胃と腸 1巻9号 (1966年12月)

今月の主題 胃粘膜下腫瘍

綜説

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 近年,胃X線,内視鏡,細胞診などの検査法の著しい進歩によって,各種胃疾患の発見並びに鑑別診断の可能性が大きくなってきた.

 胃の非上皮性腫瘍,即ち胃粘膜下腫瘍においても,その内視鏡所見がかなり報告されるようになり,胃粘膜下腫瘍の内視鏡診断もある程度まで可能となってきた.いうまでもなく,胃粘膜下腫瘍にも良性のものと悪性のものとがあり,両者の内視鏡像にはかなりの差異がある.良性のものでは,滑平筋腫,神経線維腫,線維腫,脂肪腫,骨軟骨腫,血管腫,好酸球肉芽腫,迷入膵等があり,これらの内視鏡像は,1,2のものを除き,ほぼ同様の所見を呈し,これら相互間の鑑別診断は困難である.従って,臨床的にはこれらのものを一括して胃粘膜下良性腫瘍として扱った方が便利である.悪性の胃粘膜下腫瘍としては胃肉腫があることは周知のところである.

 教室で,組織学的検索により胃粘膜下腫瘍であることを確認し得た症例のうち,術前内視鏡検査が行なわれていた滑平筋腫7例,神経線維腫4例,異所性胃壁内骨形成の1例,好酸球肉芽腫2例の良性合計14例と細網肉腫4例,悪性リンパ腫2例の悪性合計6例を中心に胃粘膜下腫瘍の内視鏡診断について述べる.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 最近X線検査,内視鏡検査ならびに細胞診などの各種検査法の普及発達にともない,胃疾患の診断が急速に進歩した.すなわち早期胃癌は術前に診断されるようになり,鑑別疾患である胃粘膜下腫瘍なども容易に診断され,報告例も目立ってきた.昨年(昭和40年)秋札幌で開催された消化器病学会・内視鏡学会合同研究会では胃粘膜下腫瘍のテーマがとりあげられ,17題の演題が集まり,100例以上の症例が報告されたこともそのあらわれである.しかしながら小さい表面型早期胃癌ことにⅡaの確診はときに困難なことがあり,粘膜下腫瘍のある種のものはこれらとの鑑別に苦労する場合がある.かかるときには最近広く行なわれるようになった直視下生検ないし細胞診をぜひとも行なわなければならない.

 胃粘膜下腫瘍とは胃の非上皮性良性腫瘍と理解されるが,現在一般的には副膵,好酸球肉芽腫も含められているので,われわれも広義に解釈して考察を加える.また最近細胞診の立場からすれば,癌細胞と肉腫細胞の鑑別もおおむね可能となったので14)15)16),粘膜下腫瘍の診断に際して,当然良性・悪性の鑑別が必要となるのでこれらについても言及する.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.まえがき

 胃X線診断は,X線装置の改良と診断技術の向上と相まって,ここ数年の間に驚異的進歩を遂げ,今や,粍単位の病変の追求がなされている.また,鑑別診断も高い精度が要求されるようになった.もちろんこのため,胃内視鏡や胃細胞診の力を借りねばならない場合も多々あるわけであるが,X線単独での診断能も非常に進歩してきた.胃粘膜下良性腫瘍のX線診断に関し,すでに諸家の報告が多くみられるのであるが,一般に困難であるという結論に達している.国立がんセンター病院で,過去約3年間に,13例のSubmucosaI Tumorを経験したので,これらの症例をふり返って,X線診断の可能性,診断根拠となる所見を調べてみる.胃粘膜下迷入組織は,臨床上Submucosal Tumorと呼ぶときには,これを加えて考えるものであるから,ここでは,胃粘膜下腫瘍の「腫瘍」という言葉にこだわらずに考慮に入れることにする.すでに,Schindler3)(1942),Katsch4)(1953),Teschendorf1)(1948),Schinz(1954)らの記載にみられるごとく,確かに,X線的に,また,内視鏡的に胃粘膜下腫瘍に特有な所見は存在するのであるが,すべての症例に,これらの条件を満足する像がみいだせるとはいい得ない.いずれにしても,隆起性病変であるから,腫瘤が大きい場合はBorrmannⅠ型の胃癌や胃肉腫との鑑別が必要であり,小隆起の場合は,表面隆起型早期胃癌(Ⅱa),たけの低い無茎ポリープ,Erosive gastritis,また,単なる過形成性の胃粘膜との鑑別が問題になる例にしばしば遭遇する.自験例13例のうちわけは第1,2表に示すごとく,大きさは最大35×60mm,最小7×5mmで,15×15mm以下の小病変が8例と過半数を占めている.組織像で迷入膵が7例と多いのは,やはり,小病変が多いことによると思われる.発生部位は胃前庭部に圧倒的に多く,前後壁の比はやや前壁が多い.性別はほぼ同数であり,年齢分布は31歳より67歳と比較的高年層に多い.X線単独でSubmucosal Tumorと確診し得たのは8例,ポリープとしたもの2例,表面隆起型早期胃癌の疑いとしたもの2例であり,もう1例は,胃変形が強く,胃内隆起を的確にX線フィルムにとらえ得なかったものである.しかし,見直してみると,ポリープとしたもの2例およびⅡaと誤診された1例は,検査不充分で,隆起とその周辺粘膜の関連が追求されていないためといえる.もし充分な検索が行なわれたならば,X線的に,粘膜下腫瘍という診断は可能であったろうと思われる.以下症例について説明を加える.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 胃の良性腫瘍,ことに粘膜下腫瘍は無症状に経過することが多く,また上腹部痛,吐血などを訴え,あるいは腫瘤を指摘され,胃癌と診断されて,術後に粘膜下良性腫瘍と判明するので,まれなものとされていた.しかし最近ではレ線や内視鏡検査法が発達し,細胞診も進歩をとげ,また胃集団検診が行なわれるようになって,無症状のものが発見され,粘膜下良性腫瘍の報告例が増加している.われわれの集計によれば,わが国では昭和36年までに胃筋腫は91例の報告があったが1),昭和41年3月までの報告は245例に達し,最近数年間の報告例は著しく多くなっている.

  • 文献概要を表示

 城所(司会) それじゃこれから始めます.粘膜下腫瘍は昔は割合まれな疾患というふうに考えられていたと思うんですけれども,最近診断面の進歩につれて非常に多く発見されるようになりました.特に無自覚のこういう疾患がかなり摘発されて,それが治療の対象になるケースも非常にふえておりますので,粘膜下腫瘍をこの座談会で取り上げていろいろ討論していただくのは非常に意義があることと思います.

 それではまず粘膜下腫瘍の定義に関して,ひとつの御意見を伺いたいと思うわけですが,古くから粘膜下腫瘍に関して学会に発表されていた信田先生にまず皮切りに発言していただきたいと思うんですが.

  • 文献概要を表示

 市川(司会) 前回までの座談会で,診断のところが大体終わりましたので,これから治療ということになります.先生方は,いずれもベテランでございますので,いろいろおもしろいお話を聞かしていただけると思います.

 治療ということになりますと,治療の目標といいますか,どこまでなおすかということが先づ,問題になってくるわけです.また,逆に言えば,どこまでなおったら,なおったといえるか.これは,当然臨床的な面と病理学的な面とでは,多少違いますが,どのあたりに,その関連性を考えることができるか,その辺もポイントになると思いますが,いかがでしう,どなたでも自由に御意見を出していただけたらと思いますが,平山先生は主としてレントゲンで…….

  • 文献概要を表示

Ⅰ.緒言

 最近,早期胃癌発見のために,レ線間接撮影による胃集検が年を追って盛大になりつつあるが,このレ線間接撮影が集検車によった場合は,撮影時の種々な条件が影響して,その結果が時に非常に大きく変ってくることに注意せねばならない.

 われわれは第1回の胃レ線間接撮影で「異常無し」とされたものが,1年後,同様胃集検で「角上部辺縁不整」を指摘され,引続いての精検で,「角上部線状潰瘍」とされ,さらにその中央部に潰瘍瘢痕から発生した表面陥凹型早期胃癌(Ⅱc)が内視鏡検査並びに胃生検で発見されたと謂う興味ある診断経過を示した症例を経験したので,ここに報告する.

  • 文献概要を表示

症例

 患者:折○長○郎 39歳 ♂ 公務員

 初診:昭和41年4月7日.

 手術:同6月2目.

 主訴:もたれ感

  • 文献概要を表示

Ⅰ.まえおき

 癌根治手術に際し,原発巣附近の転移リンパ節廓清は必要かくべからざる条件である.ところが実際リンパ節廓清にあたって,肉眼的な転移の有無判定はもちろんのこと,所属リンパ節の所在部位すら識別するのに困難をともなうことが少なくない.腫脹増大せるリンパ節の確認は簡単であるにしても,肉眼的に確認困難なリンパ節の探索は容易なことではない.

 とくに肥満者の場合,豊富な脂肪組織にリンパ節は埋没して,その確認はなおさら困難を極める.しかもかかる識別困難な小さいリンパ節ですら癌転移巣の発見されることが少なくないといわれている.かかる転移巣を榊原1)はmicrosolitary metastatic fociとして注意を喚起している.

--------------------

編集後記 春日井 達造
  • 文献概要を表示

 消化器,内視鏡,癌その他の国際学会において多数の研究成果が発表され,日本の消化器病学,特に早期胃癌の診断学が世界をリードしていることが内外の諸学者に等しく認められたことは誠によろこばしいことである.しかし一方,外国学者の発表を聞き,また親しく話し合って一,二感じたことがある.彼等がそれぞれ自分自身の学問に自信と誇りを持ち,私どもから見ると,少しく時代遅れではないかと考えられる方法でも自家薬籠中のものとして,その特徴を充分発揮し良成果をあげていることと,他人のオリジナリテーというものを尊重し,しかも自分自身で充分納得しない限り新しいからといって,徒らにとびつかないことである.この点新しがりやの日本人にとって反省してみる必要はないであろうか.流行を追うことのみに熱中せず,まず自分自身のものを伸ばすべきである.これがひいては人の仕事を尊重し,それを正しく評価し,消化吸収することにもなると思う.学問の世界におけるオリジナリテーというものはもっと厳しくあってよいと思う.

 本号は粘膜下腫瘍の特集号として,そのX線,内視鏡及び細胞診断と,これに関する座談会記事を掲載し,シリーズものの胃潰瘍の座談会は治療問題に入った.

基本情報

05362180.1.9.jpg
胃と腸
1巻9号 (1966年12月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
11月5日~11月11日
)