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はじめに
糖尿病性網膜症,腎症,神経障害,壊疽の終局の姿は,失明や透析,下肢の切断といった身体機能の荒廃,すなわち身体障害である.これらは患者の日常生活にきわめて大きな支障をきたす.なかでも下肢の切断は失明とならんで患者のQOLを著しく低下させる.
欧米では以前から,糖尿病患者の下肢の壊疽や切断が多くみられ,切断によって生じる患者の苦痛,心理的負担,社会的損失,切断に要する医療費(西澤・杉田・羽倉, 1999)など大きな社会問題となっていた.
一方わが国では,昔は糖尿病性壊疽は1例でも症例報告されるほど,非常に稀な合併症とされていた.図 1にわが国における糖尿病性壊疽の年度別の報告数を示した.佐藤ら(1975)の報告によると,1908年の熊本病院における症例を第1例とし,1960年までの53年間にわずか10例,1961年から65年までの5年間に14例ときわめて少ないものであった.しかしその後,徐々に増加し73年までに219例の報告がされている.それ以後,全国レベルでの疫学調査は行われていないが,各施設や一定地域での報告は多くなされており,特に最近20年間では著しく増加している.それに伴い,足に関する教育の重要性も認識され,徐々に普及してきてはいるが,糖尿病診療に携わる医療従事者においてもまだその認識が低いのが現状である.
正しい知識をもち細心の注意を払うことで,糖尿病患者の足は,壊疽や切断を未然に防ぐことができるのである.それだけに,日ごろの足の手入れは,患者教育の重要なテーマの1つであり,足に対する関心を高め自己管理ができるように患者やその家族に指導することは私たち看護婦の大きな役割である.
そこで本稿では,糖尿病患者に起こりやすい足病変と,私たちが日ごろ実践している“足外来”でのケアや足に関する教育の実際を紹介し,さらに糖尿病患者に行った,足に関するアンケートの結果を述べ,足外来の役割や足のケアを通じて行う患者教育などについて考えてみたい.
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