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編集後記
本田 五郎
pp.724
発行日 2017年9月15日
Published Date 2017/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.4426200468
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過日,中国全土から腹腔鏡下肝切除術を積極的に行っている施設の外科医が集まるシンポジウム(於上海)に呼ばれて参加してきました.驚いたことに,我々日本の肝臓外科医が最も得意とする腹腔鏡下系統的肝切除術を,それもS7やS8領域の系統的肝切除術を我々と全く同じ手技で行っている外科医が数名いました.グリソン枝の根部を露出して処理し,阻血域に沿って肝実質を離断し,離断面に肝静脈を露出するという日本の肝臓外科医のお家芸ともいえる手技です.しかも,この2〜3年の間に我々の2倍,3倍の症例数を経験しており,平均手術時間は明らかに我々よりも短い値でした.仲の良い上海の肝臓外科医とこのことについて話したのですが,やはり「腹腔鏡手術はビデオで容易に勉強できるからすぐに上手くなるのだと思う」とのことでした.
High volume centerと呼ばれる施設の症例数が日本と比較して桁違いに多いのは中国に限ったことではなく,私はこれまで,手術の質の向上は症例集約の度合いに比例しないと高を括っていました.しかし,そのような桁違いの症例集約の中で我々日本の外科医と同様にprecise(緻密)な手技を目指して発展している中国の外科医たちを見て私は初めて脅威の念を感じました.決して勝ち負けの問題ではありませんが,数年後には中国の外科医が習得して標準化した手技や技術を日本の外科医が学んで実践するような状況になる可能性は大きいと思います.
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