胃と腸 34巻6号 (1999年5月)

今月の主題 大腸sm癌の内視鏡的切除をめぐって

序説

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 大腸早期癌のうち,粘膜内癌(m癌)で転移・再発を来した症例は皆無とされているが,癌がわずかでも粘膜下層に浸潤した段階(sm癌)から転移・再発の危険性が生じ,その危険性は癌浸潤の程度に比例して増大することが知られている.したがって,大腸m癌が内視鏡的治療のみで根治可能な病変であるのに対し,大腸sm癌の取り扱いについては,各施設問で差があり一定の見解に達しているとは言い難い.

 このような背景の下,本誌では,大腸sm癌の転移リスクファクターについてこれまで3回の多施設アンケート調査が行われている1)~3).3回目の調査3)では,大腸sm癌のリンパ節転移は外科的切除1,806例中153例に認められ,その陽性率は8.5%であった.すなわち,結果的にみると,大腸sm癌の90%近くの症例は,内視鏡的切除や局所切除のみで治癒可能な病変であり,多くの症例が不必要な外科的切除を受けていることになる.この結果的に不必要な外科的切除例をできるだけ減らし,sm癌に対する内視鏡的切除の従来の適応を見直すとともに,適応拡大のための新しい指標を追求するという主旨の下に本号は企画された.

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要旨 大腸早期癌に対する内視鏡的治療の進歩に伴い,m癌からsm癌へその適応が拡大されつつある.これは大腸sm癌の中に,腸切除を必要とせず内視鏡的切除や局所切除で治癒する症例が多数存在するためである.しかし,大腸sm癌の10%前後にリンパ節転移が認められ,2%前後に遠隔転移がみられている.更に,経過観察例では局所再発と遠隔臓器再発も報告されており,どのようなsm癌に転移・再発のリスクが高いかを判定することが治療選択上必要となる.内視鏡的切除がなされた場合には,転移・再発の危険因子と考えられる,脈管侵襲,sm浸潤度,腫瘍先進部組織型,簇出などの病理組織学的所見の詳細な検討が重要であり,個々の症例に応じた治療法の選択が必要と思われる.

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要旨 早期大腸癌,特にsm癌のX線所見について正面像を中心に述べた.sm-massiveに浸潤したsm癌の特徴は,Ⅰp型では1.1cm以上で,隆起の中に陥凹をみることであった.Ⅰs型では二重輪郭の所見を有する病変または陥凹所見を有する病変であった.Ⅱa型では特徴的な所見を指摘できなかった.陥凹型では陥凹周辺の盛り上がりが比較的幅が広い,陥凹が深いことを示唆する濃いバリウム斑,粘膜ひだが病変に集中した所見であった.良い前処置によってこれらの所見を描出することができ,X線所見でもsm癌の癌深達度について言及することができた.

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要旨 今回われわれは,大腸sm癌の内視鏡的切除適応拡大のために,通常内視鏡による深達度診断能の限界を知る目的で,m癌とsm1癌の判別およびsm2癌とsm3癌の判別が可能かどうか検討した.また,内視鏡的切除術を施行した病理組織標本にてsm1,sm2,sm3癌の区別が可能かどうか検討した.症例はsm癌107病変(sm1癌31病変,sm2癌29病変,sm3癌47病変)に,対照として無作為に抽出したm癌31病変を加えた早期大腸癌138病変である.内視鏡による種々の所見においてm癌とsm1癌およびsm2癌とsm3癌は判別不可能であった.よって,sm2癌までの内視鏡的切除適応拡大は不可能であり,m癌のみに内視鏡的切除術の適応を限定することも不可能であった.また,内視鏡的切除の病理組織標本にてsm2癌とsm3癌の判別は困難であった.

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要旨 大腸sm癌に対する内視鏡切除術の適応拡大の可能性を検討する目的で,sm癌288病変の解析を行った.sm癌の肉眼型別頻度はⅠs/Ⅰspが最も多く(41%),次にⅡa+Ⅱc(23%)であり,リンパ節転移陽性sm癌の80%がⅠs/ⅠspとⅡa+Ⅱcであった.リンパ節転移率は4.2%(sm10%,sm26.6%,sm312.8%)であった.EMR後追加腸切除例の6.5%にリンパ節転移を認めた.ロジスティック回帰分析の検討では,sm深部(SM2,3)浸潤の指標として有意な内視鏡所見は示されても,特にリンパ節転移の指標となる内視鏡所見は示されなかった.sm癌の形態計測値では,リンパ節転移陽性sm癌の最小sm浸潤値は2,300μmで,これ未満のsm浸潤値がリンパ節転移のない理論的安全域と考えられた.リンパ節転移陽性の陥凹型sm癌ではsm浸潤値は4,600μmと有意に深く,smmassiveでもsm2程度の陥凹型sm癌に対しては内視鏡切除適応拡大の可能性が示唆された.一方,無茎隆起型sm癌についてはこのようなことは言えなかった.

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要旨 大腸sm癌の内視鏡的治療の適応を明らかにするために,自験例125例の分析を行った.その結果,脈管侵襲陽性,病変全体の組織像が中~低分化腺癌・粘液癌,先進部の中~低分化傾向,の3つの因子が有意にリンパ節転移と関連していた.sm2であっても,上記のrisk factorを有さない病変にはリンパ節転移はなかった.sm1とsm2の分類基準が施設によって一定しないという問題点もあるが,sm2と判定しても上記risk factorを有さない病変に対しては,内視鏡的治療のみでも十分な治療となる可能性も考えられた.

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要旨 初回治療として内視鏡的治療が施行された大腸sm癌49例について,リンパ節転移・局所再発と各種臨床病理学的因子との関連をlogistic回帰分析により検討した結果,sm浸潤度(level分類)のみが有意であった(p=0.0381,Odds比11.26, 95%信頼区間1.14~111.04).level2以上を追加腸切除の基準とした場合,リンパ節転移・局所再発4例はすべて拾い上げられ,更に6例においては追加切除をせずにすんだ可能性がある.またlevel3のみを追加腸切除の基準とした場合,10例のみが腸切除の対象となり,リンパ節転移・局所再発4例中3例は拾い上げ可能であった.sm level分類は,大腸sm癌の内視鏡的切除後の治療方針の決定に有用な深達度分類であると考えられた.

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要旨 内視鏡的治療施行大腸sm癌80病変を対象に,深達度からみた内視鏡的切除の限界を明らかにするため,深部断端陽性率などの臨床病理学的所見と遺残,局所・転移再発,予後との関係を検討した.sm浸潤度は,400μm未満29例,400~1,500μm21例,1,500μm以上30例で,深部断端陽性率は13/80(16.3%)であった.13例中,隆起型病変が10例と高頻度であったが,sm浸潤度1,500μm未満の病変(6.0%;3/50)は1,500μm以上の病変(33.3%;10/30)に比べて有意に低率であった.局所遺残は,辺縁m癌の遺残1例と内視鏡的切除を途中で中断したsm遺残の1例のみで,ともに深部断端陽性例であった.ほかには追加手術例,経過観察例ともに遺残・転移再発は認めず,sm浸潤度1,500μm未満の病変は内視鏡的に局所根治可能であると考えられた.

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要旨 粘膜下層を3等分する相対分類は簡明で実用的であるが,sm1癌のリンパ節転移率はsm2以深癌と差がみられず,内視鏡治療との関連からみると問題があり,sm1癌については粘膜筋板からの垂直方向距離を測定し,500μm以内をsm1s,(shallow),それ以深をsm1d(deep)として検討した.その結果,高分化型癌でsm1s,であれば,リンパ節・リンパ管・先進部簇出・先進部組織型の高異型化はみられず,細分類の観点からみた内視鏡的切除の適応はsm1s(500μmまで)が,現時点では妥当であると考えられた.

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要旨 大腸sm癌の内視鏡治療の適応と限界について,sm浸潤度細分類と脈管侵襲,リンパ節転移から検討を行った.対象は当センターで1985年4月から1999年3月までの期間に経験した大腸sm癌323病変,脈管侵襲は164病変(50.8%)の陽性率を示し,リンパ節転移は全体で18病変(10.9%)に認められ,2群リンパ節転移も2病変(1.2%)に認めた.また脈管侵襲を伴わないsm癌にはすべてにリンパ節転移が認められなかった.sm細分類の検討では,sm1c以深で脈管侵襲30%を超え,1群リンパ節転移を認めた.肉眼形態ではsm深部浸潤傾向の強いⅡa+Ⅱc病変で63.5%と最も高い脈管侵襲を示したが,リンパ節転移率は,隆起型が高値を示した.病理組織型の検討では,中分化腺癌群が脈管侵襲を高率に示したがリンパ節転移が存在せず,高分化腺癌群の12.4%にリンパ節転移を認めた.以上より現状における内視鏡治療の適応は,脈管侵襲を伴わないsm1bまでの病変となるが,今後腫瘍先進部の組織型や分子生物学的アプローチなどの解析を加えることで適応を拡大できる可能性が示唆された.

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要旨 sm癌のリンパ節転移の危険因子としては,深い深達度(sm2以上),低い分化度(簇出を含む),リンパ管侵襲の3因子が重要であると考えられる.リンパ節に転移したsm癌の組織像は,①中~低分化腺癌でly(+),②中分化腺癌でv(+),③高分化腺癌でly(-),v(-)の3型に大別された.原発巣からだけではリンパ節転移の有無を予測することは完全にはできないので,sm癌であればすべてリンパ節郭清を含めた外科的手術施行が原則であるとわれわれは考える.

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要旨 内視鏡切除後の外科的追加切除の適応を検討するために,sm癌症例を検討した.n(+)症例は13/120(11%)であった.n(+)症例では,大多数がly(+)であり,増殖様式がPG,NPGを問わずsm浸潤面積に相関していると思われた.n(+)症例のsm深達値は1,075μm以上,sm浸潤面積は0.45mm2以上であった.更にly(+)症例は37/120(31%)であった.ly(+)症例のsm深達値とsm浸潤面積は,1例(sm深達値400μm,sm浸潤面積0.04mm2)を除いては全例n(+)症例以上の値を示した.したがって,内視鏡切除材料でsm深達値1,000μm以上あるいはsm深達面積0.45mm2以上の症例には,追加外科手術が必要と思われた.

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要旨 内視鏡的・外科的に切除された大腸sm癌41例について,①H・E染色像による組織学的再評価(modified Gleason's grading system):前立腺癌のGleason分類を応用した組織学的分化度のスコア化(低いものから,A群,B群,C群に分類),②接着因子であるE-cadherinとβ-cateninの免疫組織学的検討を行った.組織学的再評価では,従来の方法では高分化腺癌とされる病変の中にもスコアB群・C群のものがあり,再評価結果はリンパ管侵襲,リンパ節転移と相関した.大腸sm癌における接着因子の検討では,発現消失や核内・細胞質への発現などの異常を示した.これらの接着分子の正常な細胞膜への発現が保持されている病変では,脈管侵襲,リンパ節転移ともに頻度が低かった.従来の大腸癌分化度の評価に比べて,modified Gleason's grading systemは臨床病理学的な因子とより相関したが,接着分子の膜への局在の消失をみることで,更に的確な転移高危険群の選択が可能となることが示唆された.

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要旨 便潜血陽性が契機となって発見された大きさ約10mmの直腸のⅠsp型病変で,注腸X線検査では側面像の弧状変形から深達度sm2と診断された.大腸内視鏡検査では病変は中央部のやや深い切れ込みによって分葉状を呈していたが,緊満感もなく表面の凹凸も目立たず,sm癌を示唆する所見は明らかではなかった.また拡大内視鏡観察でも表面構造は主にⅢlないしⅣ型pit patternから成り,中央部の切れ込みの部分でやや不整なⅢl+Ⅲs型の密在を認めるのみで,深達度mの早期癌と診断し,EMRを施行した.病理組織所見では,腫瘍の表層は高分化腺癌に覆われていたが,中央の切れ込みの部分で低分化腺癌に変化し粘膜下層の中層まで浸潤していた.注腸X線検査では深達度を正診したが,内視鏡で浅く読みすぎたため治療法を誤った大腸sm癌の1例を報告した.

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要旨 患者は75歳,男性.肉眼型の概観は有茎性ポリープであったが,その頂部にNPG型の微小Ⅱc局面を有した上行結腸sm癌EMR例を報告した.病理組織学的には高分化腺癌,深達度sm3,ly0,v0であった.本病変の特異な形態の形成機序として,癌の粘膜下への著明なdownward growthのみならず,組織学的類似性からcolonic muco-submucosal elongated polyp(CMSEP)と共通した発育進展過程が推察された.自験例はその特異な形態のため,その質的診断および取り扱いに苦慮した教訓的かつ貴重な症例と思われた.

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要旨 患者は54歳,男性.約7年前他院にて横行結腸部分切除を受け,経過観察目的で当科にて大腸内視鏡検査を施行された.上行結腸に中央に陥凹を伴う扁平隆起性病変が発見された.Ⅱa+depression型の大腸腺腫と診断され内視鏡的粘膜切除が施行された.病理組織学的には4mmのⅡa+Ⅱc型の分化型腺癌で粘膜下層に浸潤していた(sm1).

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要旨 患者は38歳,男性.直腸Rbに8mm大の広基性ポリープを指摘され,内視鏡下にポリペクトミー施行,残存ポリープに再度内視鏡下にポリペクトミー施行した.高分化腺癌で,断端陽性であったため,経仙骨的に直腸を部分切除した.手術標本には,腫瘍の残存が認められなかった.手術後8年目に,CT上骨盤内に8cm大の局所再発と発見された.第2回目ポリペクトミー標本を見直したところ,粘膜下層のリンパ濾胞内に癌細胞が認められた.動注化学療法・放射線治療が行われ,腫瘍は5cm大にまで縮小し,再発の発見後3年以上生存している.大腸sm癌の治療方針の決定においては,病理医と外科医の緊密な関係が重要である.

症例からみた読影と診断の基礎

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〔患者〕40歳,女性.現病歴:1996年4月ごろより嚥下時のつかえ感を自覚したが放置していた.しかし,その後も症状の改善がみられないため1997年4月近医を受診した.上部消化管内視鏡検査を施行され異常を認められたため精査・加療目的に当院紹介され入院となった.入院時現症および血液生化学検査所見には特に異常を認めなかった.

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要旨 患者は73歳,男性.逆流性食道炎,食道潰瘍の経過観察中に下部食道に異常を指摘されたため入院となった.食道X線では食道裂孔ヘルニアに連続して口側に全周性の粗糙な粘膜変化と,内部に淡い不整形の陰影斑を認めた.内視鏡では長径6cmに及ぶ発赤調で血管網を透見しうるビロード状粘膜と,異常粘膜局面の中央部には白苔に覆われた辺縁整の陥凹性病変を認めた.超音波内視鏡では陥凹部はUl-Ⅱの解放性潰瘍の所見であった.Barrett食道に合併したBarrett潰瘍として矛盾のない所見であったが,陥凹辺縁からの生検で腺癌が証明されたため,非開胸抜去術を施行した.組織学的にはBarrett食道に発生した深達度m1の高分化型管状腺癌で,陥凹部はUl-Ⅱの潰瘍であった.また,他部位には多発性に種々の異形成性のBarrett上皮を伴っていた.

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欧文目次

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 日常診療を行う上で次のような事例に遭遇したとしよう.“内頸動脈閉塞の所見はないが,一過性脳虚血発作(TIA)を起こした65歳の女性に3か月前からaspirinを処方している.先週,2度目のTIAを起こした.患者は発作の再発を懸念し,もっと予防効果のある薬があれば,変更してほしいと申し出た”.担当医はどのように対応したらよいだろうか.

 普通は簡便に解決しようとして,先輩や同僚の医師にTIA再発予防に効果のある薬は何か尋ねる.また,教科書や製薬会社のパンフレットを参考に薬を検討することだろう.時間に余裕があるときには,最新のハリソン内科書に当たってみるかもしれない.それには“TIA再発予防にはaspirin,dipyridamole,ticlopidineなどがあるが,1日300mg以下のaspirin内服が最も有効である.dipyridamoleには脳血栓を予防するというevidenceがない.ticlopidineとaspirinの比較が行われているが,どちらがよいかうまく評価できていない.ticlopidineには白血球減少,下痢,皮疹などの副作用があるので,aspirinが禁忌のものにのみ内服させるべきである”と書かれている.医師も患者も再発の懸念を漠然と感じながらもaspirinを継続することになるのでなかろうか.

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 わが国のがん治療,特に消化器癌の領域では欧米に類をみないような拡大手術が行われてきた歴史がある.そして,治療後の5年生存率も着実に延びてきている.更に近年では,この生存率と同時に患者さんのQOLを重視する傾向が強くなってきている.筆者はわが国のがん治療は二極化に入っていると思っている.すなわち,いまだに満足できる治療成績が得られていないがんに対しては,侵襲を意識せず根治性を求める積極的な治療法の開発と,逆に治療成績が向上しているがんについては治療効果を損なうことなく,できる限り侵襲を押さえようとする低侵襲治療の開発の二極化である.外科手術における縮小手術,消化管内視鏡を用いた粘膜切除,更には腹腔鏡下手術などの症例数が飛躍的に廷びていることも周知の事実である.

 一方,わが国の肝細胞癌のほとんどは肝硬変あるいは慢性肝炎など基礎疾患を有する肝臓から発生するため,切除術は肝機能の面から大きく制約を受けている.また,C型肝炎による肝硬変では肝の障害が進むほどがんの発生率が高くなり,肝臓に対する影響を極力抑制し,治療することが必要となる.そこで,最近では肝細胞癌に対していくつもの低侵襲性の治療法が開発され,各施設で試みられている.この度,医学書院から発刊された「肝癌の低侵襲治療」は,早い時期よりinterventional radiologyに積極的に取り組まれてきた中村仁信教授と肝臓内科の第一人者の1人である林紀夫教授の編集によるものである.前述のごとく,非常に時宜を得た企画である.その特色は,まず肝臓病学の立場から肝細胞癌の特徴をわかりやすく紹介し,それぞれの癌腫に適した治療法のあり方を説明していることと,個々の治療法の詳細を非常にわかりやすく解説していることであろう.更に症例の写真や図を多用し,読者の理解を助けていることも1つの特徴であろう.また,検査・治療の合併症や再発に対する診断・治療など,最近問題になることの多いテーマについても詳しく述べられている.

編集後記 武藤 徹一郎
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 大腸sm癌の内視鏡的摘除のみによる治療がどこまで可能であるかという問いは,ポリペクトミーが開始されたときからの大きな課題であり,各施設の経験症例が少なかった1980年代から計3回にわたってアンケート調査によってその答えを出そうという試みがなされた.細かい組織学的所見はさておいて,浸潤した癌の容積が危険因子の1つであることには異論はないが,日常診療の場では浸潤の深さでその判定が行われる.初期のころのmassive invasionという基準がsm1~sm3に3分類され,更にsm1の深さをどう規定するかという問題が論じられてきた.本号で少しは意見の幅が縮まるかと思われたが,どうもその期待は裏切られたようである.sm1の浸潤値として500μmから2,300μmの差がみられるし,sm癌すべてに追加腸切除が必要という考えとsm2まで内視鏡摘除の適応を拡大できるという考えが示されている.これでは意見の幅の縮小どころか,ますますその差が明らかになったとしか言いようがない.これは研究ではなくて臨床の問題であるのに,自己主張ばかりでは読者はますます混乱するばかりであろう.

基本情報

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胃と腸
34巻6号 (1999年5月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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