臨床泌尿器科 71巻9号 (2017年8月)

特集 尿路結石に対する外科的治療─Stone free 100%を目指して

企画にあたって 奴田原 紀久雄
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 Campbell-Walshの教科書では,腎結石に対する外科的治療のゴールを「最小限の合併症で最大限の結石除去」としている.一方,尿管結石においては「最小限の合併症で完全な結石除去」をゴールとしている.腎結石の場合,stone freeにならなくても腎機能を温存ないし改善することが可能な場合があり,尿管結石ではstone freeにならない限り閉塞はとれず,腎機能の改善が望めないという背景がある.もちろん腎結石でもstone freeになることが理想であるが,そのために合併症,特に敗血症が増すようであれば無謀との批判を受ける可能性がある.

 さて,さまざまな学問的知識の集積と,技術進歩,それに伴う手術手技の進歩が,ここ10〜20年の結石治療成績の向上を支えていることは明らかである.腎盂腎杯形状の理解は,奇しくも3Dプリンターの登場により術前シミュレーションを容易なものとし,術者個人の技術向上のみならず,診療チームの臨床能力の向上にも寄与している.感染症対策は結石がとれても腎機能が悪化していく原因の1つをどう取り除くかということに関係する.

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▶ポイント

・上部尿路結石症の内視鏡手術を安全に成功させるために,腎と周辺臓器の位置関係や腎血管および腎盂腎杯の解剖学的知識は必須である.

・結石の数や大きさだけなく,腎盂腎杯の形状も手術の難易度・治療成績に影響を与える因子である.

・術前の画像情報をもとにベストな治療方法を選択し,術中に起こりうる困難も予想して,その対策も準備しておくことが重要である.

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▶ポイント

・上部尿路結石内視鏡治療における予防的抗菌薬投与は全例で勧められ,術前尿培養や感染性合併症の危険因子などを勘案して投与期間を検討する.

・自然尿(膀胱尿)培養は必ずしも患側腎盂尿培養や結石培養の結果を反映するわけではない.

・感染性合併症は重篤化することもあるので,絶えずその可能性を念頭に置いて術前からの準備を怠らない.

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▶ポイント

・ESWLの成功には,「患者因子」「医療因子」「機器因子」が重要である.

・正しい適応・照準方法を習得することによって,ESWLの砕石率は飛躍的に向上する.

・尿路結石診療の本質は「再発予防」であり,外科的治療によるstone freeがゴールではないことを認識する必要がある.

r-URS 加藤 祐司 , 松谷 亮 , 坂 丈敏
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▶ポイント

・下部尿管結石に対するr-URSは,単回治療で90%以上のstone free rateを達成することが目標となる.

・r-URSにおける成功のためのポイントは,①適応症例を見極めること,②適した機器を選択すること,③尿管へのダメージを最小限にする内視鏡操作と効率的な砕石・抽石の方法を考えること,④合併症の回避方法を知ることである.

f-URS 松崎 純一
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▶ポイント

・内視鏡の所見が最優先であり,透視下操作に注意する.

・尿管アクセスシースの先端の位置が重要であり,径はなるべく細いもので,結石近くまで挿入できれば灌流,視野,摘出効率は良好である.

・残石確認は,内視鏡下と透視下で必ず行う.

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▶ポイント

・上部尿路結石治療においてPNLが担う役割は大きい.

・PNLは難治性上部尿路結石の結石消失を得るために欠かすことができない有用な治療法である.

Mini-percとMicro-perc 和田 耕一郎
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▶ポイント

・腎結石に対するPCNLは依然として重要な治療ツールの1つである.特に20mm以上の腎結石や,20mm以下でも下腎杯結石や解剖学的特性のある患者など適応は広い.

・PCNLの細径化が低侵襲性を実現し,Micro-percやMini-percが普及しつつある.主に出血量や痛み,在院日数に関してStandard PCNLより有利であると考えられる.

・細径化するほど低侵襲を実現していることにはなるが,使用できる砕石デバイスが限られるため,特に抽石に関して高い治療効果を実現することが求められる.

ECIRS 三浦 浩康
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▶ポイント

・ECIRSはTUL/PNL単独では治療が難しい症例に有用である.

・TULかPNLか治療に悩む症例ではTULから開始し,必要に応じECIRSにする.

・体位は主体となる操作によって決定,TUL主体の場合は砕石位に近い修正Valdiviaなどを,PNL主体の場合は背部を広く確保できるBartsなどを選択する.

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▶ポイント

・結石治療の3つの考え方は,complete stone free,no complication,high patient's QOLである.

・Technical skillsにおいてbasic surgical skillを学ぶ方法として,simulation-based ureteroscopy trainingが理想である.

・Non-technical skillsには,cognitive skills,social skills,personal resource factorsの3つがある.

専門医のための泌尿器科基本手術

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ポイント

・特に高齢者では周術期の合併症が多いため,術前の全身状態の総合的な評価を行ったうえで個々に適切な術式や治療法を選択する.

・男性の尿道抜去の際には,会陰部からのアプローチのタイミングと会陰部と腹部の双方向からの連携操作が重要である.

・最近では膀胱全摘除術にも術後回復強化策(enhanced recovery after surgery : ERAS®)が取り入れられつつある.

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ポイント

・膀胱全摘除術は,操作手順が多いので,術前のイメージトレーニングが重要である.

・患者の病期診断を把握し,子宮・腟・卵巣を合併摘除する必要があるかどうかを術前に十分に検討しておく.

・尿路変向術の種類により尿道温存,腹膜温存の有無が決まるので,尿路変向術も考慮して手術しなければならない.

学会印象記

「第112回AUA」印象記 稲元 輝生
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2017年5月12〜16日にボストンで開催された第112回米国泌尿器科学会議(AUA Annual Meeting 2017)に参加した.今年で112年の伝統を誇り,泌尿器科の専門会議として現在,世界最大の学会である.会場のBoston Convention and Exhibition Centerは約200万スクエアフィートの可変型スペースに82の会議室,4万スクエアフィートのグランドボールルームがある米国らしい大きさの会議場である.ローガン国際空港からのアクセスは抜群であるが,周辺はいわゆる新規開発エリアにあたり食事をする場所に大変困った.今年のEAUでも,多くの参加者から不満があったのがクロークサービスで,コート1枚,バッグ1点それぞれに課金されることである.横にいたドイツ人の医師は「今までに経験した最悪の会議だ」などと叫んでいて,これを聞いて小生は思わず同意して笑ってしまった.小生は幸い軽装であったのでクロークには世話にはならずにすんだ.会場内にはコーヒーの仮設の売り場があるほかには飲食できるスペースがなく,ここ数年でずいぶん派手さがなくなったように感じた.実際,毎年楽しみにしていたAUAのグランド・レセプションも今回はなくなっていて残念に感じた.

 この滞在中に大阪医科大学の仲間である上原博史先生と南幸一郎先生が留学でお世話になっているハーバード大学Division of Transplant SurgeryのチーフであるDr. Stefan Tullius教授のラボを見学させていただいた.Tullius教授は小生の教室の東治人教授がかつてボストン留学時代に研究をともに行った旧知の仲であることから,お知り合いになることができた.小生は移植に関しては門外漢ではあるが,この地で1954年12月23日に現在のBrigham and Women's Hospitalの前身であるPeter Bent Brigham Hospitalにおいて内科医Dr. John Merrill,形成外科医Dr. Joseph Murrayらによる世界初の生体腎移植が行われた話などをお聞きし,歴史を肌で感じることができた.これは一卵性双生児間の腎移植であったため,移植された腎臓は拒絶反応を起こさず,レシピエントは術後8年生存し,ドナーは術後56年後の2010年,79歳で亡くなったとのことである.ちなみにDr. Murrayは治療に関する臓器および細胞移植の研究により,1990年にDr. Edward Thomasとともにノーベル生理学・医学賞を受賞している.今回のAUAでは先ほどの南先生に加え,われわれの教室の高井朋聡先生(ハーバード大学の泌尿器科),小村和正先生と吉川勇希先生(Memorial Sloan Kettering Cancer Center)の米国組4名とゆっくりと話をすることができ,仲間たちの近況を知るには,本当によい機会であった.

「第112回AUA」印象記 長尾 一公
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第112回米国泌尿器科学会議(AUA Annual Meeting 2017)が,2017年5月12〜16日の5日間,ボストンのウォーターフロントにあるコンベンションセンターで開催されました.ボストンでのAUA開催は久々で,私も初めてボストンでのAUAを経験しました.会場の広さは,オーランドやサンディエゴの会場よりやや小さい印象でした.例年のこの時期のボストンの気温は10〜20℃程度との情報でしたので,多少の寒さは覚悟しておりましたが,学会期間中は曇りや小雨交じりの天気が多く,好天に恵まれたのは学会初日と最終日のみで,朝夕はコートが必要な寒さでした.また,アメリカに最初に入植したイギリス人が作った街であることを考えると当然のことかもしれませんが,ボストンの街並みがヨーロッパの街並みであることに驚きました.

 私が大阪医科大学の稲元輝生先生とAUA初日のポスター発表会場が空くのを待っていたところを慶應義塾大学の大家基嗣教授にお声をかけていただき,稲元先生と私が今年の臨床泌尿器科のAUA印象記の執筆を仰せつかりました.

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バックナンバーのご案内

次号予告

編集後記 近藤 幸尋
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 いよいよ本格的な夏を迎え,心踊らされている方も多いかと存じます.小職の教室でも今年は新人を7人迎えたため,教室の休み表が例年になく横に大きく広がっています.若手の先生方は,診療グループや病棟業務などに支障のない範囲で休んでもらっています.傾向としては,お子さんのいる家庭は7月末から8月中旬までに休むことが多く,若手は8月末から9月にかけて休むようです.それもどーんと休むようです.

 日本国においても,7月に「海の日」があり8月に休日がないことより,2014年に国民の祝日の1つとして8月11日が「山の日」に定められ,2016年に施行されており休みを推奨しているようです.というのも,祝日法第2条では「山に親しむ機会を得て,山の恩恵に感謝する」ことを趣旨としていて,山に関する特別な由来があるわけではないようです.このように「お盆休み」という祝日ではない慣例があるなかで,祝日が国の誘導で増えたわけです.確かに「お盆休みとくっつけて何連休」と宣伝している航空会社のセールスに利用価値はありそうです.

基本情報

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臨床泌尿器科
71巻9号 (2017年8月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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