日本糖尿病教育・看護学会誌 3巻1号 (1999年4月発行)

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【原著】

糖尿病患者におけるセルフケア行動としての健康法・民間療法の利用―利用状況・利用目的・治療との併立森　淑江 , 伊藤　まゆみ , 小田　和美 3巻1号 , 1999年4月 , pp.5-13

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　地域で生活するインスリン依存型糖尿病（NIDDM）患者82名を対象に，セルフケア行動としての健康法・民間療法の利用について，質問紙調査を実施し，次のような結論を得た．（1）対象者の79.3％が健康法・民間療法を利用していた．利用の目的は，「健康増進」，「糖尿病の改善」，「他の病気の改善」，「合併症の改善」の順に多かった．（2）健康法・民間療法の利用者の98.5％は医療者から指導された治療法と併立させていた．（3）健康法・民間療法を行うきっかけは，「他の人からすすめられた」が最も多かった．（4）健康法・民間療法を他の人にすすめた理由は，「効果があった」または「効果があるはず」であった．（5）患者は，運動療法を自分で判断して行うセルフケアの1つと認識する傾向があった．（6）健康法・民間療法の利用と年齢，既往歴，糖尿病家族歴，運動療法の実施とが関連していた．（7）お守り・お札などを除き，健康法・民間療法の利用者は未利用者よりもHbA1c値が高かった．患者への指導の際には指導された治療法と健康法・民間療法との併立のあり方について検討することが重要である．

【調査報告】

糖尿病教室におけるグループディスカッション機能の検討―セルフ・ヘルプ・グループ類似機能川上　由香 , 田中　寿江 , 堀井　亜希子 , 佐藤　美代子 , 末沢　広子 , 河口　てる子 3巻1号 , 1999年4月 , pp.14-21

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Ⅰ．はじめに

1．糖尿病患者教育の現状

　糖尿病は慢性疾患のなかでもその治療が食事療法・運動療法を中心とする患者の自己管理に多くを依存しているという点で特異な疾患である（安酸・川田, 1998）．糖尿病患者は発症を契機にこの食事療法・運動療法を取り入れ，ライフスタイルを変更していかなければならず，それを継続していく必要がある．しかし，いったん食事療法を学んで実行するようになった患者でも，食事療法実行度は時間の経過とともに低下することが明らかにされている（河口, 1994）．

　食事療法の継続を困難にしている要因の1つとして，食事内容の質には明らかな制限がないものの，量的には厳しい制限があり，人間の基本的欲求である食欲を終生コントロールしなければいけないことが挙げられる．近年，食料が豊富になったことや，過剰な広告の誘惑がさらに食欲のコントロールを困難にしていると思われる．また，食事をともにすること自体がコミュニケーションの手段である現代においては，心理的負担は以前にも増して大きいと考えられる．このような特徴をもつ糖尿病患者教育の鍵は，いかに望ましい行動変容を促すかであろう．

病棟における糖尿病患者の看護の実態調査飯岡　由紀子 , 野並　葉子 , 山川　真理子 , 豊田　邦江 , 伊波　早苗 3巻1号 , 1999年4月 , pp.22-35

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　本研究では，全国の病棟における糖尿病患者に対する看護の実態調査を行い，看護状況を明らかにすることと，看護としての重要性の程度を調査することを通して，糖尿病患者の看護の発展の方向性を明らかにすることを目的とした．全国695施設に対して，われわれが導き出した糖尿病患者の看護18カテゴリー，158項目の実施および重要性について調査を行った．その結果，158項目の平均実施比率は59.6％であり，平均重要性比率は66.2％であった．「個人に焦点を当てた看護」，「インスリン注射」，「低血糖」，「Sick Day対策」は，糖尿病患者の看護として，看護婦独自の領域と考えられた．「食事療法」，「運動療法」では，看護婦が実施している項目と他職種との関連がある項目があり，他の専門職との連携の必要性が示唆された．「ケア体制」，「教授方法のトレーニング」では，実施比率と重要性比率の差が著しく，今後改善の必要性が示唆されるカテゴリーと考えられた．

第3回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告　●会長講演

糖尿病教育方法の探求―実践と理論の相互交流からアプローチの向上を目指して河口　てる子 3巻1号 , 1999年4月 , pp.36-40

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【20年前の慢性疾患教育】

　今から20年ほど前，糖尿病患者をはじめとして多くの慢性疾患は増加しつつあり，その当時から患者は，疾患のコントロールのために日常生活の自己管理が必要とされていた．しかし，多くの病院では，「食べるものを減らせ」とか「塩気を減らせ」などの簡単な指示を伝えるだけであった．疾患コントロールの自己管理のために，患者に専門の教育を用意している病院，診療所は皆無といってよいほどであった．患者は，ほとんど放置状態のなかで，本を買って自分で勉強する者，自己流の養生法をやる者，また多くの何もしない者などがいたが，それらの患者は疾患コントロールの悪さから合併症を引き起こしていた．

第3回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告　●基調講演

面接による人間理解（要旨）河合　隼雄 3巻1号 , 1999年4月 , pp.41-43

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【注釈】河合隼雄先生には，「面接による人間理解」というテーマで，人間理解という非常に深遠な問題を掘り下げて具体的な事例を盛り込みながら，独特の関西弁でわかりやすくおもしろく講演していただいた．講演をお聴きし，表面的なおもしろさと対照的に，先生が人間を理解することに命をかけておられる姿に圧倒され，また深くしみこむような感動を覚えた．そのため編集委員会としては，例年のように基調講演の内容を学会誌に掲載し，学会に参加しなかった会員とも基調講演の内容を共有したいと希望した．しかし先生とのお約束で，講演内容をビデオに撮ったりテープに録音することはできなかった．また，講演は生きた言葉でそのときの参加者に向けて話すことに意味があるので，そのまま活字にはしないでほしいということと，事例は活字にしないでほしいという条件を出された．そのため，編集委員会編として講演内容をまとめた要旨を河合先生にみていただき，承諾を得られた内容を今回掲載することになった．編集委員会

第3回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告　●特別講演

百歳まで絵を描きたい，だから食べないんだ富永　一朗 3巻1号 , 1999年4月 , pp.44-48

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1．糖尿の一朗で有名になった

　平成元年に糖尿病を宣告され，びっくり仰天．その後ずっと，本を書いたりテレビでしゃべっているうちに，糖尿病で有名になった．今はマンガより糖尿のほうで有名である．かみさんが「あんまり病気の講演ばっかりで全国を回ったら，あんたイメージが暗くなるわよ」なんて言うが，いや70歳を過ぎたらボランティア，とにかく一生懸命やったほうがいいと，盛んに回っている．

　私が一番尊敬していた長寿の医学博士で糖尿病の先生が神戸にいた．4～5年前に聞いたら103歳．現役のお医者さんで，長年の糖尿病患者．一生懸命病気とつき合いながら医師として患者を診ていた．本をいただくと立派な写真がついていた．これを切り抜き，糖尿病大明神として合掌し手をたたき，拝んでいる．

第3回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告　●ミニシンポジウム

認定看護師（糖尿病教育分野）をめぐって―認定看護師の現状と可能性小林　貴子 , 金木　恵子 3巻1号 , 1999年4月 , pp.49-50

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　近年，糖尿病患者に対する教育の考え方は主に知識を提供するという「指導モデル」を中心とするものから，患者の生活をもとに，患者の生活の質を高める方向で患者と話し合いながら一緒に考える「学習援助モデル」へと変化してきている．そのため看護実践には，より専門性の高い知識や技術が必要となってくる．このような変化のなかで糖尿病教育分野における認定看護師の必要性が問われ始めてきた．

　日本看護協会では1995（平成7）年より認定看護師の研修を開始し，「救急看護」，「WOC」など，実際に活動を開始している．昨年度の学術集会の特別講演において岡谷恵子先生より，専門看護師・認定看護師について，その専門性の違いや受験資格などを中心にお話をいただいた．1998年6月現在で，認定看護師は118名誕生しているが，専門領域も違うことから，糖尿病教育や看護に携わっている私たちが，実際に認定看護師の実践活動にふれる機会は少ないのが現状であろう．

認定看護師の現状と課題永野　みどり 3巻1号 , 1999年4月 , pp.51-55

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　日本看護協会で認定看護師の教育にかかわる立場から，認定看護師について提示する．

WOC認定看護師として活動して野崎　祥子 3巻1号 , 1999年4月 , pp.56-58

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Ⅰ．WOC認定看護師の役割

　医療の高度化に伴い，看護の分野でも専門的な知識技術が求められるようになり，そのような社会背景のなかで，専門看護師，認定看護師の制度が開始された．認定看護師の役割は，

(1) 熟練した看護技術と専門的な最新の知識を用いて水準の高い看護実践を行うこと

(2) 自分の専門分野において，看護実践を通して他の看護者に対して指導を行うこと

(3) 他の看護者の実践を支援するために看護者に対してコンサルテーションを行うこと

とされている．

病棟における糖尿病の教育・指導の現状と課題から糖尿病教育分野の認定看護師に期待すること箱石　恵子 3巻1号 , 1999年4月 , pp.59-62

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はじめに

　糖尿病の看護において，看護婦が主体的に教育・指導を行うことが質の高いケアを提供するために必要である．糖尿病患者は日常生活を送るうえでの自己管理が重要なため，医学的知識の指導だけでなく，知識を行動に移し，維持していくための指導とサポートが必要である．そのためには患者の生活状況を把握し，治療をどのように実施していくかを患者とともに考えていくことが必要となり，看護婦の役割に期待されるところが大きいと思われる．

　ここでは，現在内科病棟で糖尿病患者の教育・指導を行っている立場から，当院の現状と課題を踏まえ，糖尿病教育分野の認定看護師の誕生のために日常の看護をどのように進めたらよいか，また認定看護師教育に期待する内容について考えてみたい．

看護管理者の立場から―認定看護師の現状と課題をさぐる齋藤　拾子 3巻1号 , 1999年4月 , pp.63-66

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Ⅰ．認定看護師コース設定以前の専門的な看護領域への取り組み

　私は外科に14年間勤めていた．消化器外科，手術病棟の婦長として，はじめのころは主任とともに，入院・退院患者あるいはその家族からストーマケアの具体的方法，トラブルや用品選択の相談，不安や悩みについての相談を受けていた．その相談の回数の多いことや，ケアの複雑さや多様さを思い知らされ，何とかこの事態を看護管理者として，改善せねばと思っていた．

　病棟の看護ケアを全体として見直してみると，ストーマケアのみならず，さまざまな看護状況において，専門的に知識を深めて，ケアの技術を高めていく必要のある領域がほかにもあった．そこで，いくつかの看護ケアグループを結成することにした．管理者主導で看護の質の向上を叫ぶだけでなく，看護婦が興味ひかれる領域に自らの意志で参加する形がよいと考えたからである．日常の業務の流れのなかに埋没することなく，やりがいのある目標に向かってほしいと考えたためであった．

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理事会・総会報告 3巻1号 , 1999年4月 , pp.67-73

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第4回日本糖尿病教育・看護学会学術集会案内 3巻1号 , 1999年4月 , pp.74

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日本糖尿病教育・看護学会評議員名簿 3巻1号 , 1999年4月 , pp.75

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日本糖尿病教育・看護学会入会のご案内 3巻1号 , 1999年4月 , pp.76

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日本糖尿病教育・看護学会入会申込書 3巻1号 , 1999年4月 , pp.77

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糖尿病教育事例記載用紙 3巻1号 , 1999年4月 , pp.78

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日本糖尿病教育・看護学会会則 3巻1号 , 1999年4月 , pp.79-81

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日本糖尿病教育・看護学会誌投稿規定 3巻1号 , 1999年4月 , pp.82-83

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編集委員（Editorial Board） 3巻1号 , 1999年4月 , pp.84

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編集後記 3巻1号 , 1999年4月 , pp.85

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会誌の原稿募集・発行計画 3巻1号 , 1999年4月 , pp.86

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基本情報

日本糖尿病教育・看護学会誌
3巻1号
(1999年4月発行)

電子版ISSN：2432-3713 印刷版ISSN：1342-8497 日本糖尿病教育・看護学会

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