胃と腸 1巻5号 (1966年8月)

今月の主題 胃潰瘍〔2〕

綜説

胃潰瘍のレ線診断 増田 久之
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Ⅰ.はじめに

 胃潰瘍の診断方法のなかではレ線検査と内視鏡検査が最も重要であり,その診断には両検査法によって潰瘍を証明することが決定的である.胃液検査や糞便の潜出血検査なども胃潰瘍の診断の補助とはなるが,それだけでは決定的のものではない.レ線検査と内視鏡検査は全く異なった観点に立つ診断法であるが,両者は相互に補足しあうものであり,現段階では両者を併用することが必要である.しかしここでは胃潰瘍のレ線診断について検討を加えることにする.

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Ⅰ.はじめに

 胃潰瘍という疾病は,外来診療や胃集団検診をとおして非常に高頻度に遭遇するが,その発生する状況や終末の運命については,存外わからないことが多いようである.そのために,実際患者を診ても,必ずしも患者が満足するような答えを与えていないことがあると思う.

 胃潰瘍が胃の局所病変ではなく,むしろ心身両面の状態を表わす「顔」の一種の表状のようなものとも考えられ,そのような意味での治療法が多く唱えられてもいる.しかし,実際に診断,治療の面では直接胃の形態的変化,機能的変化に対して向けられていることが多い.したがって,胃潰瘍の経過についても,局所の形態上の変化について多く論ぜられているが,一方また,その他の諸関連要因からも検討してみる必要がある.

 また,胃潰瘍の治癒と再発についても,近年,胃内視鏡の発達・普及にともなって,精細な観察が行なわれるようになった.胃潰瘍は実際に1回のepisodeをみると比較的よく治癒するが,一方また非常に再発しやすいものである.しかも,わたしたちがみる胃潰瘍は,かならずしも発生直後のものではなく,長い胃潰瘍の経過の一時相をみているにすぎない場合が多く,一律に胃潰瘍のたどる経過を説明することははなはだむずかしいものである.ごく一般論として,内視鏡的にみた胃潰瘍の経過は,活動期,退行期,治癒期および瘢痕期の順に大別されているが,すべての胃潰瘍が順調な経過をたどるわけではなく,この各期が入れ替りあらわれるのが普通である.この点からさらに長い期間の様相をみたら胃潰瘍というものはどういう運命をたどるのであろうか.

 胃潰瘍の診断を下した時,まず患者にきかれることは,

 (1)胃癌ではないのか?将来胃癌にならないか?

 (2)手術をしなくてもなおるのか?

 (3)手術をしないとすれば,どれくらいで癒るか?

 (4)入院治療をしなくてもよいか?

 (5)仕事を休むべきか,休まなくてもよいのか?

 (6)食餌,嗜好その他について,患者自身として心懸けるべきことは何か?

等々である.

厳密にいえば,これらの質問に対し十分な答えをすることは容易なことではない.

 以上のようないとぐちから,(3)の問題を中心に,胃潰瘍の経過の概略を,手もとの資料を用いてのべることにする.

展望

膵の諸問題―内科から 内藤 聖二
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はじめに

 膵疾患,膵機能不全はかなりの頻度で存在するであろうということは数十年来膵研究にたづさわっている少数の人びとから警告され,啓蒙されてきた.しかし膵は解剖学的に他の臓器に被覆されており,最近進歩した内視鏡検査でも,X線検査においても全貌を観察することは不可能であり,試験開腹時においてさえも容易に観察し得ないところから医学の盲点として置き忘れられてきた感がある.消化器病の中で肝疾患の研究は肝炎,肝硬変症を中心に,また血清肝炎としてクローズアップされた疾患群を中心にこの数年間に著るしい進歩がみられ,また胃疾患ではガストロカメラ,ファイバースコープの開発,X線診断の進歩によって早期胃癌の診断というかなり高級な診断もすでに一般臨床のレベルにまで広く用いられるようになっている.一方膵疾患についてはこの数年来ようやく各分野においてとりあげられてきた感があり,ことに膵癌の診断,治療について,各方面からの再検討がさけばれてきている.名大青山教授を中心に膵研究会をはじめた数年前には二三十名にすぎなかった会員も昨今では300名以上に増加し,膵疾患への歓心が高まりつつあることが明らかである.この小論文に与えられた範囲において膵疾患の問題点を述べ,胃腸を専門とする諸家が膵疾患の分野に進出,研鑽されんことを希うものである.

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Ⅰ.症例

患者:47歳男,40年5月21日手術

主訴:心窩部痛

X線診断:Ⅱa型2コの早期胃癌

肉眼診断:Ⅱa型1コの早期胃癌

組織診断:Ⅱb型およびⅡa型早期胃癌

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Ⅰ.はじめに

 近年,X線・内視鏡・細胞診ならびに生検など,胃検査法の画期的な進歩により,胃疾患診断学は飛躍的な発展を遂げ,古くからの課題であった胃癌の早期診断も,今日ではさほど困難なものでなくなりつつある.この趨勢の原動力となったものが,胃カメラの発達,普及であることは疑いのない事実である.すなわち,その検査手技の簡便さと鮮明なカラー写真の記録性とにより,胃癌の早期像の客観的な把握を可能にしたことは,X線検査とともにその診断学の体系化に大きく寄与してきた点で高く評価されなければならない.しかしその後症例の増加とともに,早期胃癌像の多様性が明らかにされ,殊に良性病変との鑑別困難な例の経験されるに及んで,細胞診や生検法などを加えた総合診断法の必要性が認識されて,今日の発展をみるに至った.ここに報告する症例は,陳腐なⅡc型の早期胃癌であるが,その発見から手術による確認までの過程を述べることにより,われわれが現在実施している胃疾患診断法の実態を明らかにしたい.

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 私たちはX線,内視鏡ともにⅡc型早期胃癌を考え,切除胃の肉眼的診断でも多発性のⅡc型早期癌とされた細網肉腫の1例を経験した.(病理組織診断上,未だ問題を残してはいるが,一応早期の細網肉腫と考えられている.)ここでは肉腫に関する考察は省略して,術前診断の過程について述べ,同時に振り返って鑑別診断の可能性について考察を加える.

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Ⅰ.緒言

 線状潰瘍については1954年の村上の発表1)以来常岡2),白壁ら3)4)のすぐれた業績がある.近年レ線,内視鏡診断および細胞診の進歩にともなって多数の早期胃癌が発見され潰瘍,ポリープなど胃良性病変の悪性化が論じられている.

 われわれは最近線状潰瘍の一端にみられた早期胃癌の一例を経験したので報告する.

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この座談会は,胃潰瘍を話題として,本号から6回にわたって連載する,本号は,疫学と集団検診の部分であるが,次号から,レントゲン診断,内視鏡診断,病理,治療にいたるまで,順次掲載する予定である.

技術解説

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Ⅰ.緒言

 胃内視鏡の歴史はふるい.Kussmaulがはじめて胃内観察を試みたのが1868年であるから,胃内視鏡史はもうすぐ100年になろうとしている.胃内視鏡検査はたんに歴史がながいだけではなく,たえず成長し,飛躍してきた検査法であり,ことに胃カメラとファイバースコープの出現はこの検査法を一新させてしまった.しかし新らしい検査法は古い検査法が過去に蓄積した遺産をうけついだうえで新らしい技術的創造と結合し発展をとげてゆくことを忘れてはなるまい.

 ファイバースコープによる直視下胃内観察は今や誰にでもできる容易な検査であって,名人芸を全く必要としないことはまづ強調しておかなければならないことと思う.このことは最近のファイバースコープの普及ぶりと,それによる数多くのすぐれた報告が次第に増しつつあることをみると容易に理解されよう.

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 胃リンパ腫(広義の)の予後調査結果とその組織所見を対比検討した.対象はPhiladelphiaのGraduate Hospitalで手術された24例で,21例は胃切除で,3例は切除不能のため放射線で治療された.

 年齢30~73歳平均56歳,病悩期間1~18ケ月.主症状は腹痛(32例)で,2例で腋窩リンパ節腫脹を認めたが,生検で良性と診断された.X線検査でリンパ腫が疑われたものは4例で,1例は良性ポリープ,他は胃癌と診断された.過酸2,正酸12,無酸7例.細胞診は7例中4例陽性であったが,リンパ腫と診断できたものはない.5年以上予後を追跡できたのは24例中17例で,うち10例が3年以内に再発死亡し,他の7例は5~13年健在である.

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 A Retrospective Clinicopathologic Study with a Review of Literature: Arind G Bhagwat, M. D. (Path)and William & Hawk M. D. (Am. J. Gastroent. 45: 163~188, 1966)

 著者等は剖検時に腸間膜動脈の閉塞がないにもかかわらず広範囲な出血壊死を起した3症例を最近経験したので,これを臨床病理学的観点から検討し,Cleveland Clinic Hospitalの剖検例2,044例を調査したところ,ある基準を満足する臨床病理学的実体を取り扱かっていたことを知った.その基準に相当するものは2,044例中わずかに16例でその発生頻度は0.8%である.心不全や不整派などを持つ老人(平均67歳)に多く,男性は女性より多い(11:5).通常上腸間膜動脈の支配領域に広範囲な出血壊死が生じるが血管閉塞とは全く関係がない.しばしば持続的な低血圧症状(16例中13例)と急性腹部症状(腹痛5例,腹部膨満感4例,下痢4例,下血3例,圧痛3例)がみられる.神経体液的および免疫学的な機序により血管の機能的変化が起るものと考えられ,通常二次ショックに移行し死亡する.著者等はこの症候群をTHNEと名づけた.その典型例は偽膜性腸炎とは明かに異なり炎症性病変が少なく,また抗生物質の長期投与や外科的侵襲が背景にあることもない.16例中9例はTHNEの発生より72時間以内に死亡している.この事実から2つの疑問が生じる.

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 Diffuse Gastrointestinal Polyposis with Ectodermal Changes(Acase with severe malabsorption and enteric loss of plasma proteins and electrolytes)

 Stig Jamum, M. D. and Herluf Jensen, M. D. Medical Department P. Gastroenterological Division, Rigshospitalet, Copenhagen, Denmark(Gastroenterology:Vol. 50,No. 1, 1966, 107-118.)

編集後記 崎田 隆夫
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 「胃と腸」も,はや第5号発行の運びとなり,もろもろ,順調に進行を始めたようである.月刊誌というものは,たとえば1年を単位としてぐるぐる内容的に同じ道を回転するものが多いそうであるが,本誌は1年やそこらでは到底,始めの出発点にたちもどれそうもない.

 それほど,掲載したい内容が豊富なのである.巷間,本誌の近い将来のゆきづまりを心配して下さっている方があるように聞くが,その点,どうぞ御心配なく,益々御後援御鞭捷下さるようお願いする.

基本情報

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胃と腸
1巻5号 (1966年8月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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