胃と腸 39巻8号 (2004年7月)

今月の主題 家族性大腸腺腫症―最近の話題

序説

  • 文献概要を表示

 家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis ; FAP)は,大腸全域に腺腫が多発し,放置すればほぼ全例に大腸癌が発生する常染色体優性の遺伝性疾患である.同時に,本症は骨・軟部腫瘍,胃・十二指腸・小腸病変,網膜色素上皮過形成などの大腸外腫瘍状病変を高率に合併する全身性疾患でもある1).1980年代後半に,本症の原因遺伝子が第5染色体の長腕(5q21-22)に存在することが判明し,1991年に adenomatous polyposis coli(APC)遺伝子として単離された.その後,欧米を中心に遺伝子診断の臨床的意義や APC 蛋白の機能解明を目指して,FAP の臨床徴候と APC遺伝子異常の関係についての知見が集積され,本症の最近のトピックスとなっている.

 従来,FAP の診断基準として大腸腺腫数が100個以上であることが必須とされてきた.しかし,近年,APC遺伝子の変異を認めながら,大腸腺腫数が100個未満にとどまる家系の存在が報告され,attenuated FAP(AFAP)と呼ばれている(Spirio L,1993;Lynch HT,1995).AFAP の家系では,腺腫数が少なく大腸癌が高齢で発生するという臨床的特徴に加えて,APC遺伝子の変異部位がN末端あるいはC末端に偏在することが報告されている.また,網膜色素上皮過形成(Wallis YL,1999),デスモイド腫瘍(Caspari R,1995),十二指腸病変2)などの大腸外腫瘍状病変についても,APC遺伝子の変異部位との関連性が指摘されており,大腸病変や大腸外病変に対する管理・治療方針の決定に遺伝子検査が有用な情報をもたらすことが期待されている.

  • 文献概要を表示

要旨 自験家族性大腸腺腫症(FAP)52例の臨床徴候とAPC遺伝子変異の関係を検討した.臨床徴候をエクソン10までの5´側変異群,エクソン11より近位側の3´側変異群,変異陰性群で比較すると,密生型大腸腺腫症,十二指腸非乳頭部腺腫,骨腫,網膜色素上皮過形成の陽性率が3´側変異群で最も高かった.一方,3群間で十二指腸腺腫症と残存直腸の経過に明らかな違いを指摘できなかったが,大腸癌以外の悪性腫瘍として3´側変異群では十二指腸・小腸癌,および肝細胞芽腫が発生したのに対し,変異陰性群では膵癌,胃癌,直腸カルチノイドが発生していた.同一家系内の複数例では,デスモイド腫瘍,胃底腺ポリポーシス,十二指腸乳頭部腺腫の発生に乖離がみられた.以上より,FAPにおける網膜色素上皮過形成,骨腫,十二指腸非乳頭腺部腺腫,および大腸癌以外の悪性腫瘍はAPC遺伝子変異に影響を受ける可能性が示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨 家族性大腸腺腫症の責任遺伝子としてAPC遺伝子が単離され,生殖細胞系列遺伝子変異が解析されてきた.その結果,遺伝子変異の部位と病態との相関が明らかとなってきた.大腸腺腫密度,上部消化管病変,デスモイド腫瘍,網膜色素上皮肥大症等との関係が明らかにされた.attenuated adenomatous polyposis coli(AAPC)例はAPC遺伝子変異の検出率が低いことが指摘されてきた.そのAAPC発症原因としてMYH遺伝子の変異が関わっていることが明らかにされた.MYH 遺伝子は酸化 DNA 障害の除去修復機構に関わるMYHをコードしている.この場合,常染色体性劣性遺伝形式で形質が伝達される.家族性大腸腺腫症や多発性大腸腺腫例のサーベイランスプログラムの再考が必要となった.

  • 文献概要を表示

要旨 胃底腺ポリープは日常遭遇する機会の多い胃ポリープであり,家族性大腸腺腫症ではしばしば胃穹窿部から体部大彎に密集して多発することが知られている.組織学的には異型のない胃底腺の増生と嚢胞状の拡張腺管を特徴とする病変で,悪性化することのない過誤腫性病変として知られてきた.近年,分子病理学的解析の進歩に伴って胃底腺ポリープが APCやβ-cateninの遺伝子変異を原因とした病変であること,また,家族性大腸腺腫症に伴う例ではしばしばその腺窩上皮に異型を伴うことが報告されてきた.本稿では胃底腺ポリープにおける上皮異型と腫瘍化のリスクについて,近年明らかにされてきた遺伝子変異に関する知見を交えて概説する.

  • 文献概要を表示

要旨 家族性大腸腺腫症の十二指腸乳頭部癌の相対危険度は高く,予防的大腸全摘後の予後因子として十二指腸病変の取り扱いが課題となっている.上部消化管内視鏡によるサーベイランスは重要で,特に乳頭部周囲の観察には注意を要し,Spigelman's stage IVとなる高度の十二指腸腺腫症や増大傾向のある乳頭部腺腫は癌化の危険度が高いことから予防的切除の対象となる.また,内視鏡的粘膜切除やアルゴンプラスマ凝固療法は有用と思われ,その適応や施行の拡大が望まれる.内視鏡によるサーベイランスにも限度があり,分子生物学的アプローチでは遺伝子解析などによる癌化しやすい亜群分類の研究が期待されている.手術療法では縮小手術として幽門温存,または膵頭温存十二指腸切除が選択される機会が増えると思われる.化学予防においては選択的 COX-2阻害剤の有効性が認められ,今後の新たな展開が予想される.

  • 文献概要を表示

 FAPについての研究の進歩とともに,手術時期および手術術式についても,その考え方に変化がみられる.肛門機能温存大腸全摘術については,鏡視下手術その他の導入により,出血量が少なく,創が目立たず,一時的ストーマも必要がなくなった.しかし手術が治療の決定的要素である一般の消化管癌とは異なり,FAP では,手術はむしろ治療の始まりを告げる一歩である.FAP 治療の最終的目標は,① 大腸癌をはじめ注意すべき癌を予防ないし早期治療して,親より長生きし,平均寿命を目指す,および ② できるだけ QOL を良く保つ,である.したがって大腸手術時期と術式もその戦略の中の1つの戦術として位置づけられる必要があることを述べた.

  • 文献概要を表示

要旨 sulindac,indomethacin,celecoxibなどの非ステロイド抗炎症剤は家族性大腸腺腫症患者の大腸腺腫を退縮させる効果を有するものの,その効果は完全とは言えない.また,これらの薬剤の大腸癌そのものの予防効果については検討されていない.したがって,現時点でこれらの非ステロイド抗炎症剤は結腸全摘や大腸全摘に替わる治療法ではない.しかし,非ステロイド抗炎症剤などの薬剤の中には,大腸癌予防に有効な薬剤が存在する可能性もあり,更なる検討を要する.また,大腸腺腫退縮の機序の詳細はまだ解明されておらず,その解明はFAPのみならず一般の大腸癌の予防法の確立にも役立つ可能性がある.

  • 文献概要を表示

要旨 症例は60歳の男性.家族性大腸腺腫症(FAP)の診断で約5,000個のポリポーシスと3個の進行癌を認め,1989年に全結腸直腸切除術・回腸肛門吻合が施行された.術後,上部・下部消化管のサーベイランスを行っていたところ,2001年から残存回腸の腺腫性ポリープの増加・増大傾向がみられ,内視鏡切除を行った.内視鏡切除後に出血による貧血を繰り返したため,ポリープの縮小を狙ってsulindac投与を行った.投与3か月後には回腸ポリープは著明に縮小し数も減少した.sulindacを暫減して投与継続し,ポリープはほぼ消失した状態を保ち特に副作用を認めていない.

  • 文献概要を表示

要旨 症例は67歳,女性.検診目的で大腸造影検査を受け,ポリープの多発を指摘され,大腸内視鏡検査にて大腸ポリポーシスと診断された.遺伝子診断にて,APC遺伝子のexon15,codon1992の部位にCのdeletionを認め,この結果,この部位の配列はCCCCCTからCCCCTGとなり,codon2043にstop codonを生じるframe shift mutationを認め,genotypeからはattenuated familial adenomatous polyposis(AFAP)と診断された.右半結腸切除術および直腸S状部切除術を施行した.切除標本には,多発するポリープを確認.また病理診断では,ポリープはいずれも腺腫であり,癌の発生を認めなかった.AFAPと診断された場合には,APC遺伝子の変異の場所により表現型も異なり,予防的全大腸切除が必要とならないケースがあることが示された.

  • 文献概要を表示

要旨 家族性大腸腺腫症(FAP)では大腸以外にも特徴的な病変が出現することがあり,デスモイド腫瘍,胃・十二指腸ポリープや癌,甲状腺乳頭癌,外骨腫,網膜色素上皮肥大(CHRPE)などが知られている.FAPに合併する甲状腺癌はクリブリフォルム・モルーラ型乳頭癌と呼ばれ,その病理組織像は特徴的な所見を呈する.最近われわれは,FAPに対して結腸全摘,回腸直腸吻合術施行後に甲状腺癌および腸間膜デスモイドを認めた1例を経験したので,特に甲状腺癌に注目して症例を報告する.

  • 文献概要を表示

 〔患 者〕 89歳,女性.

 〔主 訴〕 下血.

 〔既往歴〕 20年前に子宮筋腫の手術.

 〔家族歴〕 特記事項なし.

 〔現病歴〕 2002年6月中旬より持続性に下血を認めるため近医を受診し,精査および治療目的にて6月28日に当院へ紹介となった.

 〔来院時検査成績〕 赤血球数326万/μl,Hb11.3g/dl,Ht31.9%と軽度の貧血を認めたが,白血球数および血小板数は正常であった.血液生化学検査には異常値を認めず,CEA,CA19-9も正常値であった.

 〔大腸内視鏡所見〕 直腸下部の前壁に,径が約2cmの緊満感のあるIsp様の隆起性病変を認めた(Fig.1a).表面は正常粘膜で覆われ光沢があり,やや白色調を呈していた(Fig.1b).頂部はわずかに陥凹しびらんを形成しており,びらん周囲の粘膜は発赤し毛細血管の拡張が目立った(Fig.1c).内視鏡像より粘膜下腫瘍を疑い,頂部のびらん面より生検を行ったが,結果は多形核白血球とlymphoid cellの滲出および細血管の増殖で形成された新鮮な肉芽組織であり,確定診断には至らなかった.

 〔注腸 X線所見〕 直腸下部に約2cm の立ち上がりが明瞭な隆起性病変を認め,腸管壁は軽度の弧状変形を示していた(Fig.2).

 〔超音波内視鏡所見(7.5MHz)〕 第2~3層に主座を置く比較的境界が明瞭な低エコー主体の病変を認めた.固有筋層は保たれていた(Fig.3).

学会印象記

  • 文献概要を表示

 2004年5月26日~28日に,京都で開催された第67回日本消化器内視鏡学会総会〔勝健一会長(大阪医科大学第2内科教授)〕に,前日のサテライトシンポジウム「胃と腸」大会から参加した.京都ホテルオークラで開催された第43回「胃と腸」大会は,学会前日にもかかわらず多数の参加者で熱気にあふれていた.近畿地区の担当運営委員の方々の選考症例は,いずれも興味を引かれるもので,提示された6症例すべてが非常に勉強になった.6症例目のcollagenous colitisは,珍しい所見を呈していたが,学会の一般演題でも他施設から同様の病変がポスターで提示されており,強く印象に残った.

 学会初日午前は,一般演題「大腸 pit pattern 診断」とVTRワークショップ「切開・剥離法によるEMRの手技と工夫」に参加した.拡大電子スコープをルーチンに使用している内視鏡医にとって,大腸病変に対するpit pattern診断の有用性については,これまでの学会の討論を振り返っても,揺ぎないものとなっている.しかし,まだ解決していかなくてはならない問題も残っていて,今回pit pattern診断の演題にほぼ共通していたV型pit patternに関する話題もその1つである.これから世界に向けて発信すべく,国内でも混乱していたV型pit patternの亜分類も統一された(厚生労働省工藤班・箱根シンポジウム).今回の一般演題では,その整合性についても検討され,今後さらに突っ込んだ議論が展開されていく予感がした.昭和大学横浜市北部病院消化器センターの工藤進英教授が先駆者として啓蒙してきた,本邦発祥のpit pattern診断であるが,近年欧米からも論文が出てくるようになってきた.日本のcolonoscopistも国内外の学会や研究会の発言・発表で満足していては,早晩欧米にお株を奪われかねない状況に直面する可能性が出てくる.大学に限らず,各施設の仕事は必ず英文誌に投稿し論文として残す必要があると,痛切に感じた.

消化管造影・内視鏡観察のコツ

  • 文献概要を表示

はじめに

 色素内視鏡検査法(色素法)とは,消化管の粘膜表面に色素液を撒布または噴霧し,粘膜の微細な凹凸や色調の変化あるいは機能を内視鏡的に観察する検査法である.

 わが国における消化器内視鏡分野への色素剤の応用は,1965年の奥田らのコンゴーレッド色素による酸分泌機能検査が最初である.その後1966年津田,青木らが内視鏡下に色素剤を撒布する方法を考案し,1970年代以降急速に内視鏡検査の分野で広まってきた.

 手技の簡便なコントラスト法を中心とした胃色素法は,現在では早期胃癌の診断において欠くことのできない検査法となっており,病変の拾い上げや性状診断を目的としてルーチンの内視鏡検査においても必ず行うべき検査法である.

早期胃癌研究会

  • 文献概要を表示

 2004年4月の早期胃癌研究会は4月14日(水)にイイノホールで開催された.司会は松田圭二(帝京大学外科)と田尻久雄(東京慈恵会医科大学内視鏡科)が担当した.mini lectureは「ESDによる内視鏡治療の可能性」と題して矢作直久(東京大学消化器内科)が行った.また,早期胃癌研究会2003年度優秀症例賞の表彰と症例提示が行われた.

 〔第1例〕 42歳,男性.サイトメガロウイルス直腸潰瘍(症例提供:昭和大学附属豊洲病院消化器科 山本栄篤).

 X線の読影は堀田(佐久総合病院胃腸科)と清水(大阪鉄道病院消化器内科)が担当した.堀田は直腸Rb前壁に不整形の潰瘍性病変があり,周囲に隆起を伴っており,そのまわりの粘膜が粗であることから腫瘍性でなく炎症に伴う潰瘍とした.清水は若年の患者であり排便困難を伴うこと,X線で痔核が写っていると判断し,普段からいきむ人であろうと考え,潰瘍が下部直腸にあることと直腸壁の伸展が良好であることからMPS(mucosal prolapse syndrome)を考えたいとした.内視鏡(Fig.1)の読影では堀田は直腸Rbに存在する白苔がのった潰瘍性病変で周囲は浮腫状に隆起してそのまわりに浅いびらんを伴っていることから,炎症による潰瘍を考え,鑑別として MPS,アメーバ性大腸炎を挙げた.清水はタコイボびらんがないことからアメーバ性大腸炎は考えにくく,MPS でほぼ間違いないと述べた.平田(大阪医科大学第2内科)はMPSが疑われるものの直腸下部発症のMPSは隆起型が多いこと,潰瘍形成型の場合周囲が盛り上がってくることから非典型的であるとして,梅毒を鑑別に入れるべきと述べた.

 病理は岩下(福岡大学筑紫病院病理)が説明し,血管内皮細胞が腫大し,核膜との間に明瞭な空隙のある好酸性の封入体があり,サイトメガロウイルスであること,MPSの所見はみられないことを述べ,サイトメガロウイルス直腸潰瘍と診断した.しかし通常みられるサイトメガロウイルス直腸潰瘍の典型像(punched out)ではないと述べた.

 出題者はその後の経過について,採血でサイトメガロウイルスIgM抗体が上昇していたが治療せずに自然治癒したこと,海外渡航歴なく肛門性交も否定していたことを説明した.感染経路は不明であった.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は65歳,女性.上腹部痛を主訴に当院を受診し,上部消化管内視鏡検査で残胃噴門部の異常を指摘され,精査目的で入院となった.上部消化管内視鏡検査では,残胃噴門小彎に色調の変化に乏しい小さな隆起性病変がみられた.色素撒布で隆起周囲に表面粗な平坦な病変が観察された.同部からの生検で低分化型腺癌と診断された.胃X線検査では同部は辺縁不整な淡いバリウムのたまりとして描出された.残胃にみられた噴門部早期胃癌と診断され,残胃全摘術が施行された.病理診断は低分化型腺癌,深達度はmであった.噴門部低分化型早期胃癌の報告は少なく,噴門部癌の発育・進展を考える上でも貴重な症例である.

  • 文献概要を表示

要旨 症例は59歳,男性.便潜血反応陽性を指摘され当院を初診した.大腸内視鏡検査でS状結腸に約6mm大の隆起性病変を指摘された.病変の立ち上がりは正常粘膜であり,淡く発赤した陥凹局面と陥凹内結節を認め,いわゆるIs+IIc型形態を呈していた.陥凹内の微細表面構造観察でも乱れはあるものの無構造部分は認められなかった.約3か月後の内視鏡検査では大きさに変化はないものの陥凹内結節はやや縮小かつ減高していた.また微細表面構造に変化は認めなかった.さらに3週間後には陥凹が深くなりIIc+IIa型へと変化していた.深達度sm深部浸潤癌と診断し腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行した.病理組織学的には高分化型腺癌が粘膜筋板を押し下げるように粘膜深部に発育していたが,粘膜筋板は保たれており間質反応も認められず深達度はmと診断した.大きな形態変化を来しながら最終的にm癌であった症例はまれであり報告した.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は72歳,男性.特に症状なく,便潜血検査陽性のため施行した大腸内視鏡検査でS状結腸に陥凹性病変が指摘され当院へ紹介された.形態は陥凹部の周囲がなだらかに隆起したIIa+IIc型であり,拡大内視鏡観察では陥凹部は無構造で周囲に腫瘍性pitを伴っていた.超音波内視鏡での深達度診断はsm深部浸潤と推定した.S状結腸切除術が施行され,病理組織学的には粘膜に腺癌を伴い,粘膜下層から固有筋層まで浸潤する内分泌細胞癌で,腫瘍径は7mmで本邦報告中最小のものであった.当疾患に対し拡大内視鏡観察が行われた報告はなく,また,微小な病変であることより発生学的にも興味ある症例であった.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は63歳,男性.主訴は上腹部痛.タール便も認めたため近医に精査目的に入院,上・下部消化管内視鏡検査にて明らかな異常を認めず経口小腸X線検査にて,空腸に径20mm程度の有茎性ポリープを指摘され,当科入院となった.ゾンデ法小腸X線検査では,空腸に径30mm大の亜有茎性隆起性病変を認めた.表面性状は基部は平滑だが,頭部は粗大結節状で,基部に複数の太いひだの集中を伴っていた.小腸内視鏡検査を試みるも病変まで到達しなかった.小腸病変が消化管出血の原因と考え手術を施行した.術中内視鏡にて頭部に上皮欠損を伴う粘膜下腫瘍様隆起を認めた.病理組織学的には成熟した脂肪細胞より成る脂肪腫で,頭部にびらんを伴っていた.

--------------------

欧文目次

編集後記 牛尾 恭輔
  • 文献概要を表示

 家族性大腸腺腫症(FAP)の随伴病変に関する研究で,わが国が果した役割は大きく,その後の遺伝子型-表現型相関の研究に大きな影響を与えた.ところで最近,FAP に新たな展開が生じてきた.まず,これまで腫瘍とは認知されてこなかった胃底腺ポリープに,少なからず異型を伴うことが明らかにされ,癌化した症例も報告されている.次に大腸腺腫の数が 100 個未満にとどまる AFAP(attenuated familial adenomatous polyposis)の発生原因として,酸化 DNA 障害の除去修復機構に関与する MYH 遺伝子の変異が指摘されてきた.しかもその場合,常染色体劣性遺伝であるという最近の報告には驚かされる.今後,多発性大腸腺腫の分類と取り扱いにも,新たな視点が必要であろう.また本号は形態診断と遺伝子診断との融合が見て取れる.それとともに,学問の底知れぬ深遠さも覚える.

基本情報

05362180.39.8.jpg
胃と腸
39巻8号 (2004年7月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月9日~9月15日
)