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2016年度より編集委員を仰せつかりました,東北大学の内藤 剛と申します.私が外科医として今日まで学んできた道のりは,まさに内視鏡手術が誕生し普及してきた時代そのものだと思います.外科医として初期研修をスタートし,開腹手術が当たり前だった時代に腹腔鏡手術を初めて見た時の衝撃は今でも忘れることができません.まさにハンマーで頭を殴られた様な衝撃でした.大げさに言えば黒船を初めて見た幕末の人たちのそれと同じと言ってもいいでしょう(黒船は見ていないので分かりませんが……).それと同時に,何と外科医にストレスの多い手術だろうと思ったのも事実です.ましてや当時は機材も各メーカーとも開発の途上で十分とは言えなかった時代でした.そんな中1995年にアメリカに渡って初めて見たのが膵頭十二指腸切除術の腹腔鏡下手術でした.当時の私にしてみれば開腹でもしたことがない手術です.それを腹腔鏡でするなんて,クレージーだとしか思いませんでした.カメラ持ちをしているとさすがに手が痺れてきて最後には手の震えが止まらなくなったのを覚えています.さらには副甲状腺の内視鏡手術.皮下に送気して内視鏡をいれて手術をする?意味がわかりませんでした.さらには病的肥満症に対する胃バイパス術です.日本では絶対に必要のない手術だと思っていました.ところがそれから20年余りがたち,それらの手術は今日では日常的に内視鏡手術で行われるようになってきました.この内視鏡外科学会雑誌にもたくさんの新しい手技や工夫,さらにはそれらの成績が報告されています.日本人の繊細で緻密な技術は内視鏡手術に非常にマッチしているのだろうと思います.さらにはこの手術を黎明期に安全に普及させて来られた多くの先達の努力のおかげだと思います.
もうすぐアメリカ内視鏡外科学会(SAGES)がヒューストンで開催されますが,日本からの参加者は年々増加していると聞いています.今までは,新しい手術は海外から教えてもらい日本で工夫して普及させて行った時代でしたが,これからは我々日本の外科医から新しい手技やエビデンスを世界に向けて発信していく時代になっていくでしょう.これからの10年で我が国の内視鏡外科がどのように発展してくのか非常に楽しみです.
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