臨床婦人科産科 34巻11号 (1980年11月)

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 Ⅲ.妊娠中のCa,Pi代謝動態22,23)

 胎児には30〜40gのCaが蓄積されるが,これは母体の3.0%前後にすぎない。児体重と児のCa量とは相関性が高く,妊娠8カ月以降急速に胎児に蓄積される。また母体の栄養状態,年齢,経産回数,摂取Ca量にはまったく影響されることなく児の骨成長は進行する。ただ文献的には,先天性骨軟化症,先天性クル病児の例が散見されるが,これらは母体にCa,ビタミンDの極端に不足した状態にあった例かと想像される。

 以前より妊娠・産褥での母体総血中Ca量の測定が報告されてきた。妊娠初期より30週前後までは次第に下降し,その後分娩にいたるまでは軽度上昇するというのが通説であった24)。しかしCa44の定量が可能となって,近年再検討が行なわれるようになった。

Modern Therapy 映像診断--治療へのアプローチ

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 電子走査方式の超音波断層法の応用に伴って,胎児の形態学的な観察は飛躍的な進歩をとげ,奇形をはじめとする種々の胎児異常の診断が進んでゆくにつれて,一方で胎児治療法の開発を望む気運が高まっている。

 そこで本稿では症例に即して胎児診断・治療の現状について検討を加えてみたい。

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 超音波診断法は患者に対する侵襲がなく,かつ手軽に反復施行することができる診断法として,最近,臨床各方面で広く応用され始めた。

 特に産婦人科領域では,胎児に対する影響がほとんどないという利点から,従来映像診断法にとって一種の聖域となっていた妊娠子宮の映像化が可能になるなどの,臨床上のメリットは大きい。

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 ラジオアイソトープ(RI)を用いた核医学診断法ならびに検査法は,安全かつ簡便なために現在広く利用され,癌・悪性腫瘍のマススクリーニング法としてその威力を発揮している。つまり生体内検査法では,従来から行なわれていたシンチグラムによる腫瘍の形態学的観察に加えて,最近では動態面からのアプローチとして,腫瘍とその周囲の血流状態をRI動態曲線の分析から推察し,腫瘍の質的診断に役立たせることも可能となりつつある。

 また生体外検査法ではラジオイムノアッセイ法の開発,普及により腫瘍特異性の血清蛋白や酵素あるいはホルモンの測定が可能となり,臨床生化学検査法の面からのアプローチにも大きな期待がよせられている。

CTスキャン 鈴木 正彦 , 高橋 康一
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 CT (Computed Tomography)は中枢神経系を中心とする頭部においては,すでにルティーン検査として繁用されており,機器の改良と相まって,胸腹部,骨盤腔内の疾患における診断上の意義も確立されつつある。骨盤腔内は臓器の生理的運動も少なく,CTのよい適応と考えられるが,生殖腺被曝などの問題もあり,他の領域以上にその適応に厳密さが要求されることも否定しえない1)

 したがって本稿では,CTの絶対的適応ともいえる悪性腫瘍の病態の把握,治療法の選択,治療効果判定,予後追跡などを中心に,CT応用の現況と将来の展望について述べることとしたい。

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 Pelvic Angiography (PAG)は1929年Dos Santosら1)による経腰椎大動脈造影によって,子宮外妊娠の診断に有力であるとの報告に始まる。その後,1948年Hertnett2)の前置胎盤への診断応用,さらに1941年Farinasら3,4)の,経股動脈造影による子宮筋腫と卵巣嚢腫の鑑別に応用された。1953年Seldinger5)によって逆行性股動脈造影法が開発され,BorellおよびFeruströmら5,7)は同法を妊娠および骨盤内腫瘍診断に応用した。

 PAG法には,種々の改良が積み重ねられ,次第に安全に行なわれるようになった。しかしながら種々の合併症や妊娠時には胎児への影響など,いくつかの問題点も持っている。

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 近代産科学の指向するimage診断は形態学的にその本態を追及して正しい治療へのアプローチに貢献することにある。

 従来から分娩時にX線診断法として利用されている方向としては,児体についての検索が不十分といわねばならず,分娩時に要求されるCPDなどについても,その解明については微々たるものである。

子宮卵管造影法 百瀬 和夫
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 子宮卵管造影法(HSG)は子宮,卵管,腹腔内に造影剤を注入し,X線撮影を行ない,子宮の位置,形,卵管の走向,疎通性の良否,腹腔内癒着の有無,卵巣の形態などを判読する方法である。

特集コメント

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 臨床医学のいかなる分野においても,最も基本的な視覚的診断手順の一つは,映像診断であろう。これは古くから現在に至るまで,また将来においても,その臨床的重要性の位置づけは不変であろうと思われる。

 産婦人科学の分野においてもその例外ではなく,映像診断は診断から正しい治療に至る基本である。

臨床メモ

Sinusoidal FHRパターン 貝原 学
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 Sinusoidal FHRパターン(正弦波様胎児心拍数パターン)とは,胎児心拍数図において,心拍数が振幅5〜10bpm,周期2〜3サイクルの変動を規則的にくりかえすサイン・カーブのごとき形をした心拍数曲線である。この波形は1970年に動物ではじめて観察されたが,その後重症な血液型(Rh)不適合妊娠1),胎児母体間輸血2)ならびに重症な胎児仮死3)などで児が死亡する直前に観察されるものとして注目をあびるようになった。

 Grayら4)は鎮痛剤のAlphapro—dineを母体に投与すると,40例のうち42.5%に本パターンが発生したが,約90分後には自然に消失し,娩出された児には全く異常は認められなかったと報告している。

トピックス

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 婦人の月経周期は一般には28日周期であり,予定月経の14日前に排卵があるということは,何げなく通常いわれてきている。しかし,多くの研究報告によると,正常婦人の月経周期の平均値も最大頻度も29.5日であるといわれ1〜4),この数値こそ月の満ちかけなどいわゆる月(moon)の周期の29.5日と全く同じであることは極めて興味ある事実である。著者はすでにこの間題についてトピックスでとりあげたこともある5)

 このような月の周期と婦人の月経周期との因果関係についてはもちろん不明であるが,月の満ちかけなどの自然現象の中で,潮や磁気,電界などの地球物理学現象を通して,長い人類の歴史の中で,神経内分泌学的影響を与え,今日みるごとき月経周期が月の周期と一致してしまったと推理することもできよう。

Febrile morbidityとFever index 田部井 徹
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 産婦人科領域における感染症は,術後感染症として発生することが多い。術後感染症の主なものには,創感染,子宮旁結合織炎,死腔炎,腹膜炎,腟断端部感染および尿路感染などがある。術後感染の存在は,発熱,局所症状および白血球数,CRP,赤沈などの検査所見から推定されるが,病巣からの病原菌が証明されれば確定的である。

 術後感染の予防あるいは治療の目的で各種の抗生物質が使用されている。しかし感染の有無あるいは抗生物質の予防効果を示す適切な指標がないために,抗生物質の有効性あるいは臨床効果などに関する研究はあまりない。

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 1980年3月発行の雑誌Pediatricsに,カナダおよびアメリカ小児科学会栄養委員会の母乳哺育推進に関する勧告が掲載されている。簡潔で要を得たものなので,翻訳して御紹介したい(原著"Encouraging breast-feeding"Pediatrics 65(3):657〜658,Mar.1980)。

Fetal Monitoring講座 基礎から臨床応用へ

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 胎児心拍数図と陣痛曲線の同時記録による胎児診断法が胎児予後改善に大きく貢献していることは今さらいうまでもないが,さらに数々の新しい胎児情報が,胎児心拍数図に含まれていることが次第に明らかにされている。胎児心拍数基線変動(FHR baseline variability,以下variabilityまたは細変動と略)は,以前からその重要性が指摘され,最近その解析が進むにつれて,さらに研究者ならびに臨床家の注目を集めてきた。

 胎児心拍数変動の成分には,胎児心拍数基線,細変動,deceleration (一過性徐脈),acceleration(一過性頻脈)があるが(表1),ここでは胎児心拍数基線や心拍数変動パターンによる診断は諸家の解説にゆずり,特に細変動について,その分類,評価,要因と病態を述べることとする。

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 子宮頸癌の好発年齢は40〜50歳で,35歳をこえると急激に増加するが,20歳未満では極めてまれであり,20歳未満老の子宮頸癌は,わが国においては10例1〜9)の報告があるだけである。私たちの教室では,ここに報告する例が初めてである。また日本産科婦人科学会子宮癌委員会が最近公表した成績11)でも,昭和41〜43年のわが国における子宮頸癌12,140例のなかには,20歳以下のものは1例もなかったという。そのかなりまれと思われる20歳未満の子宮頸癌の症例を,ここに報告する。

基本情報

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臨床婦人科産科
34巻11号 (1980年11月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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