今月の主題 胃潰瘍〔2〕
展望
膵の諸問題―内科から
内藤 聖二
1
1順天堂大学医学部山川内科
pp.455-462
発行日 1966年8月25日
Published Date 1966/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112056
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はじめに
膵疾患,膵機能不全はかなりの頻度で存在するであろうということは数十年来膵研究にたづさわっている少数の人びとから警告され,啓蒙されてきた.しかし膵は解剖学的に他の臓器に被覆されており,最近進歩した内視鏡検査でも,X線検査においても全貌を観察することは不可能であり,試験開腹時においてさえも容易に観察し得ないところから医学の盲点として置き忘れられてきた感がある.消化器病の中で肝疾患の研究は肝炎,肝硬変症を中心に,また血清肝炎としてクローズアップされた疾患群を中心にこの数年間に著るしい進歩がみられ,また胃疾患ではガストロカメラ,ファイバースコープの開発,X線診断の進歩によって早期胃癌の診断というかなり高級な診断もすでに一般臨床のレベルにまで広く用いられるようになっている.一方膵疾患についてはこの数年来ようやく各分野においてとりあげられてきた感があり,ことに膵癌の診断,治療について,各方面からの再検討がさけばれてきている.名大青山教授を中心に膵研究会をはじめた数年前には二三十名にすぎなかった会員も昨今では300名以上に増加し,膵疾患への歓心が高まりつつあることが明らかである.この小論文に与えられた範囲において膵疾患の問題点を述べ,胃腸を専門とする諸家が膵疾患の分野に進出,研鑽されんことを希うものである.
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