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家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis ; FAP)は,大腸全域に腺腫が多発し,放置すればほぼ全例に大腸癌が発生する常染色体優性の遺伝性疾患である.同時に,本症は骨・軟部腫瘍,胃・十二指腸・小腸病変,網膜色素上皮過形成などの大腸外腫瘍状病変を高率に合併する全身性疾患でもある1).1980年代後半に,本症の原因遺伝子が第5染色体の長腕(5q21-22)に存在することが判明し,1991年にadenomatous polyposis coli(APC)遺伝子として単離された.その後,欧米を中心に遺伝子診断の臨床的意義やAPC蛋白の機能解明を目指して,FAPの臨床徴候とAPC遺伝子異常の関係についての知見が集積され,本症の最近のトピックスとなっている.
従来,FAPの診断基準として大腸腺腫数が100個以上であることが必須とされてきた.しかし,近年,APC遺伝子の変異を認めながら,大腸腺腫数が100個未満にとどまる家系の存在が報告され,attenuated FAP(AFAP)と呼ばれている(Spirio L,1993;Lynch HT,1995).AFAPの家系では,腺腫数が少なく大腸癌が高齢で発生するという臨床的特徴に加えて,APC遺伝子の変異部位がN末端あるいはC末端に偏在することが報告されている.また,網膜色素上皮過形成(Wallis YL,1999),デスモイド腫瘍(Caspari R,1995),十二指腸病変2)などの大腸外腫瘍状病変についても,APC遺伝子の変異部位との関連性が指摘されており,大腸病変や大腸外病変に対する管理・治療方針の決定に遺伝子検査が有用な情報をもたらすことが期待されている.
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