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1963年,国立がんセンターの「胃のカンファランス」と呼称されていた症例検討会が一般にオープンされて,地方からの若い研修医とともに東京およびその近郊の熱心な開業医がこの集まりに参加し,おそらく初めて早期胃癌の切除標本をみたことであろう.また,1964年からエーザイ本社講堂で早期胃癌研究会が発足して,毎月熱のこもった討論が交されていた.この時代は,新しい学問の雰囲気,とりわけあの胃癌を征服しようという,ものぐるほしいまでの情熱をその場にいた開業医達が肌で感じ,それぞれ自分達の地域にも講習会や研究会をつくって1例でもいいから早期胃癌を発見できるようになろうという気運が横溢していた時代であった.都内でも,このあと数年の間に,各区の医師会でX線読影を中心とした研究会が発足した.こうなると自分の区の研究会だけでは飽き足らず,隣の区の医師会,更にはその先の医師会の研究会にも首を突込むようになり,各区の熱心な同志と交流するようになった.こうなると,更に高度な知識や技術を修得するためにセンターとなる研究会を持とうではないかということになった.こうして1969年に東京消化器病研究会,1975年に東京内視鏡研究会がつくられた.
東京消化器病研究会は毎月第2木曜日に中央区にある藤沢薬品の会議室で開かれる.講師は主に国立がんセンターの諸先生で,今までに台風の晩にぶつかったこともあるが,一度も休んだことはない.出席人数はこの11年間ほぼ30~50人で,メンバーは主に開業医で,少数の大学病院やその他の病院の勤務医も含まれている.開業医の多くはいわゆる“下町”といわれる地域の医師会に属しており,それだけに遠慮のない討論のやりとりが毎回みられ,司会者はたくみに大勢から発言を引き出そうとする.研究会の内容を紹介すると,まず“1分診断”と称して日常の診療で疑問のある所見や,自分ではO.B.と思うけれど大丈夫だろうか?などと,すぐ明日にでも患者に告げる診断についての相談コーナーがある.このあとに症例検討があり,主にX線写真について議論する.講師のX線読影の解説があり,次に内視鏡の討論がある.最後に病理が出て結論を出すといった内容である.
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