日本糖尿病教育・看護学会誌 22巻1号 (2018年3月)

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 糖尿病合併がん患者は,化学療法時に使用するステロイド剤により血糖コントロールが悪化すると,感染や治療効果が半減するなどの問題から,糖尿病診療医と腫瘍治療医が連携して安全に化学療法を実施することの必要性が指摘されている.

 当院においても安全に化学療法を受けられることを目的に,化学療法をうける糖尿病合併がん患者の血糖管理基準を明確に示し,化学療法の指示を出す診療科と内分泌代謝科が連携してインスリン治療を必要とする糖尿病合併がん患者が安全に外来化学療法へ移行できるケアシステムを検討し導入した結果,安全な化学療法の推進につながることが示唆された.

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 本研究は,ローカス・オブ・コントロール(LOC)尺度の得点に基づいて,入院中患者を内的統制群,外的統制群,中間群の3群に分け,群毎の指導手順票を作成して患者の支援を行い,その後の得点変化と面接で語った内容から支援効果を検討した報告である.入院直後の得点より退院前の得点が,上昇した患者は14名中10名で,低下した患者は4名となった.入院直後と退院前が共に内的統制群であった患者は3名,中間群は3名,外的統制群は4名となり,入院直後外的統制群で退院前中間群は3名,入院直後外的統制群で退院前内的統制群は1名となった.内的統制群は,指導手順票通りに検査結果や症状の改善などの納得する情報提供をするとに効果があった.外的統制群や中間群は,治療効果を実感するが,自分のコントロール下にないという外的統制の傾向から《実行できるか不安》を感じた.このため《周囲の協力》を求め,実行に向け協力体制の拡 充を必要とした.また,すべての群に《治療効果の実感》があり,検査結果の変動や症状の改善に気付かせる支援を,指導手順票に設定する必要が示唆された.

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 本研究は,糖尿病性腎症患者の内シャント造設が透析生活に与える影響を明らかにすることを目的に,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた質的因子探索研究である.参加者は,医療機関で血液透析を実施し,導入して5年以内の2型糖尿病性腎症患者11名であった.分析テーマは,「内シャント造設が透析に向けて建設的に働き,腎不全を自分のこととして受け入れ療養していくプロセス」と「内シャント造設を客体化し,腎不全を実感できないことにより義務的に透析を行うプロセス」の2つが導き出された.2つのプロセスの始点は,内シャント造設告知時の身体想起の違いによるものであった.内シャント造設が,透析している現在の身体との付き合い方に影響を及ぼしていたことが明らかとなった.内シャント造設は,透析準備期だけでなく,透析の告知以前や現在にも影響を与えており,透析準備期の患者の関わり方に活用できることが示唆された.

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 本研究は2型糖尿病患者における失感情症・失体感症,睡眠,抑うつの実態と各々との関連を明らかにすることを目的とした関連探索研究である.I県内の2病院に外来通院する2型糖尿病患者47名に対し,失感情症傾向を評価するTAS-20(20-item Toronto Alexithymia Scale),失体感症傾向を評価するSTSS(Shitsu-Taikan-Shou-Scale:体感への気づきチェックリスト),睡眠の質を評価するPSQI(Pittsburgh Sleep Quality Index),抑うつ傾向を評価するPHQ-9(Patient Health Questionnaire:こころとからだの質問票)を用いて調査を行った.分析にはSPSS Statistics 22.0を用い,記述統計および2群間の比較,ANOVAを行った.結果,2型糖尿病患者の59.6%が睡眠の質が悪いと評価しており,睡眠時間が6時間未満の者と合併症を持つ者に失感情症,抑うつ症状が高い傾向(いずれもp<0.05)がみられた.また,HbA1cと4質問紙との関連はなかった.以上より2型糖尿病患者に対して睡眠の質の向上を支援するとともに,短時間睡眠の改善および合併症を持つ患者に対し,失感情症,抑うつ傾向改善に向けた心理面での支援の必要性が示唆された.

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 本研究の目的は,成人期2型糖尿病患者に対する家族支援のあり方を検討することである.Berelson. Bの内容分析を参考に,家族支援,看護師から家族への支援,看護師から患者への支援を類似性に基づき,分類・コード化した.その結果,家族支援で6個,看護師から患者への支援で2個,看護師から家族への支援で5個のカテゴリがそれぞれ抽出された.これらにより,家族から患者の支援では,患者の療養行動におけるストレスや不安の軽減など心理面への働きかけ,患者の治療継続を促進する声掛けや患者と協働する必要性が示唆された.看護師から患者への支援では患者の社会的役割や家族役割機能を理解して,患者とその家族の関係を築き,家族支援のあり方を支持する必要性が示唆された.看護師から家族への支援では,支援環境の提供や家族への知識の獲得支援など,家族の努力を共有して自己効力感が向上する支援を行い,家族が抱く思いや不安へ配慮する心理的支援の重要性が示唆された.

第22回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告 会長講演

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はじめに

 糖尿病への対策強化が急がれる中で,世界中でランダム化比較試験やその成果を統合したシステマティックレビューが行われている.実践の場で研究成果を活用することは,複雑で多様な事例の理解を助け,臨床判断に役に立つ.量的な研究は科学的確からしさがエビデンスレベルで段階的に示されており,質的な研究は糖尿病をもつ人の語りから効果的なケアを見出し,看護の視座を拡げることができる.このような研究成果の探索は実践経験を経て形成された看護者の経験知をさらに深めるものと考える.

第22回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告 教育講演1

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はじめに

 世界的規模で糖尿病患者が増加しているが,わが国では急速な人口の高齢化と生活習慣の欧米化によってその傾向が著しい.糖尿病はさまざまな合併症を引き起こし,生命予後や生活の質(QOL: quality of life)に大きな影響を与える深刻な疾患である.糖尿病の代表的な合併症は最小血管症と大血管症であるが,近年悪性腫瘍と認知症が新たな合併症として指摘され大きな注目を集めるようになった.

 本講演では,福岡県久山町において長年にわたり継続中の生活習慣病の追跡研究(久山町研究)の成績より,わが国の地域住民における糖尿病有病率とその合併症の時代的推移について述べ,日本人における問題点を検証する.

第22回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告 教育講演2

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1.はじめに

 現象学は,その創始者フッサールの言葉にあるように,「事象そのものへ」をテーゼとして,私たちの経験がいかに成り立っているのかを記述的に探究する哲学であり,方法である.成り立ちというのは,ある経験の意味がいかなる構造で,あるいはいかに生み出されている(発生する)のかを意味している.例えば糖尿病の患者さんの,それまで高値であったHbA1cが,半年ぐらいで目標値内にまで下がってくると,私たちは,その患者さんの健康に対する態度や生活の仕方が変化してきているという意味を見て取る.あるいは,足に小さな傷を見つけると,足病変となったたくさんの患者さんのことが想起され,その経験の蓄積がこの傷のある足に注意を向かわせる.これらは,検査値や足の傷がそれ自体として見えているのではなく,ある意味として私たちに現われている,あるいは,その意味への応答として現われていることを示している.現象学が関心を向けるのは,このような現われ(経験)の意味であり,その成り立ちである.もう少し詳しく述べれば,その意味がいかなる構造を持って現われているのか,いかなる文脈において(時間経験として)発生しているのかを記述という方法によって開示することである.

 ところが,こうした現われは,私たちにとっていつも既に経験されており,また習慣化されているため,自明(あたりまえ)となっている.この自明な経験は,はっきり自覚せずに遂行されているために,言語化も難しい.私たちの多くの生活は,このはっきり自覚されていない前意識的な次元に支えられている.看護師や患者の営みにおいても,経験しているけれども,それとしてはっきり自覚されていないことが多い.そのため,現象学という哲学,そして現象学を手がかりとした現象学的研究が意味を持つ.

 その自明ではっきり自覚できない次元の経験にアプローチするには,現象学のテーゼである「事象そのものへ」立ち帰ることが要請される.言い換えると,日常的な経験は,私たちの先入見や既存の知識という枠組みを通して見られており,この枠組みから距離を取ること,現象学用語で言えば「棚上げする」あるいは「捉え直す」ことによって,その成り立ちが露わになるとされている.

第22回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告 教育講演3

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はじめに

 学術集会のメインテーマは“研究成果から拡げる糖尿病療養支援”であった.学会が発足して20年が経過し,その間糖尿病療養に関する関心は高まり,糖尿病認定看護師や日本糖尿病療養指導士などにみられる資格付与の制度も加わった.日本糖尿病教育・看護学会における研究発表および論文もその成果を蓄積してきた.

 研究成果を問われるとき,何をもって成果であると説明できるだろうか? 発表した論文,結果を実践に活用して狙い通りの成果をだす,新たなケアや療養の仕組みを創生するなどいろいろあると考えられる.一つ一つの具体を挙げることは困難であるため,教育講演では,これまでの学会の歩みが一つの成果であると考えられないかという試みで展開した.

 講演内容は,糖尿病看護が目指したもの,糖尿病看護の研究視点の多様性と研究方法,研究成果を育て新たな研究課題を発展させていく仕組み,糖尿病看護で今後拡げていきたいこと,研究成果と日本糖尿病教育・看護学会の役割という視点で構成した(図1).

第22回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告 教育講演4

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1.糖尿病を持つ女性のウィメンズヘルスとは

 ウィメンズヘルスとは,女性の生涯を通じた健康のことを言い,マタニティ期のケアも含む.女性の健康とは「女性の情緒的,社会的,文化的,精神的,身体定期安寧などを含み,女性の一生を自然科学における生物学と同様に人文科学における社会的,政策的,経済的方面からみることができるもの」と,国連女性会議で謳われている.

 具体的に,女性には生涯を通じてどのような健康上の課題があるだろうか.まず,月経や性ホルモンに関わることでは,思春期からは月経随伴症状や月経前症候群,月経不順などの月経障害や子宮内膜症等の疾患があり,更年期には更年期障害が生ずる.腫瘍に関わることでは,成熟期から乳がん,子宮頸がん,卵巣がん,子宮筋腫,子宮体がん等がある.性や妊娠に関わることでは,性行為が開始されるころから性感染症や望まない妊娠のリスクがあり,人工妊娠中絶や,反対に不妊症,不育症といった問題がある.妊娠期には妊娠合併症や異常妊娠,出産後は尿失禁,性器脱が生ずる恐れがある.他にも思春期からの貧血や,肥満・痩せ,喫煙・飲酒といった生活習慣に関わる課題や,摂食障害や産後鬱,空の巣症候群等メンタルに関わる課題,更年期・老年期から顕著となる生活習慣病や骨粗鬆症等がある.

第22回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告 教育講演5

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 平成27年に「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(以下,指針と略す)」が制定され,人を対象とする看護研究の多くがこの指針の適用を受けることとなり,さらに「個人情報保護に関する法律」等の改正を踏まえ指針が新たに改正され,今年5月に施行された.

 各機関では,研究倫理支援体制の整備に日々取り組んでいるが,指針対応は簡単ではなく,研究者や研究活動を支援する人々には,少なからず負担や混乱が生じている.また,指針施行後2年経過したとはいえ,数ある規定を短期間で,理解し活用するのは容易ではなく,研究倫理に抵触するような事案も起こっている.

 筆者は,研究倫理コンサルタントとして活動をしているが,必要とされている倫理審査委員会に申請を行わず,また,適切なインフォームド・コンセントの手続きを経ずに,研究を開始してしまった研究者から相談を受けることが度々ある.看護研究者は,これまでも研究を倫理的に実施する努力をしてきており,個々の研究者は,誠実に真摯に研究に取り組んでいるが,個人の倫理観だけでは前述のような問題は解決できないこともあり,ベテランの研究者であっても,意図せず無自覚に,倫理的に問題のある研究を行ってしまうこともある.

 この問題に対処するためには,指針の規定を遵守するだけではなく,研究倫理の理念や原則を理解した上で,具体的に何に対して,どのように配慮すべきか,どのような対策があるのかを慎重に考え,研究を実施することが重要である.

 本稿は,指針が掲げる,人間の尊厳及び人権が守られ,研究が適正に実施されるための「基本方針」に沿って,それらの意味を考えながら,研究倫理の基本原則について述べ,研究計画・実施にあたって,具体的な対策も含めて倫理的に大事なポイントを示すものである.

基本情報

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日本糖尿病教育・看護学会誌
22巻1号 (2018年3月)
電子版ISSN:2432-3713 印刷版ISSN:1342-8497 日本糖尿病教育・看護学会

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