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平成27年に「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(以下,指針と略す)」が制定され,人を対象とする看護研究の多くがこの指針の適用を受けることとなり,さらに「個人情報保護に関する法律」等の改正を踏まえ指針が新たに改正され,今年5月に施行された.
各機関では,研究倫理支援体制の整備に日々取り組んでいるが,指針対応は簡単ではなく,研究者や研究活動を支援する人々には,少なからず負担や混乱が生じている.また,指針施行後2年経過したとはいえ,数ある規定を短期間で,理解し活用するのは容易ではなく,研究倫理に抵触するような事案も起こっている.
筆者は,研究倫理コンサルタントとして活動をしているが,必要とされている倫理審査委員会に申請を行わず,また,適切なインフォームド・コンセントの手続きを経ずに,研究を開始してしまった研究者から相談を受けることが度々ある.看護研究者は,これまでも研究を倫理的に実施する努力をしてきており,個々の研究者は,誠実に真摯に研究に取り組んでいるが,個人の倫理観だけでは前述のような問題は解決できないこともあり,ベテランの研究者であっても,意図せず無自覚に,倫理的に問題のある研究を行ってしまうこともある.
この問題に対処するためには,指針の規定を遵守するだけではなく,研究倫理の理念や原則を理解した上で,具体的に何に対して,どのように配慮すべきか,どのような対策があるのかを慎重に考え,研究を実施することが重要である.
本稿は,指針が掲げる,人間の尊厳及び人権が守られ,研究が適正に実施されるための「基本方針」に沿って,それらの意味を考えながら,研究倫理の基本原則について述べ,研究計画・実施にあたって,具体的な対策も含めて倫理的に大事なポイントを示すものである.
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