日本内視鏡外科学会雑誌 22巻4号 (2017年7月)

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◆要旨:腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP法)を初発鼠径部ヘルニアに導入して121症例/130病変を経験した.単一術者が行った連続100症例/105病変の総手術時間を各因子別に解析した.総手術時間は平均87.9±22.2分であった.男性症例で手術時間が有意に延長したが,左右別と日本ヘルニア学会(JHS)分類別では手術時間に有意差を認めなかった.導入初期20例を除いて総手術時間が平均値より30%以上延長した症例につき検討した.手術時間延長症例は全例JHS I型男性症例でヘルニア囊が陰囊内に至る症例,または左側でS状結腸がヘルニア囊に癒着している症例であった.術後合併症は認めず,術後再発も発生していない.TAPP法は安全に導入されていた.

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◆要旨:閉鎖孔ヘルニア嵌頓に対して緊急腹腔鏡下手術を行った20例の手術成績から本術式の有用性について検討した.腸管切除例9例を含む全例が腹腔鏡下で完遂可能であった.術中に対側の閉鎖孔ヘルニアを56.3%と高率に認め,さらに他のヘルニア合併を75.0%に認めた.骨盤腔内精査における腹腔鏡の優越性が,これらの病変を視認可能にしたと考えられた.ヘルニア門の修復法は,再発や異時性ヘルニアを考慮して,閉鎖孔と筋恥骨孔の両方を覆うことができるTAPP法を選択し,汚染症例に対しては二期的根治術を行った.潜在病変を確認し,同時に予防的根治術を行うことができる腹腔鏡下手術は,閉鎖孔ヘルニア嵌頓症例に対する有用な術式と考えられた.

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◆要旨:傍卵巣囊胞捻転と卵管捻転を同時に伴った15歳女児の症例を報告する.患者は,腹痛を主訴に当科紹介となった.下腹部に圧痛,腹膜刺激症状を認めた.画像検査にて,骨盤内に大きさの違う2つの囊胞を認めた.腹腔鏡下手術を行い,術中所見にて左卵管は捻転し,腫瘤状に腫大していた.卵管に連続して,捻転した腫瘤を認めた.術前にみられた2つの囊胞は,捻転した傍卵巣囊胞と卵管の捻転により生じた卵管留水腫と考えられた.卵管ぎりぎりで囊胞壁を切除して断端を閉鎖し,卵管および卵管采はそのまま腹腔内に戻した.子宮付属器捻転に関しては,術前に画像診断することが困難なことが多く,腹腔鏡下手術は診断の確定および治療に有効である.

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◆要旨:患者は73歳,男性.1か月前から続く心窩部痛を主訴に救急外来を受診した.採血で貧血を認め緊急上部消化管内視鏡を施行し,約10cm大の単発巨大胃石と活動期の胃潰瘍を複数認め加療目的で入院となった.プロトンポンプ阻害薬の点滴と絶食による保存的治療で症状は軽快したが,胃石の硬さと大きさから内視鏡的治療は困難と判断し,手術の方針とした.第20病日,腹腔鏡下に胃を切開し胃石を摘出した.胃石は12×5×5cmで,内部は橙黄色であり柿胃石が疑われた.術後経過は良好で術後6日目より食事を開始し,13日目に退院となった.腹腔鏡下での胃石摘出術の報告は少なく,文献的考察を含めて報告する.

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◆要旨:睡眠時無呼吸症候群と高血圧の既往のある高度肥満症の31歳男性が自動車運転中に衝突し救急搬送された.CTで頸椎損傷の他に右上側腹部の腹壁ヘルニアを認めた.バイタルは安定し腸管嵌頓を疑う所見を認めず,1か月後にリハビリ施設へと転院した.受傷9か月後に嵌頓の所見を呈し保存的治療を要した.その後,食後に臍周囲に間欠的腹痛を認めた.BMIが57.5から48.5kg/m2に減り腹腔鏡下修復術を行った.12×7cmのヘルニア門を半閉鎖後に25×20cmのメッシュを腹腔内に留置した.6か月経過し再発を認めない.外傷性腹壁ヘルニアに他部位の損傷を伴う場合には待機的手術が勧められる.高度肥満の陳旧性外傷性腹壁ヘルニアに対して安全に腹腔鏡下修復術を施行しえた.

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◆要旨:患者は71歳,女性.下部直腸癌に対して腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した.術後会陰部の創感染と尿路感染を認めたが,保存的治療にて軽快した.術後8か月目に会陰部の膨隆を自覚した.立位で会陰部に手拳大の膨隆を認め,腹臥位で還納された.腹部CT検査では骨盤底部から会陰部に脱出する小腸を認めた.続発性会陰ヘルニアと診断した.腹腔鏡下にて腹腔内を観察すると,骨盤底に4×4cmのヘルニア門を認めた.VENTRIOTM Hernia Patchを用いて修復術を行った.術後1年経過するも明らかな再発は認めていない.続発性会陰ヘルニアに対する腹腔鏡下ヘルニア修復術は,有用な治療のオプションになりうると考えられた.

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◆要旨:患者は86歳,女性.気分不良のため受診した.精査にて胃穹窿部大彎に8cm大の胃粘膜下腫瘍を認め,待機的に腹腔鏡下胃局所切除術を施行した.腫瘍が食道胃接合部に達し,食道粘膜を胃内に引き込んでいたため慎重に切除範囲を決定した.胃壁欠損部の閉鎖は層々吻合法にて腹腔鏡下に縫合閉鎖することで胃の変形を最小限に抑え,食道の狭窄などを起こすことなく閉鎖できた.術後合併症などなく術後15日目に退院となった.食道胃接合部に達する腫瘍を切除する際は,術後の変形,狭窄などの可能性を考慮し,噴門側胃切除術を選択することがあるが,切開・閉鎖方法を工夫することで,より低侵襲である腹腔鏡下胃局所切除術を施行することが可能であった.

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◆要旨:本邦における妊娠後期の虫垂炎に対する腹腔鏡下手術の報告例は非常に稀である.患者は32歳,女性.妊娠32週目に下腹部痛を主訴に当院を受診し,切迫早産を伴う急性虫垂炎と診断し,同日緊急手術を施行した.自施設における過去の症例報告をもとに腹腔鏡下手術を選択し,安全に手術を施行しえた.術後経過は良好であり,切迫早産の増悪や胎児異常を認めず,第16病日に退院となった.腹腔鏡下虫垂切除術は,妊娠後期においても安全に施行可能であると考えられた.

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◆要旨:単孔式腹腔鏡下手術の利点は創の縮小による整容性の向上である.筆者らは単孔式腹腔鏡下結腸切除術において手術創の最小化を目指した体腔内吻合を施行した3例を経験したので,手術手技の要点と治療成績を報告する.すべての操作を臍に装着したマルチチャンネルポートのみから行い,必要に応じて縫合糸による牽引を行った.トロッカー追加はなく,体腔内吻合に要した平均時間は42分で,平均創長は26.7mmであった.縫合不全,腹腔内膿瘍の発症はなかった.単孔式腹腔鏡下結腸切除術においても牽引糸を有効に用いることで安全かつ腹腔内汚染を最小限に抑えた体腔内吻合が可能である.

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◆要旨:Transabdominal preperitoneal repairに用いるProGripTM(COVIDIEN社製)は,マイクログリップにより面で組織に固定する.その強固な固定性により配置,展開が難しい.本法は,前処置としてメッシュ上縁から3cmに横線を引き,横線より下方部分を横線まで2回折り込み,もう一度横線で折り込む.腹膜前腔で内側は腹直筋外縁より内側に3cm,上縁は内鼠径輪の直上にメッシュを配置する.初めにメッシュを腹側に展開し,次に背側に2回展開する.筆者らは,メッシュのmigrationによる再発予防のため安全域を3cm確保し,容易に適正な位置に配置,展開可能な方法を考案した.

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◆要旨:スマートフォンは現在,国内でも一般的に普及しており,そのカメラ機能はビデオカメラと同等以上の性能を有する.昨今,様々な内視鏡手術トレーニングボックスの自作の報告はあるものの,スマートフォンを用いたトレーニングボックス作製の報告はまだみられない.今回筆者らは,スマートフォンをカメラに用いて,そのほかの躯体なども市販品や廃品を用いてトレーニングボックスを作製した.若手医師の自然気胸の初執刀に先立ち,このトレーニングボックスを用いて,トレーニングを行い安全な手術の完遂が可能であったので報告する.

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欧文目次

日本内視鏡外科学会への入会について

EVENT NEWS

編集後記 中村 雅史
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 4月の編集会議当日は花冷えで列島中が震えていましたが,5月に入るとすっかり気温が上昇し,文字通り立夏の様相となっています.夏の予感とともに,私が編集委員を拝命してはじめて編集会議に出席して以来ちょうど1年が経過しようとしています.私の専門である肝胆膵外科以外の領域の多くの論文を見せていただく機会に恵まれ,異なる分野の様々な手技・考え方にすこぶる感心し続けた1年間でした.

 本誌は1991年の創刊以来,会員の皆さまの熱心な投稿と代々の編集主幹の情熱により,今回の22巻4号まで途切れることなく発刊され続けています.本号も消化器外科,婦人科,胸部外科と幅広い分野の論文を掲載しています.また,「日本内視鏡外科学会技術認定制度」実施のお知らせも掲載されていますのでお見落としなく.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
22巻4号 (2017年7月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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