日本内視鏡外科学会雑誌 22巻6号 (2017年11月)

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◆要旨:当院では日本内視鏡外科学会技術認定取得者(胃)が赴任した,2010年4月より腹腔鏡補助下幽門側胃切除術(LADG)を本格的に導入した.導入時の検討として,開腹手術との比較がいくつか行われ,報告されている.しかし手術時間や侵襲度などが明らかに異なる2つの手術方法を比較して,導入の是非を判断することは難しい.今回筆者らは,技術認定取得者(胃)の在職中と異動後のLADG症例の短期・長期成績を比較検討し,技術認定取得者が主導的に関与したLADG導入の安全性や妥当性について検証した.結果として,手術時間,麻酔時間,郭清リンパ節個数,術後在院期間に有意差を認めたが,出血量,合併症発生割合,3年間の生存率では有意差は認めなかった.慎重な操作や定型化などの改善点はあるが,当院における腹腔鏡補助下幽門側胃切除術の導入は,外科的・腫瘍学的に安全かつ妥当であり,また技術認定取得者の異動後も安全性を維持しつつ運用できていることが示唆された.

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◆要旨:[目的]子宮全摘出後の腟断端感染の原因・対策については一定の見解が得られていない.そこで腹腔鏡下,および腹式子宮全摘出術後の腟断端感染の危険因子を後方視的に検討した.[対象と方法]2011年から2013年までの良性疾患における子宮全摘症例438例〔腹腔鏡下子宮全摘(TLH群)247例,腹式子宮全摘(TAH群)191例〕の年齢,BMI,手術時間,出血量,検体重量,術式,また子宮内膜症,Douglas窩閉塞(CCDSO)と断端感染の関連を調べた.[結果]単変量解析では,年齢(p=0.01),CCDSO(p=0.02),子宮内膜症性囊胞(p=0.02)が腟断端感染と有意な関連を認めた.多変量解析では,年齢(若年者,p=0.02),CCDSO(p=0.04)が腟断端感染の独立した危険因子として抽出された.[結論]年齢,CCDSOが子宮全摘出後の腟断端感染の独立した危険因子であることがわかった.

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◆要旨:患者は50代,女性.3日間続く腹痛を主訴に来院した.腹部CTにて左上腹部にtarget signを認め,jejunojejunal typeの腸重積症と診断し腹腔鏡下手術を施行した.全小腸を観察したが重積腸管を認めず,横行結腸に大網を一部巻き込む形の重積部位を確認し,これをHutchinson手技にて解除した.腫瘍性病変の有無などが診断されていないため解除のみで手術を終了した.術後大腸内視鏡を施行したが明らかな腫瘍性病変は認めず,特発性腸重積症の診断となった.成人の腸重積症の発生原因の多くは腸管の腫瘤性病変であり,特発性腸重積症は稀である.今回,横行結腸に発症した成人特発性腸重積症の1例を経験したので報告する.

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◆要旨:患者は24歳,女性.嘔吐,腹痛を主訴に救急搬送された.腹部骨盤造影CTで小腸に狭窄を2か所認め,closed loopを形成した小腸が網囊内へ陥入していた.大網裂孔ヘルニアによる絞扼性腸閉塞を疑い,緊急手術を施行した.腹腔鏡で観察すると小腸は著明に拡張しており,横隔膜下や骨盤腔に血性腹水を中等量認めた.大網に裂孔があり網囊内に小腸が嵌頓していた.嵌頓を解除後,再発予防のためヘルニア門となった大網を切離し開放した.その後,うっ血した小腸を約40cm切除した.術後経過は良好で術後15日目に退院となった.本症例のような大網裂孔ヘルニアにより腸閉塞をきたした症例に対して,腹腔鏡下手術は有用であると考えられた.

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◆要旨:患者は67歳,女性.逆流性食道炎の診断で加療中に,症状の増悪を認め紹介となった.上部消化管内視鏡検査で横隔膜上食道憩室と軽度の食道裂孔ヘルニアを認めたが逆流性食道炎は認めず,上部消化管造影検査で5cm大の食道憩室と側臥位で造影剤が食道内に逆流する所見を認めた.以上より自覚症状の原因は憩室内容の逆流と考え,胸腔鏡下憩室切除術を施行した.病理結果は真性憩室であった.本症例では憩室の位置と腹腔鏡操作による食道裂孔ヘルニアの悪化を考慮して,胸腔鏡下での憩室切除を選択し,術後主訴の著明な改善を認めた.今回筆者らは横隔膜上食道憩室に対して胸腔鏡下憩室切除術を施行した1例を経験したため文献的考察を加え報告する.

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◆要旨:妊婦に対して安全に腹腔鏡下虫垂切除術を施行しえた1例を経験したので報告する.患者は妊娠17週,30歳女性.腹痛を主訴に前医を受診し,急性虫垂炎が疑われたために当院へ紹介された.腹膜刺激症状が陽性であり,また腹部超音波にて虫垂の腫大を認め,急性虫垂炎と診断し手術の方針とした.本邦では妊婦に対する腹腔鏡下虫垂切除術の報告例が少なく現時点での適応には慎重であるべきだが,妊娠週数と子宮底の位置を考慮しポート配置を工夫することで妊娠中でも安全に行うことが可能で,有用な治療法の1つになりうると考えられた.

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◆要旨:患者は65歳,女性.会社の検診の腹部超音波検査にて卵巣囊腫が疑われ,当院婦人科を受診し,その際に施行された腹部CTで,骨盤内腫瘍を指摘され当科紹介受診となった.腹部造影CTで前仙骨部に80mm大の囊胞性腫瘤を認め,腫瘤はS3の高さから括約筋を貫き尾骨に接して存在していた.尾骨の合併切除および骨盤深部剝離操作が必要と考えられたことから,腹腔鏡を用いた経腹・仙骨式アプローチによる前仙骨腫瘤切除術を行った.病理組織学的には,類表皮腫であった.前仙骨部類表皮腫の本邦報告例では,腹腔鏡を用いた経腹式アプローチに加え,仙骨式アプローチを併用した報告例はなく,視認性・操作性・安全性の観点からも有用であったため報告する.

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◆要旨:患者は59歳,女性.殿部腫瘤と排便困難を1年半前から自覚していた.仙骨前面から殿部にかけて径18cmの腫瘤を認め,仙骨前囊胞性腫瘍と診断して手術を施行した.経腹・経仙骨の双方向からのアプローチで,腹腔内操作は腹腔鏡を使用し直腸背側と仙骨前面からの腫瘍剝離を骨盤底まで施行した.その後経仙骨的に殿部皮下と尾骨を剝離し腫瘍を一括切除した.組織は類表皮囊腫で悪性所見は認めなかった.術後1年現在再発は認めていない.仙骨前類表皮囊腫は本邦で100例が報告され,時に悪性化する稀な疾患である.完全切除が基本であるが標準術式は定まっていない.腹腔鏡を併用することでサイズの大きい仙骨前腫瘍に対し低侵襲で安全性が高い手術を行うことができた.

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◆要旨:患者は43歳,女性.来院2日前より心窩部痛を自覚し当院を受診した.採血結果で軽度の肝機能異常があり,画像検査で胆囊結石を認め胆石症と診断された.排泄性胆道造影CTにて胆囊管と前区域枝胆管を連絡する副交通胆管枝を認めた.術前に経鼻胆道ドレナージチューブを留置し,術中胆道造影でナビゲーションしながら副交通胆管枝切除を伴う腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.副交通胆管枝を有する胆石症の一部では,副交通胆管枝切除により胆管結石の発症を防止できる可能性がある.また術前の胆道チューブ留置は,腹腔鏡下胆囊摘出術における安全性や正確性を高め,有益であると考えた.

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◆要旨:患者は80歳,男性.交通外傷8か月後に転院先で酸素化低下を認めたため紹介となった.左横隔膜ヘルニアへの胃と横行結腸の嵌頓と診断し,緊急で腹腔鏡下横隔膜ヘルニア修復術を施行した.胃と横行結腸を腹腔内へ整復後,門は非吸収糸による結節縫合とステープラーを用いて閉鎖し,メッシュで補強した.術後に胸腔ドレーンを留置して陰圧管理を行い,合併症なく転院した.外傷性横隔膜ヘルニアに対する腹腔鏡下アプローチで完遂するための工夫とメッシュ留置の有用性について若干の文献的考察を加えて報告する.

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◆要旨:診断的腹腔鏡検査により迅速な診断が可能であった結核性腹膜炎の2例を経験した.症例1は47歳,男性.発熱を主訴に受診した.CT検査で大網の肥厚を認めたが,精査で腫瘍性病変は認めなかった.診断的腹腔鏡検査を行い翌日に迅速病理検査,結核菌polymerase chain reaction検査(以下,Tb-PCR)により結核性腹膜炎と診断された.症例2は87歳,女性.発熱を主訴に救急外来を受診した.CT検査で腹水と大網肥厚を認め,精査で悪性疾患を認めなかった.診断的腹腔鏡検査を行い迅速病理検査,Tb-PCRにより結核性腹膜炎と診断された.結核性腹膜炎に対する診断的腹腔鏡は感度,迅速性の面で有用な検査である.

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◆要旨:腹腔鏡・内視鏡合同手術(laparoscopy endoscopy cooperative surgery:LECS)は腹腔鏡と内視鏡を併用し,粘膜下腫瘍の過不足ない切除を行う手技である.今回筆者らは上行結腸脂肪腫に対して,LECSによる上行結腸楔状切除術を施行したので報告する.患者は71歳,女性,主訴は下血.下部消化管内視鏡検査で上行結腸に約40mmの粘膜下腫瘍を認め,CT検査で上行結腸脂肪腫が疑われた.手術は内視鏡で腫瘍を確認し一部全層切開し,腹腔鏡下に超音波凝固切開装置で全周性に切離し腫瘍を切除した.バッグに回収し経肛門的に摘出し,腸壁欠損部は自動縫合器で閉鎖した.術後経過良好で9日目に退院した.病理診断は成熟脂肪腫であった.本術式は小開腹が不要で低侵襲かつ整容性の優れた術式と考えられた.

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◆要旨:比較的稀な成人のBochdalek孔ヘルニアを経験した.患者は36歳,男性.4か月ほど前から左側胸部の鈍痛と軽い呼吸困難があり,精査目的で紹介受診となった.CTおよびMRI検査では,大網の一部が左横隔膜の背側の裂孔を通じて,胸腔内へ脱出していた.左側Bochdalek孔ヘルニアと診断し,腹腔鏡下にヘルニア修復術を施行した.術後経過は良好であった.本症は胸腹の境に発生する疾患のため,経腹的と経胸的な術式があるが,その選択には一定の基準はない.また,腹腔鏡下手術は近年積極的に適応されているが,開腹手術への移行例など,困難例の報告もある.Bochdalek孔ヘルニアに対しては,画像所見,術前検査所見,患者体型を考慮した手術計画を立て,必要時には胸腹部両側からアプローチできる手術準備をすることが重要である.

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◆要旨:やや手術難度が高いとされる急性胆囊炎に対する腹腔鏡下胆囊摘出術(LC)において,単孔式腹腔鏡下手術(SILS)用デバイスを応用した手術指導の工夫を報告する.SILSと同様に臍部を2.5cm切開し,同部位より2本のトロッカーを留置する.指導的助手はこのうちの1本を右手用として使用し,止血や圧排とともに術野内での指導を行う.当科でLCを施行した275例を対象に検討を行った.導入以降,技術認定取得前の修練医において,開腹移行,術後合併症を認めず,術後在院期間の有意な短縮を認めた.急性胆囊炎に対するLCはSILS用デバイスを応用した手術指導方法により安全・確実に施行可能であると考えられた.

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◆要旨:腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復術における鮒田式胃壁固定具ⅡTMを使用したメッシュ固定の工夫について報告する.メッシュを腹腔内に挿入し仮固定した後に,カテラン針を用い,試験穿刺を行い,運針の方向を決定する.その後,鮒田式胃壁固定具ⅡTMを用いて2-0ナイロンを皮下,腹壁,メッシュ,腹壁,皮下と貫通させ,モスキートを用い,皮下を通して一方の糸を同側に引き出し,皮下にて結紮縫合する.8〜12針縫合固定した後,吸収性タッカーにてメッシュを固定し,double Crown法を施行する.本法は,意図的な運針と簡便かつ確実なメッシュの固定が可能で有用な方法と考えられた.

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◆要旨:筆者らは食道癌根治術として十分な縦隔郭清を食道裂孔および頸部から縦隔鏡下に行う手術手技を臨床応用するためThiel法固定献体を用いて検討・開発し,報告してきた.左頸部気縦隔法のみでも106tbLリンパ節の郭清が可能であり,臨床例でも一部応用しているが105および106recRの郭清は一部不十分であることが判明した.そのために右頸部からも気縦隔操作を併用したところ,より徹底した上縦隔郭清が施行可能であることが分かり,ここにその手技を報告する.

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◆要旨:有棘縫合糸の腹腔内での使用は近年増加しているが,一方でその特殊な形状に伴う合併症も報告されている.筆者らは,合併症を予防する目的で,有棘縫合糸を用いた「隠し縫い」を考案し,これを腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術における腹膜縫合の際に実践している.「隠し縫い」は始めと終わりの糸の断端を腹膜の裏に隠し,また縫合途中の糸も腹膜を裏に翻転することにより,糸の露出を最小限に抑える方法である.自験例では15例全例で肉眼的に糸の隠伏が可能であった.また現在までに有棘縫合糸に起因する合併症を全く経験していない.今後長期観察による検討が必要であるが,「隠し縫い」により有棘縫合糸特有の合併症の軽減が期待できると考える.

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日本内視鏡外科学会への入会について

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編集後記 文 敏景
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 2016年から編集委員の一員を仰せつかりましたがん研有明病院呼吸器センター外科の文敏景です.編集委員に任命いただき誠に光栄であるとともに身が引き締まる思いです.

 まず私と内視鏡外科の関わりについて述べたいと思います.私は平成9年に虎の門病院外科レジデントとして採用されましたが,その当時の研修医が経験する内視鏡外科手術といえば腹腔鏡下胆囊摘出術でした.その頃,虎の門病院では下部消化器外科(大腸外科)で腹腔鏡下大腸切除術が導入され始めたばかりであり,我々の世代がちょうど開腹手術と腹腔鏡手術の移行期を経験した世代となります.研修医3年目の時に,2016年大上賞を受賞された河野匡先生が呼吸器センター外科部長として赴任されました.その時に胸腔鏡下の縫合,結紮,剝離の技術,自動縫合器の使用法などを見せていただき,拡大視下で行う緻密な操作に非常に感銘をうけたことを覚えています.当時の肺癌に対する胸腔鏡下手術は,肺葉切除術を安全に行うことが最優先でした.しかし,肺葉切除術の手技が標準化してくると,次のステップとして縦隔郭清の手技の確立に取り組み,河野先生とともに試行錯誤しながら郭清手順を確立していったことが私の今の財産になっています.平成20年にがん研有明病院呼吸器センター外科に赴任いたしましたが,術者の立場から若手外科医を指導する立場に変わり,如何に効率よく指導していくかを日々試行錯誤しています.私の研修医時代から現在にいたるまで,内視鏡手術全般のデバイスや技術は著しく進歩しました.会員の皆様からの論文を査読させていただくことで私自身も最新の知見や手技の工夫,他施設の教育方法などたくさんの情報を得て勉強させていただいております.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
22巻6号 (2017年11月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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