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内視鏡外科学会との関わりは,遡ること1991年と記憶している.以来,25年間に亘りこの学会の急成長を目の当たりにしてきた. 研究会は1995年に学会へと姿を変え,翌年に発刊された本誌JSESは学会の発展とともに出版部数を拡大してきた.当時,既に会員数は2,000人を超え,われわれは新しい外科の到来を予感していた.本誌創刊の辞には「活き活きとした情報を満載した,魅力あるジャーナル」を目指すと故出月会長が記している.創刊号の特集は「大腸癌に対する腹腔鏡下手術のcontroversy」とあり,その5年後には腹腔鏡下大腸癌手術は「標準治療」として最も早く認知されるに至った.このように,大腸癌手術をいち早く特集した当時の編集委員諸氏の先見性には敬意を表さざるを得ない.もっとも創刊号に掲載された第3回のアンケート集計結果によると,大腸癌は478例と悪性腫瘍で群を抜いて症例数が多かった.因みに胃部分切除240例に対し幽門側胃切除は僅か23例と,胃切除のハードルが如何に高かったかをアンケートは物語っている.この結果をみるにつけ,20年余の内視鏡外科の急速な普及には改めて驚愕するものである.
さて,此処まで普及した内視鏡外科と本誌の将来を考えてみよう.既に英文誌が発刊され年々投稿数も増え続け,今やIF獲得も近いと目されている.一方,会員間の連絡はWebで,話題提供はニュースレターが担っている.即ち,和文雑誌の意義そのものが今や問われ始めていると考えざるを得ない.ましてや編集作業や雑誌発行は,学会にとって金銭的負担が極めて大きい.委員が2カ月に一度顔を突き合わせて議論し,苦笑しつつも丁寧に変な日本語を校正する牧歌的なムードの編集委員会が個人的には大好きである.とはいえ科学論文を自国語で書く能力を身に付けることは大切であるが,日本語の教育は編集委員の仕事ではない.学会抄録や発表などが次第に英語化されていく中,和文誌のJSESも位置付けが問われている.まずは経費削減を目指して,編集会議をテレビ会議に置き換え,雑誌をWeb化することから始めていくべきであろう.
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