日本内視鏡外科学会雑誌 22巻5号 (2017年9月)

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◆要旨:【目的】大腸手術時の臍部小開腹が切開創SSI発生に影響するかを明らかにすることを目的に後方視的に検討した.【対象・方法】腹腔鏡補助下大腸癌手術118例を対象に,小切開創を臍を通る正中創(Umb),通らない正中創(Med),経腹直筋切開(Rec)の3方法に分け,後方視的に検討した.【結果】切開創SSIは小開腹創別にUmbで1例(2.6%),Medで1例(5.6%)であり,臍を通る小開腹創は切開創SSIの危険因子ではなかった.切開創SSIの危険因子は,創分類(p=0.0012)とGlasgow prognostic score (p=0.0078)であった.創合併症はUmbで1例(2.6%),Medで2例(11.1%),Recで3例(4.9%)であり,Umbで最も頻度が少なかった.【結論】大腸手術においても腹腔鏡手術時の臍部小切開創は切開創SSI発生や創合併症は少なく,小開腹創として妥当であった.

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◆要旨:[目的]小腸閉塞に対する腹腔鏡下手術の有用性を評価した.[対象と方法]2011年11月〜2013年10月の開腹手術(開腹群)36例と2013年11月〜2016年5月の腹腔鏡下手術(腹腔鏡群)34例を対象とし,開腹群と腹腔鏡群の患者背景と手術成績を後方視的に比較した.また絞扼性腸閉塞(絞扼群)と癒着性腸閉塞(癒着群)に群別しそれぞれ比較検討した.[結果]全体の比較で腹腔鏡群は開腹群に比べ有意に手術時間が延長した(70.8分 vs 103.5分)が,出血量は少なく(105.4ml vs 57.1ml),早期経口摂取の開始ができた(4.4日vs 3.7日).術中・術後合併症は17例(47%)vs16例(47%)と差はなかった.腹腔鏡絞扼群で開腹移行や腸管損傷は認めなかった.腹腔鏡癒着群で腸閉塞の早期再発を3例(30%)認めた.[結論]小腸閉塞に対する腹腔鏡下手術は有用であるが,癒着性腸閉塞において腸閉塞の早期再発が課題であり,小開腹併用や開腹移行を躊躇すべきでない.

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◆要旨:当院では2012年5月から胆囊総胆管結石に対して腹腔鏡下胆摘・胆管切石術を導入し,これまでに30例を施行した.同期間の開腹術13例を含め,全例で胆管を切開し切石後C-tubeやT-tubeを留置せず,一次縫合閉鎖を行った.腹腔鏡群30例と開腹群13例について治療成績を比較・検討した.手術時間は腹腔鏡群123.9分,開腹群92.4分で開腹群が有意に短かった(p=0.005).術後在院日数は腹腔鏡群11.5日,開腹群15.0日と腹腔鏡群が短かった.腹腔鏡群でポート追加や開腹移行は認めなかった.術後胆汁瘻は腹腔鏡群3.3%,開腹群7.7%で認めたが,数日で保存的に軽快した.胆囊総胆管結石症に対する腹腔鏡下胆摘・胆管切石術,一次縫合閉鎖は低侵襲で合併症も少なく有効な治療であると思われた.

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◆要旨:今回,鼠径ヘルニアに対しlaparoscopic total extraperitoneal repair(TEP)を施行した患者へ,術後アンケート調査を行い,単独施設におけるTEPの長期成績と,合併症症例の検討を行った.再発は5例で,再発率は0.92%(5/541病変)であった.術後平均10.8か月で再発し,5例中2例は他院で外科治療を受けていた.その他に,漿液腫13例(2.4%),表層SSI 1例(0.18%)があり,慢性疼痛を41人(9.1%)に認めた.再発5例のうち3例は,初回で両側病変を手術し,片側が再発していた.再発はすべて外鼠径ヘルニアで,当院で再手術を受けた3例はすべて外側のメッシュ伸展不良が原因であった.TEPでは,初回で両側病変を手術する際に,特に外鼠径ヘルニア症例に関しては,外側の十分な剝離とメッシュ展開に留意する必要がある.

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◆要旨:右胃大網動脈(RGEA)を用いた冠動脈バイパス術(CABG)施行後の胃癌に対して腹腔鏡下幽門側胃切除術(LDG)を施行した2症例を経験した.症例1は72歳の男性で,胃体下部に早期癌を認めた.ESDを施行したが断端陽性となり,追加切除を要した.術前の血行再建はリスクを伴うため,RGEA温存のLDG, D1+郭清を行った.症例2は87歳の男性で,胃前庭部前壁に2型の進行癌を認めた.RGEAを温存しLDG, D1+郭清を行った.CABGグラフトとして用いたRGEAは胃前庭部の腹側を走行しており,開腹幽門側胃切除術においても損傷の可能性がある.腹腔鏡下手術はその拡大視効果と繊細な操作により,グラフト損傷のリスクを軽減する可能性がある.

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◆要旨:患者は29歳,女性.来院前日から続く上腹部痛のため当院を受診した.腹部造影CT検査で網囊内の拡張した小腸とその腸間膜がWinslow孔に収束する所見を認め,Winslow孔ヘルニアと診断した.絞扼所見を認めなかったためイレウス管による減圧を行い,待機的単孔式腹腔鏡下手術を施行した.視野は良好で嵌入小腸の整復のみで終了し,Winslow孔の閉鎖は行わなかった.術後経過良好で術後8日目に退院し,術後8か月現在再発はない.Winslow孔ヘルニアは稀な疾患であるが,特徴的なCT所見から術前診断は可能である.血流障害のない症例で術前に十分減圧を行えば,単孔式腹腔鏡下手術は可能であると考えられた.

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◆要旨:当科では腹腔鏡下手術のさらなる低侵襲性を求め経腟的標本摘出(transvaginal specimen extraction:TVSE)を行っている.TVSEは整容性の向上,創痛の軽減,低侵襲性が期待される.症例は76歳,女性.S状結腸に進行癌,胃前庭部に0-Ⅱc病変を認めた.手術は胃のD1+郭清を定型5ポートで行い,右下腹部に5mmポートを加え,S状結腸D3郭清を行った.結腸切離後に,胃切を行い,両標本を経腟的に摘出した.結腸はDST吻合,胃はRY再建(胃空腸吻合:機能的端端吻合・Y吻合:circular stapler)を体腔内で行った.後腟円蓋は経腟的に縫合閉鎖した.術後は創痛も軽微であり合併症なく第11病日に退院した.重複癌に対するTVSEによる完全腹腔鏡下手術について若干の考察を加えて報告する.

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◆要旨:患者は71歳,女性.腹水を伴うアルコール性肝硬変で加療中に,咳嗽と呼吸困難を認め入院した.多量の右胸水を認め,胸腔ドレナージを行ったところ1日約1lの排液が続いたため利尿剤を投与したが排液量は減少しなかった.肝性胸水と診断し手術を行った.腹部と右胸部にポートを留置した.胸腔内を生理食塩水で満たした後に気腹を開始したところ横隔膜からの気漏が認められた.気漏部を把持し同部を含む横隔膜を自動縫合器で切除した.さらに切除断端をPGAシートとフィブリン糊を用いて被覆した.胸腔ドレーンの抜去後に胸水の再貯留はなく経過した.肝性胸水に対して胸腔鏡手術を行うことで胸腔ドレナージが不要となり患者の生活の質を改善できた.

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◆要旨:患者は62歳,男性.胃癌に対し開腹幽門側胃切除 Roux-en Y 再建を行った.術後1年1か月で腹痛が出現し当院を受診した.CTで whirl sign を認めたが,虚血所見がなく腹痛症状も弱かったため,保存的に治療したが,短期間に症状が寛解・増悪した.再度CT検査を行い,内ヘルニアが疑われ手術の方針となった.小腸の可動性が高いために起こるという内ヘルニアの性質上,癒着が軽微であることが予想され,腹腔鏡下手術とした.Petersen's defect に空腸空腸吻合部以下の大部分の小腸が陥入していたが,血流障害はなく,整復した後に腹腔鏡下にヘルニア門を縫合閉鎖した.開腹胃切除後に内ヘルニアが起こった場合でも,腹腔鏡下に整復できる可能性が示唆された.

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◆要旨:患者は69歳,男性.両側内鼠径ヘルニアに対してTAPPを施行したが,第2病日に腸閉塞を発症した.保存的治療に抵抗性であり,第6病日に腹腔鏡下手術を施行した.腹腔鏡観察では腹膜縫合部が離開し,同部位に小腸が嵌頓していたため,嵌頓小腸を整復して腸閉塞を解除し,離開した腹膜は再度縫合し,癒着防止シートを貼付して手術を終了した.TAPPを施行するにあたっては,術後腸閉塞を惹起させないための予防策を講じた手術手技を行うことが重要と考えられた.

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◆要旨:患者は77歳,女性.検診の胃透視で異常を指摘され当院を受診した.上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部に径4mmの粘膜下腫瘍を認め,生検を施行されNET G1と診断された.内視鏡的切除を試みたが困難であったため手術の方針とした.腫瘍径が小さく漿膜側から正確に切離ラインを決めることが困難なことが想定されたため,腹腔鏡・内視鏡合同手術(laparoscopy-endoscopy cooperative surgery: LECS)による十二指腸部分切除を選択した.術後経過は問題なく第7病日に退院となった.十二指腸NETについて確立した術式はないが本術式は低侵襲であり,また本症例のような径の小さい腫瘍でも確実かつ必要十分に切除でき,今後有効な治療選択肢になりうると考えられたため報告する.

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◆要旨:患者は53歳,女性.金属アレルギー治療中である.下血を主訴に受診し,直腸癌Rb, type1, cT2, N0, M0, cStageⅠと診断した.腹腔鏡下超低位前方切除の方針としたが,金属アレルギーを併存しており,生体内に金属を遺残させない手術手技が必要と判断した.しかし,超低位前方切除術では,手縫い縫合が非常に困難である.このため,血管処理は吸収性クリップを用い,吻合は直腸反転法の手技を応用して手縫い縫合を行った.直腸反転法が行える適応は限られているものの,直腸剝離操作が十分にできれば吻合は非常に容易なので,手縫い縫合が必要な場合や金属アレルギーが懸念される場合には検討してもよい吻合法と考える.

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◆要旨:患者は79歳,女性.腹部膨満感で受診し,精査にてS状結腸癌による閉塞性イレウスと診断した.腹部造影CT検査で膵体部に多血性腫瘍を認め,その尾側は脂肪に置換されていた.S状結腸癌および膵体尾部脂肪置換を合併した膵神経内分泌腫瘍と診断し,腹腔鏡下S状結腸切除術,膵中央切除術を施行した.手術所見では膵体部腫瘍の尾側は分厚い脂肪組織に置換されていた.尾側膵との消化管吻合は行わなかった.膵腫瘍は組織学的には膵神経内分泌腫瘍であり,尾側膵はランゲルハンス島細胞を散在性に認めるのみであった.術後膵瘻は認めず,耐糖能異常を認めなかった.脂肪置換により尾側膵の再建なしに腹腔鏡下膵中央切除を安全に施行することができた.

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◆要旨:患者は64歳,女性.血尿のために近医で施行されたCTにて,胃の大彎側に接する7mm大の腫瘤を認め,精査目的に当院を紹介され受診した.腫瘤は右胃大網動脈上にあり,造影CTにて早期濃染され,超音波検査にて拍動性の血流を認めたことから,未破裂右胃大網動脈瘤と診断した.1か月の間に長径が7mmから9mmに増大し,腹腔鏡下動脈瘤切除を施行した.病理組織にてsegmental arterial mediolysis (SAM)と診断した.胃大網動脈瘤未破裂例に対する腹腔鏡下動脈瘤切除は,低侵襲なうえに比較的容易であり,病理診断も可能となるため,有用な治療法と考えられた.

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◆要旨:腎盂尿管移行部狭窄症に対する腹腔鏡下手術は標準術式となってきた.さらなる低侵襲性を目指して,近年単孔式腹腔鏡下腎盂形成術(LESS-P)が取り組まれている.当科では,2014年9月から2016年6月までに16例に本手術を施行したので報告する.手術は臍横を半円状に切開し,アクセスポートを装着して腹腔鏡下手術を行っており,3mmポートを縫合用に追加している.腎盂尿管吻合はdismembered pyeloplasty法で行っている.平均手術時間は226分で,出血量は平均54.1mlであった.全例でLESS-Pが完遂できており,周術期合併症は認めなかった.成功率は100%で,再手術を要した症例もない.本術式は諸家の報告とも遜色なく安全に施行できており,整容性においても有用であると考える.

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◆要旨:膵頭十二指腸切除術(PD)のなかでも膵鉤部と上腸間膜動静脈との間を切離する手技は最も難度が高く,開腹手術でも様々な手技の工夫が行われている.筆者らは腹腔鏡下手術の利点である尾側からの拡大視野を活かした空腸起始部側からのArtery first approachを用いて腹腔鏡下PDにおける同手技を標準化した.これまで7例に施行し,手術時間,出血量,術後在院日数の中央値は526分,24ml,20日で,致命的な合併症は認めず,良好な成績が得られている.筆者らの手技の要点を報告する.

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◆要旨:直腸癌手術におけるdouble stapling technique(DST)は再建の標準術式として確立されているが,残存直腸が長い症例などにおいては難渋する症例をしばしば経験する.筆者らが直腸DST吻合において円滑なcircular staplerの挿入のために行っている手術手技であるAir Enema法について報告する.Air Enema法とは,あらかじめ潤滑用ゼリーと空気を直腸内に注入してからcircular staplerを挿入しDST吻合を行う方法である.残存直腸を空気により拡張させることで,より安全で円滑なcircular staplerの挿入を助長できる.当院における通常挿入群とAir Enema群のcircular staplerの挿入時間を検討した結果,有意差をもってAir Enema群で挿入時間が短かった.Air Enema法を行うことでcircular staplerの挿入が容易となり円滑な直腸への挿入が可能となった.

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◆要旨:TAPP法におけるメッシュ展開の手技は施設によって様々である.パリテックス ラップ プログリップTMメッシュはマイクログリップが組織に固定するため,タッキングが必要ないが,腹腔内でメッシュが大網や腸管・腹膜などの意図しない組織に接着する欠点が存在する.筆者らは意図しない接着を回避し,さらに展開が容易な方法を提案する.メッシュのマイクログリップ面にポリエチレン製シートを敷いて,ロール状にして中央を2-0絹糸で結ぶ.腹腔内に挿入して腹膜外側へ移動し内側上縁にメッシュを接着させる.糸を抜去しメッシュを少しずつ展開する.ポリエチレン製シートを少しずつ後面から引き抜き,ポリエチレン製シートがなくなった部分を接着させて展開は完了する.

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欧文目次

日本内視鏡外科学会への入会について

EVENT NEWS

投稿時のチェックリスト

編集後記 本田 五郎
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 過日,中国全土から腹腔鏡下肝切除術を積極的に行っている施設の外科医が集まるシンポジウム(於上海)に呼ばれて参加してきました.驚いたことに,我々日本の肝臓外科医が最も得意とする腹腔鏡下系統的肝切除術を,それもS7やS8領域の系統的肝切除術を我々と全く同じ手技で行っている外科医が数名いました.グリソン枝の根部を露出して処理し,阻血域に沿って肝実質を離断し,離断面に肝静脈を露出するという日本の肝臓外科医のお家芸ともいえる手技です.しかも,この2〜3年の間に我々の2倍,3倍の症例数を経験しており,平均手術時間は明らかに我々よりも短い値でした.仲の良い上海の肝臓外科医とこのことについて話したのですが,やはり「腹腔鏡手術はビデオで容易に勉強できるからすぐに上手くなるのだと思う」とのことでした.

 High volume centerと呼ばれる施設の症例数が日本と比較して桁違いに多いのは中国に限ったことではなく,私はこれまで,手術の質の向上は症例集約の度合いに比例しないと高を括っていました.しかし,そのような桁違いの症例集約の中で我々日本の外科医と同様にprecise(緻密)な手技を目指して発展している中国の外科医たちを見て私は初めて脅威の念を感じました.決して勝ち負けの問題ではありませんが,数年後には中国の外科医が習得して標準化した手技や技術を日本の外科医が学んで実践するような状況になる可能性は大きいと思います.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
22巻5号 (2017年9月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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