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2004年4月の早期胃癌研究会は4月14日(水)にイイノホールで開催された.司会は松田圭二(帝京大学外科)と田尻久雄(東京慈恵会医科大学内視鏡科)が担当した.mini lectureは「ESDによる内視鏡治療の可能性」と題して矢作直久(東京大学消化器内科)が行った.また,早期胃癌研究会2003年度優秀症例賞の表彰と症例提示が行われた.
〔第1例〕 42歳,男性.サイトメガロウイルス直腸潰瘍(症例提供:昭和大学附属豊洲病院消化器科 山本栄篤).
X線の読影は堀田(佐久総合病院胃腸科)と清水(大阪鉄道病院消化器内科)が担当した.堀田は直腸Rb前壁に不整形の潰瘍性病変があり,周囲に隆起を伴っており,そのまわりの粘膜が粗であることから腫瘍性でなく炎症に伴う潰瘍とした.清水は若年の患者であり排便困難を伴うこと,X線で痔核が写っていると判断し,普段からいきむ人であろうと考え,潰瘍が下部直腸にあることと直腸壁の伸展が良好であることからMPS(mucosal prolapse syndrome)を考えたいとした.内視鏡(Fig. 1)の読影では堀田は直腸Rbに存在する白苔がのった潰瘍性病変で周囲は浮腫状に隆起してそのまわりに浅いびらんを伴っていることから,炎症による潰瘍を考え,鑑別としてMPS,アメーバ性大腸炎を挙げた.清水はタコイボびらんがないことからアメーバ性大腸炎は考えにくく,MPSでほぼ間違いないと述べた.平田(大阪医科大学第2内科)はMPSが疑われるものの直腸下部発症のMPSは隆起型が多いこと,潰瘍形成型の場合周囲が盛り上がってくることから非典型的であるとして,梅毒を鑑別に入れるべきと述べた.
病理は岩下(福岡大学筑紫病院病理)が説明し,血管内皮細胞が腫大し,核膜との間に明瞭な空隙のある好酸性の封入体があり,サイトメガロウイルスであること,MPSの所見はみられないことを述べ,サイトメガロウイルス直腸潰瘍と診断した.しかし通常みられるサイトメガロウイルス直腸潰瘍の典型像(punched out)ではないと述べた.
出題者はその後の経過について,採血でサイトメガロウイルスIgM抗体が上昇していたが治療せずに自然治癒したこと,海外渡航歴なく肛門性交も否定していたことを説明した.感染経路は不明であった.
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