったため,ロボット支援下に前立腺全摘術と骨盤内腫瘍摘出術を同時に施行した.病理組織学的所見では,骨盤内腫瘍に悪性像はなく,神経鞘腫と診断された.神経鞘腫はSchwann細胞から発生する腫瘍で,骨盤内後腹膜に発生する頻度は1%と極めて稀である.治療法は被膜を含めた外科的切除が第一選択であるが,できる限り発生神経を確認し,神経損傷をきたさないよう慎重な剝離が重要である.本症例のように狭小な骨盤深部の手術においては,ロボット支援下手術は低侵襲かつロボットアームの操作性,3D画像による視認性に優れ,有用なアプローチである.

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◆要旨:腸回転異常症を伴う結腸癌2例に対し腹腔鏡下手術を施行した.症例1は63歳,男性.盲腸側方発育型腫瘍(c-Stage 0)と上行結腸多発腺腫に対し腹腔鏡下右半結腸切除術・D1リンパ節郭清を施行した.腹腔内癒着は高度であった.症例2は81歳,男性.上行結腸癌c-Stage Iに対し,腹腔鏡下回盲部切除術・D2リンパ節郭清を施行した.癒着は中等度で,癒着剝離を行った後,回結腸動静脈を確認し,根部処理した.腸回転異常症は時に腹腔内の高度癒着を伴い,血管走行の変化も生じるため,癒着を剝離し正確な解剖を把握することが,腹腔鏡下手術において重要である.

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◆要旨:患者は85歳,女性.大腸癌による機械的腸閉塞に対し人工肛門造設術後,腹腔鏡下低位前方切除術を行った.循環器専門医による術前心機能評価は良好であった.手術終了40分後のモニター心電図,12誘導心電図で広範囲の誘導でST上昇を認め,心筋梗塞を強く疑い循環器専門機関へ搬送した.転院後の心エコー・カテーテル検査の左室造影でたこつぼ様の収縮形態がみられ,たこつぼ型心筋症と診断された.左室駆出率の低下を認めたが循環動態は安定しており,安静のみの経過観察にて改善した.近年,低侵襲とされる腹腔鏡下手術においてもたこつぼ型心筋症の報告が増加し,術直後から第1病日に90%以上が発症し死亡例もみられるため,今後注意が必要と考えられ報告する.

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◆要旨:子宮筋腫核出術では,異所性子宮筋腫や子宮肉腫の腹腔内への播種に関する報告があり,子宮筋腫の体外への搬出方法が問題となっている.今回筆者らは,腹腔鏡下での筋腫搬出に,モルセレーション専用に開発されたMorSafeTMを用いてモルセレーションを行った症例を経験した.MorSafeTM挿入からモルセレーション終了までの時間は55分であった.通常の気腹圧で十分な視野が得られ,安全にモルセレーションを実施できた.バッグ内に飛散した破片を可能な限り除去したが,バッグ内には微少な破片が散在していた.MorSafeTMは,鉗子操作で破損することはなかった.MorSafeTMは,子宮筋腫の体外への搬出方法として有用と考えられた.

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◆要旨:腹腔鏡下ドナー腎採取術は,安全・低侵襲で整容性も良好な手技と考えられる.しかし,腎血管切離時に腎を適切な位置に保持するのに困難な印象があり,また単孔式ポートを使用する場合は,単孔部から用手的に採取する際に腎を圧迫する危惧があった.そこで,腎血管切離前に腎をバッグに収納する方法を試みた.腎動静脈のみ開口部から出るようにバッグで腎を包み,助手の鉗子で腎をバッグごと挙上し動静脈を切離した後に,ワイヤーを利用し単孔部より採取した.バッグ内の腎は挙上しやすく回転しないため,安定した術野の保持が可能であり,また容易に単孔部を通過した.本法が温阻血時間の短縮・腎静脈の長さの確保・採取時の腎損傷の予防になると思われる.

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◆要旨:【目的】尿膜管遺残症に対する腹腔鏡下尿膜管摘出術(本術式)の手技の詳細は施設間にて相違がある.今回当科の工夫を報告する.【対象】過去4年間で本術式を施行した7症例を対象とする(中央値11歳,男女比4:3).【術式】まず臍輪をローンスターリトラクターシステムで展開し,臍輪内にて瘻孔を最小の径で全周性にくり貫いた後,瘻孔端を腹腔内に落とし込む.膀胱まで剝離後,尿膜管を切離し,最後に剝離した腹膜もLPEC針で縫縮する.【結果】手術時間の中央値150分,術後在院日数は中央値4日であった.現在まで合併症や再発は認めていない.【結論】本術式は少しの工夫によりさらにスムーズな操作性を得ることができる.

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欧文目次

評議員申請について

日本内視鏡外科学会への入会について

編集後記 竹内 裕也
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 2017年より編集委員を仰せつかりました浜松医科大学外科学第二講座(消化器・血管外科学分野)竹内裕也と申します.伝統ある本誌の編集委員に加えて頂き大変光栄でありますが,まだ慣れないことも多く渡邊昌彦編集主幹はじめ他の委員の先生方に教えて頂きながらこれから勉強して参りたいと存じます.何卒宜しくお願いいたします.

 現在,日本消化器外科学会,日本消化器病学会,そして本学会と三学会邦文誌の編集委員を拝命しておりますが,各誌の求める方向性に違いがあることがよくわかります.本誌は疾患の稀少性も重要ですが,やはり内視鏡手術手技の新規性を示す論文が高く評価されます.革新的な新規手技やデバイスの開発でなくとも日常臨床から生まれたちょっとした手技の工夫も大いに歓迎されると思います.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
23巻1号 (2018年1月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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