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2017年5月12〜16日にボストンで開催された第112回米国泌尿器科学会議(AUA Annual Meeting 2017)に参加した.今年で112年の伝統を誇り,泌尿器科の専門会議として現在,世界最大の学会である.会場のBoston Convention and Exhibition Centerは約200万スクエアフィートの可変型スペースに82の会議室,4万スクエアフィートのグランドボールルームがある米国らしい大きさの会議場である.ローガン国際空港からのアクセスは抜群であるが,周辺はいわゆる新規開発エリアにあたり食事をする場所に大変困った.今年のEAUでも,多くの参加者から不満があったのがクロークサービスで,コート1枚,バッグ1点それぞれに課金されることである.横にいたドイツ人の医師は「今までに経験した最悪の会議だ」などと叫んでいて,これを聞いて小生は思わず同意して笑ってしまった.小生は幸い軽装であったのでクロークには世話にはならずにすんだ.会場内にはコーヒーの仮設の売り場があるほかには飲食できるスペースがなく,ここ数年でずいぶん派手さがなくなったように感じた.実際,毎年楽しみにしていたAUAのグランド・レセプションも今回はなくなっていて残念に感じた.
この滞在中に大阪医科大学の仲間である上原博史先生と南幸一郎先生が留学でお世話になっているハーバード大学Division of Transplant SurgeryのチーフであるDr. Stefan Tullius教授のラボを見学させていただいた.Tullius教授は小生の教室の東治人教授がかつてボストン留学時代に研究をともに行った旧知の仲であることから,お知り合いになることができた.小生は移植に関しては門外漢ではあるが,この地で1954年12月23日に現在のBrigham and Women's Hospitalの前身であるPeter Bent Brigham Hospitalにおいて内科医Dr. John Merrill,形成外科医Dr. Joseph Murrayらによる世界初の生体腎移植が行われた話などをお聞きし,歴史を肌で感じることができた.これは一卵性双生児間の腎移植であったため,移植された腎臓は拒絶反応を起こさず,レシピエントは術後8年生存し,ドナーは術後56年後の2010年,79歳で亡くなったとのことである.ちなみにDr. Murrayは治療に関する臓器および細胞移植の研究により,1990年にDr. Edward Thomasとともにノーベル生理学・医学賞を受賞している.今回のAUAでは先ほどの南先生に加え,われわれの教室の高井朋聡先生(ハーバード大学の泌尿器科),小村和正先生と吉川勇希先生(Memorial Sloan Kettering Cancer Center)の米国組4名とゆっくりと話をすることができ,仲間たちの近況を知るには,本当によい機会であった.
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