臨床外科 12巻8号 (1957年8月)

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Ⅰ.緒言

 回盲部に発生する非特異性炎症腫瘍で,虫垂に起因するものは線維増殖性虫垂炎と呼ばれている.この名称は1914年Läwen1)が提唱したもので,彼は回盲部の非特異性炎症性腫瘍を3型に分類し,その第2型を広義の線維増殖性虫垂炎と第3型を狭義のそれとしていることは周知のことである.

 我が国に於ても既に1912年(明治44年)後藤2)氏は慢性単純炎症性腸狭塞(回盲部)の症例を,1915年(大正4年)塩田教授3)は盲腸癌と誤疹された本症と思われる虫垂炎の1例を報告しているが,Läwenが上述の提唱をしてから俄然一般に注目されるようになり,1928年(昭和3年)安藤4)氏が始めて線維増殖性虫垂炎の名の下に1例の詳細な報告を行い,同年石山5)氏も自験例の報告を行つた.

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はじめに

 近来全身麻酔法は急速に普及し吾々の所に於ても気管内閉鎖循環麻酔器を備え,之を使用して居るが,一般外科手術の大部分を占める腹部以下の麻酔として腰麻は 1)経済上 2)極めて簡単な手技によれる事 3)筋弛緩が容易に得られる等の点より現段階に於ては必要欠ぐ事の出来ないものである,しかるに腰麻の危険性に関しては,腰椎麻酔死も度々報告され又多くの人々により古くから穿刺部位・薬品の種類,量,副作用等その本態に関して色々と研究されておるが,未だ不明の点も又少くない.吾々も麻酔死に至らなかつたが,其の偶発症其の危険性には度々悩まされ又吾々が経験した偶発症を観察して見ると吾々の例に於ては,臨床上より次の二群に分ける事が出来た.

 1)麻酔波及が見る見る内に上昇を辿り肋間筋麻痺と老えられる様な呼吸困難を高度に訴え人工呼吸を長く行い漸く食い止めたもの

 2)軽い呼吸困難とも考えられる症状(胸がせついと言う訴え)だけで四肢冷感・チアノーゼ・血圧降下を認めるが麻酔波及は上昇して無く胸廓運動も何ら障碍を受けてないもの

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 整形外科領域に於ては所謂リウマチ性疾患及び神経痛並びに神経痛様疼痛を主症状とする諸種の疾患を取り扱う場合が多い.これらの疾患た対しては,勿論原因を究明し,根本治療を行うことは当然であるが,原因不明な疼痛に対しては,対称療法にようざるを得ない.このための薬剤としては各方面より研究され,現在迄多くの治療薬の発表を見ている.Vitamin B1が神経痛様疼痛に効果あることは,周知の通りであり,今度発売されたVitamin B1の新誘導体Thiamin propyl disulfide(アリナミン)も各方向に使用され有効なりとの文献を多数見るものである.我々も各種の整形外科的疾患に応用する機会を得たので報告する.

 アリナミンは経口投与により,腸管から速かに且つ大量に吸收され,アノイリナーゼの影響を受けず,生体内の貯溜時間も長い特性を有していると云われる.

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緒言

 化学療法剤の出現によつて各種炎症性疾患の治療成績は飛躍的に向上した.しかしその反面,最近に至りPcショック,耐性菌の出現,菌交代現象等新しい難問題が提起されて来た.我々は学問的には不備な点があつても操作が簡単であつて,日常臨床上実用的な感応錠を使用して,外科疾患に於ける耐性菌の出現,並びに抗生物質の使用上留意すべき2,3の成績を得たので,こゝに報告する.尚本調査は本院細菌検査室に依頼して適正な化学療法を行う目的を以て行つたもので,あくまで実地臨床上の検討に過ぎないことを附記する.

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緒言

 近年交通量の激増とともに交通事故による災害が著しく増加してきた.これにかんがみて,われわれは最近6ヵ年間の大阪市交通局従業員の労災患者について観察を行つた.

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Ⅰ緒言

 最近の外科手術分野の拡張は麻酔の進歩並に優秀なる抗菌性物質の発現と共にショックの予防並に治療の発達に負う所が大であり,しかしてショックの予防並に治療に対する補液の重要性は勿論であり,その中最も効果あるものは全血補液であり,その臨床的価値については既に議論の余地がない.輸血は単に失血症に対する療法のみに限定されず,広く各科領域に亘つて応用され,その速効的な効果と相俟つて近代医学の新分野を確立した.然し乍らその操作が稍々繁雑であり,又副作用,保存,運搬等の点で未だ最良の補液とは云い難い.若し全血液と同様の効果を有し副作用のない補液があるとすれば,我々は安心して手術が施行され,今後の医学の進歩発達に大いに副い得るものと信ずる.此の意味で当教室に於ては種々なる補液を開腹時に於て術前,術中及び術後に使用し肝機能の点よりその影響と比較検討を行つた.今回は特に血漿補液に主眼をおき検索を試みた.

 血漿補液は1862年Braducに依り創案され一時は種々なる障碍に遭遇して中断されたが,1907年Pikeに依り再びとり上げられ,その後大量生産が企図され,第二次世界大戦を契機としてその製造法に飛躍的進歩を遂げ大量生産が可能となり第一線に於て幾多貴重の人命を救うに役立つたのである.本邦に於ては1935年老川の研究があり,その後内藤が大量生産を始め,戦傷病者の治療に少なからず貢献した.

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序言

 麻酔及び手術時における血圧低下にたいして使用される薬剤は多種あり,それぞれ特徴をもつている.例えばephedrin,nor-adrenalin,vasoxyl,neo-synephrin,adrenalin等の昇圧剤の他,digi—talis,vita-campher等の強心剤,さらに輸血及び輸液がつかわれる.

 私はCarnigenを麻酔中に使用する機会を得たので,その使用経験についてこゝに報告する.

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 われわれは最近股ヘルニア嵌頓様症状を呈した巨大なる炎症性腫瘤と,鼡径ヘルニア嵌頓の内容が嚢腫であつた興味ある2症例を経験したので報告し,あわせて股ヘルニア及び鼡径ヘルニア嵌頓についていさゝか文献的考察を加えたいと思う.

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緒言

 股関節は肩関節に較べると外傷性脱臼の発生頻度は少ない(Krönlein 2%,Guret 12.09%.本名8.7%).それは寛骨臼縁に臼唇があつて関節腔を大とし骨頭の大略2/3を包んでいることや,腸骨結節から起り扇状に拡がつて関節嚢の前壁を包み大転子から転子間線に附着している強靱なY靱帯などが存在するためである.従つて,外傷性股関節脱臼の発生には常に大なる外力を必要とするものであるが,それは殆んど常に介達性で,殊に下肢をアームとする槓杆作用によるものである.即ち,強い外力に依つて股関節が生理的運動範囲以上に過度の運動を強要された際に,臼縁に大腿頸部が衝き当つて,之が槓杆支点となり,大腿骨幹が長力臂,骨頭が短力臂となつて関節嚢や円靱帯が破壊されて脱臼する.一度骨頭が臼外に出ると,尚継続する外力や,股関節部の筋肉の働きによつて更に強く転位して行く.但し,この際Y靱帯は大抵破壊からまぬがれて,骨頭の転位を或る時は抑制し或る時は一定の方向へ制約して定型的脱臼型を形成する.

 外傷性股関節脱臼を2大別し,骨頭がY靱帯の後方に脱臼したものを後方脱臼,前方に脱臼したものを前方脱臼とよんでいるが,前者は全脱臼の2/3以上,後者は約1/4の頻度である.その他にも上方,下方,中心性脱臼などがある.

腸管嚢腫様気腫の1例 菊地 喬
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 腸管嚢腫様気腫は1825年Meyer氏が初めて豚の小腸に小嚢胞のあるのを発見し,之に与えた名称で,人間の腸管に之と同様の嚢胞を観察し発表したのは1876年Bang氏を以て始めとする.爾来Creese氏は1951年まで世界の丈献から210例,Sherwin氏は1952年まで米国に於ける43例を報告しており,本邦に於ても紺田氏は昭和27年まで77例を報告している.余も最近本症の1例に遭遇したので文献的考察を加えて報告する.

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 急性化膿性骨髄炎は外科臨床上 日常屡々経験する重要な骨疾患であるが,その多くは長管状骨に見られ,短管状骨,短骨及び扁平骨に発生するものは比較的稀である.特に膝蓋骨々髄炎は極めて稀で本邦に於ける報告は僅かに今西,森友氏等の1例(昭和11年),星井氏の1例(昭和24年),高橋氏の2例(昭和25年)のみである.私達は最近その1例を経験したので茲に報告する.

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 1900年にReicherによつて独立疾患として発表せられ,本邦においては昭和7年(1932年)田平によつて始めて報告され,以後友田,榎本,藤野溝口と逐次報告が為されているので,現在では比較的稀有な疾患とは思われないが,私等も本症の1例を経験しその原因が如何なる程度に労働と関係するか興味ある症例で,又良好な手術結果を得たので追加報告する.

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緒言

 骨盤切除術(hindquater-amputation又はinterinnomino-abdominal operation又はHemipelvectomy)はBillroth(1891)が初めて之を行つたが術後数時間にしてショック死を遂げ,Girad(1895)が最初に成功したものでAriel(1949)によれば158例が蒐集されているに過ぎない.しかし最近に於ては麻酔及び化学療法の発達,ショックに就いての諸問題が解明されるにつれて骨盤切除の問題も種々論義され,特に大腿及び骨盤の悪性腫瘍に対して従来の姑息的療法より飛躍した根治的療法として認識されて来た様である.しかし本邦に於ては未だこの分野に於ける報告は少く僅か桑原,福江,片岡,柏木の諸氏による十数例が挙げられるに過ぎない.

 勿論之を行うにしてもまだ相当の危険率もあり又適応の如何,手術そのものゝ残酷性等種々の躊躇すべき点が残されているが,我々は適応と考えられる骨盤肉腫に骨盤切除術を行い良好な成果を得たので茲に報告する.

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緒論

 蛔虫の異所迷入は,身体の各部に亘る事が多数報告されているが,今西,松永1)の統計によれば虫垂及び腹腔内迷入は例数203例中夫々40例(20%),22例(10%)あり,その機転としては,腸管壁の炎症潰瘍,手術創等の脆弱部穿通或は逸脱が挙げられている.吾々は多数の蛔虫が虫垂に迷入遂に穿孔して瀰蔓性腹膜炎を惹起し,腹腔内に16条の生蛔虫が,遊泳し,且,蛔虫の腹腔内に現われたと同時に起きたと思われる高度の蕁麻疹をみた1例を経験したのでこゝに報告する.

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 先天性胆道閉塞症に20,000人乃至30,000人に1人あると云われているが,1891年にThomsonが報告したのが最初である.そして1928年にLaddがはじめて手術に成功している.その後しばしば手術例が報告されている.吾々も最近4例の手術例を経験した.

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 1935年Whippleが膵頭十二指腸切除術式を発表して以来各方面より検討改良され,今日欧米においては一般に広く普及し,その手術例も極めて多数に及んでいる.

 一方本邦においては漸く最近になつて本手術術式についての関心が急に高まり手術成功例も散見できるようになつた.しかし多くは膵頭癌,ファーテル氏乳頭部癌,胃癌の膵内浸潤,慢性硬化性膵炎等を対象としたもので,下部総輸胆管癌に本手術を施行した記録は少い.

頭蓋内畸形性混合腫瘍の1例 菊地 喬
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 頭蓋内畸形腫瘍は稀な疾患であるが,就中本症例の如く三胚葉構造を有する頭蓋内畸形性混合腫瘍は甚だ稀である.依つて文献的考察を加えて報告する.

基本情報

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臨床外科
12巻8号 (1957年8月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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