日本内視鏡外科学会雑誌 22巻3号 (2017年5月)

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◆要旨:[目的]機能的端々吻合術2回法の4回法に対する治療成績と医療経済の違いを明らかにする.[対象と方法]対象は2011年3月から2015年5月に当院で施行した腹腔鏡補助下結腸切除術のうち機能的端々吻合術で再建した119例である.切除再建に自動縫合器を4回使用するclosed法(4回法,n=55)と2回使用するsemi-closed法(2回法,n=64)の2群に分類し,術後合併症発生率とコストの違いについて後向きに検討した.[結果]術後合併症は4回法で7例(13%),2回法で8例(13%)に認め,両群間で発生率に差を認めなかった.一方,2回法の4回法に対する医療費削減効果は定価換算で1症例あたり最大5万7千円と推定された.[結論]2回法は安全かつ安価であり有用な方法である.

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◆要旨:第7回膵臓内視鏡外科研究会学術集会において現在の腹腔鏡下膵切除の現状と意識を把握するため,同研究会会員にアンケート調査を行い,全国113施設(452症例)より回答を得た.1施設あたりの年間症例数は中央値4例と少なく,施設間差があることが明らかとなった.80%の施設で,日本内視鏡外科学会技術認定医が手術に参加しており,内視鏡外科技術認定医の有無が腹腔鏡下膵切除の施設経験の有無と有意に相関していた(p=0.0128)ことから,膵臓内視鏡手術を広げるためにはさらなる内視鏡外科技術認定医の養成が必要であることが示唆された.また,2016年より膵癌への保険適応拡大が行われたが,多くの施設がT2までの膵癌を適応と考えていた.膵癌に対しては開腹手技と同等の生存成績が得られる対象を臨床研究で明らかにする必要がある.

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◆要旨:患者は79歳,女性.cT2,N0,M0胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除術,デルタ吻合によるBillrothⅠ法再建を施行した.第2病日より嘔吐がみられ,胃造影検査で吻合部の狭窄を認めた. 浮腫性狭窄と診断し,症状が遷延するためヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム(ソル・コーテフ)の血管内投与を開始したところ,投与翌日から腹部症状の改善がみられ経口摂取可能となった.術後の吻合部狭窄は治療に難渋することがあり,入院,絶食期間の延長が必要で患者の負担が大きい.今回患者に対し侵襲の少ない低用量,低力価のステロイド投与により吻合部狭窄が改善した症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

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◆要旨:患者は69歳,女性.嘔気を主訴に近医受診し,腹部単純X線で著明な胃拡張を認めた.精査目的に当院紹介受診となり腹部造影CT検査にて胃軸捻転が疑われた.内視鏡での整復は困難であったため,手術目的に当科紹介となった.腹腔鏡下に腹腔内を検索したところ,胃が背側に向かって長軸方向に捻転し,胃体部が小網にできた裂孔に陥入して内ヘルニアを呈していた.腹腔鏡操作のまま陥入,捻転を解除したのち,小網裂孔を体内結紮で閉鎖し,胃体部と左上腹部壁側腹膜を体内結紮で縫合固定した.術後経過良好で退院後も再発は認めていない.小網裂孔に胃体部が陥入して発症した胃長軸捻転症は本邦初の報告となる.

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◆要旨:右側肝円索を伴う急性胆囊炎2例に単孔式腹腔鏡下胆囊摘出術を施行したので報告する.症例1は58歳,男性.心窩部痛の精査の結果急性胆囊炎と診断され,単孔式手術が施行された.肝円索と胆囊床が近接しており,肝円索の腹壁への吊り上げで3trocarでも順行性剝離が可能となった.症例2は67歳,男性.同様に急性胆囊炎と診断され手術が施行された.単孔式で開始したが頸部の展開に難渋し,trocarを追加して順行性に剝離し胆囊を摘出した.両症例とも胆囊管認識のために順行性剝離が有効であった.また,単孔式手術の際は肝円索挙上により胆囊の把持挙上が不要となり,挙上鉗子の干渉を減らして順行性剝離が可能であった.

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◆要旨:患者は78歳,女性.関節リウマチにてステロイドと免疫抑制薬で加療中であった.食後の心窩部痛にて救急搬送され,胸腹部造影CT,食道造影から下部食道右側の特発性食道破裂と診断した.胸腔内への穿破を認めなかった.手術は,腹腔鏡下に食道裂孔を開放し,破裂部は2層で縫合閉鎖・修復を行った.汚染は縦隔内に留まっており,胸腔操作は行わなかった.持続洗浄が可能なドレーンを食道腹側・背側に留置した.術後は縫合不全,縦隔炎や膿瘍形成はなく軽快退院した.これまでの食道破裂に対する食道縫合の報告は胸腔内アプローチが多いが,縦隔内に限局する汚染に対しては腹腔鏡を用いて経食道裂孔アプローチで十分治療可能と考えられた.

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◆要旨:患者は65歳,男性.便秘と腹部膨満感を主訴に当院を受診し,精査で直腸癌による大腸イレウスと診断された.緊急でS状結腸ストーマを造設し,症状が改善したところで,腹腔鏡下低位前方切除術を施行したが,以前に受けたWhitehead手術による肛門狭窄のため,DST法(double stapling technique)は困難であった.そのため,腹腔内で端側吻合を行った.術後経過は良好で現在も再発なく経過している.今回筆者らはWhitehead手術による肛門狭窄を伴った直腸癌手術を腹腔鏡下に完遂することができたので,若干の考察とともに報告する.

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◆要旨:【目的】精神科患者に対する腹腔鏡下手術の安全性を評価する.【対象・方法】2014年4月から2016年3月までに,腹腔鏡下に大腸癌手術を行った17名を対象とした.17名の精神疾患に関連する特徴,短期治療成績を検討した.【結果】17名はすべて医療保護入院であった.術後身体拘束を必要としたのは15名(88.2%)であった.術後精神疾患の増悪で長期入院を必要とした患者はなかった.また,術後抗精神病薬の内服数が増加した症例はなかった.【結論】腹腔鏡下手術によって精神疾患が増悪する可能性は低い.症例の蓄積により精神科患者に対する腹腔鏡下手術の利点が明らかになる可能性がある.

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◆要旨:食道亜全摘・胸骨後経路再建術後の胃管癌に対して腹腔鏡下縦隔アプローチにて胃管全摘術を行った症例を経験したので報告する.症例は66歳の男性.53歳時に食道癌に対し右開胸食道亜全摘・胸骨後経路胃管再建術,63歳時に喉頭癌に対し咽頭喉頭頸部食道全摘・遊離空腸再建術を施行された.経過観察中に胃管癌を発症し手術を施行した.手術は腹腔鏡下縦隔アプローチにて胃管と周囲臓器との癒着を剝離し,次に頸部から縦隔剝離層と交通させ空腸を切離,胃管と郭清組織を腹腔内に抜去後に開腹下に結腸再建を行った.本術式では術前シミュレーションによるポート位置などの工夫により良好な視野で低侵襲に胃管全摘術を行うことが可能であった.

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◆要旨:PET検診にて指摘され術前低リスク食道GISTと診断しえた症例に対して胸腔鏡下核出術を行ったので報告する.手術は左半腹臥位,片肺分離換気,気胸併用下に3ポートで胸腔鏡下に行った.術中内視鏡にて腫瘍直下の粘膜下層にインジゴカルミン加ヒアルロン酸を局注したのちに,胸腔鏡下に食道外膜・筋層を切開剝離して腫瘍を核出した.病理検査では腫瘍径16×14mmの超低リスクGISTであった.術後10病日に軽快退院しており,術後1年経過しているが無再発経過中である.低リスク食道GISTに対しては胸腔鏡下核出術は有用な方法であると考えられ,術式決定のためにも術前EUS-FNABは可能な限り行うべきである.

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◆要旨:患者は39歳, 女性.7年前に早期胃癌に対して幽門側胃切除・Roux-en-Y再建術を施行され術後外来経過観察されていた.食後の腹痛と自然軽快を繰り返していたため腹部造影CTを施行したところ,腸間膜根部にwhirl signが認められたが明らかな通過・血流障害を疑う所見は指摘できなかった.3D-CT画像では上腸間膜静脈の完全閉塞と側副血行路の発達を認め,空腸空腸間隙へ小腸が陥入した術後内ヘルニアと診断し腹腔鏡下にヘルニア修復を施行した.術後経過良好で7日目に退院となった.術前血管再構築画像は症状の乏しい症例でも正確なヘルニア状態を診断し安全な腹腔鏡下修復術を行ううえで有用であると考えられた.

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◆要旨:患者は39歳,女性.左鼠径部の疼痛を主訴に当院を受診した.27歳時に左鼠径ヘルニアの診断でBard Kugel Patchを用いた鼠径ヘルニア修復術の既往があった.鼠径ヘルニア術後慢性疼痛と診断し,腹腔鏡下異物除去およびヘルニア修復術を施行した.手術所見は,左腹壁より腹腔内に突出したメッシュを認め,メッシュは腹膜前腔で十分に広がらず屈曲していた.症状の原因と考え,メッシュを除去する方針とした.メッシュは周囲組織に強固に癒着しており,メッシュすべての摘除は困難と考え,症状の原因と考えられた突出部分のみの摘除を行った.補強が不十分な箇所にメッシュを留置し,手術を終了した.術後,左鼠径部の違和感と疼痛は軽快した.

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◆要旨:患者は48歳,男性.3か月前から腹部膨満,嘔吐を繰り返していた.腹部膨満と嘔吐を主訴に外来受診した.来院時心窩部に圧痛を認め,腹部造影CT検査にて空腸起始部の腫瘍性病変および胃から十二指腸の著明な拡張を認めた.内視鏡下生検にて腺癌と診断し,減圧後に手術を行った.手術所見では,空腸起始部に腫瘍を認め,腹腔鏡下に十二指腸を下大静脈前面まで十分に剝離,脱転し,小開腹下に十二指腸空腸部分切除,リンパ節郭清,十二指腸空腸吻合を行った.術後経過は良好で,術後12日目に退院した.病理検査では中分化腺癌(UICC Stage ⅡA)の診断であった.空腸起始部小腸癌の切除手術に腹腔鏡補助下手術の選択が有用であった.

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◆要旨:ストーマ脱出とはストーマの腸管が内腔に重積して腹腔外に脱出する病態であり,傍ストーマヘルニアに合併しやすい.今回筆者らは双孔式回腸ストーマ脱出と傍ストーマヘルニアを合併した症例に対し腹腔鏡下に修復術を行った.皮切前にストーマ脱出を用手還納した後,腹腔内を腹腔鏡下に観察すると肛門側腸管の重積は解除されていなかった.重積を解除すると,挙上腸管周囲に全周性のヘルニア門を認め,傍ストーマヘルニアと診断した.まずKeyhole法を用いて傍ストーマヘルニア修復術用メッシュを腹壁に固定した.さらに口側,肛門側双方の腸管を腹壁にそれぞれ4針で固定し,ストーマ脱出の予防を行った.双孔式回腸ストーマ脱出と傍ストーマヘルニアを合併した症例に対し,腹腔鏡下手術は病態を簡便に把握でき有用と考えられる.

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◆要旨:脾捻転にて診断された遊走脾症例に対し,腹腔鏡補助下にポリグリコール酸(PGA)フェルトを細長いテープ状に加工し,脾下極の切痕部に巻きつけて左側腹壁にタッカーにて固定する新しい脾固定術を施行した.PGAは体内で吸収される人工素材で,生体材料由来の感染症のリスクがなく,強固な癒着を引き起こす性質を有し,若年発症の多い本疾患に適した素材であると考えられた.今回行った術式は現在広く行われている腹膜外パウチ法に比べて容易で確実な脾臓の固定が得られる有用な術式であり,今後遊走脾に対する腹腔鏡下手術に際しては考慮すべき術式の1つであると考えられた.

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◆要旨:当科で施行している食道癌に対する胸腔鏡・腹腔鏡補助下食道亜全摘術時の腸瘻造設術は,手技を簡便化し,若手外科医師でも可能な手技としての定型化をコンセプトとしている.心窩部の小開腹創から腸瘻チューブの留置を行い,腹壁への固定を腹腔鏡下に行っている.腹壁固定の方法として,従来,小開腹創から直視できる範囲での限定的な固定や,腹腔鏡下での一定の技術を要する体腔内縫合結紮による固定が行われてきたが,いずれも様々な制限がかかる.今回,小開腹創操作時の前処置と工夫を行い壁外からの器具を利用することで,高い技術を要さず,造設部位の制限がなく,多様な術式で応用可能と思われる手技を紹介する.

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◆要旨:直腸切断術において傍ストーマヘルニア,ストーマ脱出,イレウス予防目的に腹膜外経路のストーマ造設が行われてきたが,腹腔鏡下直腸切断術においては手技的な困難性から腹腔内経路が選択されることが多い.今回筆者らは腹腔鏡下直腸切断術において,15mmトロッカーを使用して腹膜外経路を作製しストーマを造設する方法を5例に施行した.本術式は手技が簡便であり,腹腔鏡下に腹膜外経路で人工肛門を造設する手技として有用な方法と思われる.

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日本内視鏡外科学会への入会について

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編集後記 内藤 剛
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 2016年度より編集委員を仰せつかりました,東北大学の内藤 剛と申します.私が外科医として今日まで学んできた道のりは,まさに内視鏡手術が誕生し普及してきた時代そのものだと思います.外科医として初期研修をスタートし,開腹手術が当たり前だった時代に腹腔鏡手術を初めて見た時の衝撃は今でも忘れることができません.まさにハンマーで頭を殴られた様な衝撃でした.大げさに言えば黒船を初めて見た幕末の人たちのそれと同じと言ってもいいでしょう(黒船は見ていないので分かりませんが……).それと同時に,何と外科医にストレスの多い手術だろうと思ったのも事実です.ましてや当時は機材も各メーカーとも開発の途上で十分とは言えなかった時代でした.そんな中1995年にアメリカに渡って初めて見たのが膵頭十二指腸切除術の腹腔鏡下手術でした.当時の私にしてみれば開腹でもしたことがない手術です.それを腹腔鏡でするなんて,クレージーだとしか思いませんでした.カメラ持ちをしているとさすがに手が痺れてきて最後には手の震えが止まらなくなったのを覚えています.さらには副甲状腺の内視鏡手術.皮下に送気して内視鏡をいれて手術をする?意味がわかりませんでした.さらには病的肥満症に対する胃バイパス術です.日本では絶対に必要のない手術だと思っていました.ところがそれから20年余りがたち,それらの手術は今日では日常的に内視鏡手術で行われるようになってきました.この内視鏡外科学会雑誌にもたくさんの新しい手技や工夫,さらにはそれらの成績が報告されています.日本人の繊細で緻密な技術は内視鏡手術に非常にマッチしているのだろうと思います.さらにはこの手術を黎明期に安全に普及させて来られた多くの先達の努力のおかげだと思います.

 もうすぐアメリカ内視鏡外科学会(SAGES)がヒューストンで開催されますが,日本からの参加者は年々増加していると聞いています.今までは,新しい手術は海外から教えてもらい日本で工夫して普及させて行った時代でしたが,これからは我々日本の外科医から新しい手技やエビデンスを世界に向けて発信していく時代になっていくでしょう.これからの10年で我が国の内視鏡外科がどのように発展してくのか非常に楽しみです.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
22巻3号 (2017年5月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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