臨床泌尿器科 71巻1号 (2017年1月)

特集 免疫チェックポイント阻害薬って何?─基礎から理解するがん治療のトレンド

企画にあたって 大家 基嗣
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 われわれの前に急に現れた新規のがん治療薬,「免疫チェックポイント阻害薬」とは一体どんな治療薬なのでしょうか? 理解するためには,“免疫編集(immunoediting)”という概念を知る必要があります.がんは発生・進展する微小環境で,免疫編集を経て顕在化しています.免疫編集とは,生体に備わった免疫の活性化機構と抑制機構によって成立します.がんの排除には活性化機構が作動するのですが,同時に過剰な免疫反応を抑える抑制機構も作動します.この抑制機構の主体をなす分子であるCTLA-4とPD-1に対する抗体(免疫チェックポイント阻害薬)を使用して抑制を解除し,本来の活性化機構を取り戻そうとする治療です.つまり,免疫編集を経た状態から編集前の状態に戻す治療といえますが,それに用いる治療薬が免疫チェックポイント阻害薬というわけです.

 免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できるがんと期待できないがんも明らかになってきました.この過程で注目されてきたのがネオアンチゲンです.次世代シーケンサーの登場によって個々のがんにおける変異の多寡が明らかになり,変異の結果として細胞表面に提示されるがん抗原(ネオアンチゲン)が多いがんほど効果が期待できるという考え方です.

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▶ポイント

・がん細胞は自身の免疫原性を低下させるとともに,生体に備わっている多様な免疫抑制機構を用いることで免疫系からの攻撃を回避する.

・有効ながん免疫療法には,免疫抑制を克服したうえでがん抗原に対する免疫応答を賦活化する治療戦略が必要である.

・免疫チェックポイント阻害療法の奏効例を層別化するバイオマーカーの同定は喫緊の課題である.

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▶ポイント

・がん組織だけでなく正常組織にも発現が認められる共通抗原に対し,ネオアンチゲンはがん細胞の体細胞変異により発現した新規抗原であり,真にがん特異的な抗原といえる.

・免疫チェックポイント阻害療法においてがん反応性リンパ球の標的となっているのが,患者固有のネオアンチゲンであることが明らかとなってきた.

・今後はネオアンチゲンを標的とした新規免疫療法の開発および免疫チェックポイント阻害薬との併用も研究・開発が進むであろう.

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▶ポイント

・本療法はT細胞の抑制受容体である免疫チェックポイント分子を抗体でブロックして,T細胞の活性化を持続させることにより抗腫瘍免疫応答を発揮する.

・進行悪性黒色腫患者の一部に長期生存例がでてきており,ほかのがん種でも同様であるか報告が待たれる.

・自己免疫疾患様の免疫関連有害事象(irAE)が生じることがあり,これらの副作用に対応できるチーム医療の体制の整備が推奨される.

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▶ポイント

・免疫チェックポイント阻害薬の副作用の発現パターンと治療法は殺細胞性抗がん剤や分子標的薬と全く異なる.

・副作用の早期発見のためには,患者,家族,医療スタッフとの緊密なコミュニケーションの確立が必須である.

・副作用はすべての臓器に起こりうるため,事前に関係科との連携を確立しておく必要がある.

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▶ポイント

・免疫チェックポイント阻害薬による治療では,一過性の腫瘍増大後に効果が認められる症例や治療中止後も効果が持続する症例があり,腫瘍効果を予測する因子の同定が待たれる.

・自己免疫に関連する有害事象が生じることがあり,その判断と治療のための知識の習得が重要である.

・腎がんの治療では薬物による逐次療法が行われているが,免疫チェックポイント阻害薬をどのように使用するかは今後の症例の蓄積が必要である.

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▶ポイント

・2016年5月に米国FDAで抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブが転移性膀胱がん2nd lineを対象として承認された(本邦では未承認).これまで限られていた2nd line治療のブレイクスルーとなりうる.

・膀胱がん細胞のPD-L1の高発現は,組織グレードや病期進行と関連している.PD-1/L1シグナルの阻害をはじめとする免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待され,転移性のみならず,根治手術の対象症例や,筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)を治療ターゲットとした治験も進行している.

・アテゾリズマブの治療効果予測バイオマーカーとして,組織免疫染色によるPD-L1発現,がんゲノムアトラス(TCGA)によるサブタイプ,mutation loadが挙げられている.

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▶ポイント

・ホルモン療法は免疫系の制御を介して,前立腺や前立腺がん組織に対する腫瘍免疫応答を調製する可能性が報告されている.

・免疫チェックポイント阻害薬の各種の臨床試験の結果からは,前立腺がんにおける腫瘍免疫を増強する戦略は,去勢抵抗性前立腺がんでも,特に病状が進行していない段階でより効果的である可能性が示唆されている.

・免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果の増強を期待して,ホルモン療法や放射線療法などと併用する多くの臨床試験が計画・遂行中であり,今後の成果が期待される.

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要旨

 がん薬物療法を実施する際には,抗がん薬の薬理作用や薬物動態を掌握しなければならない.基本的な薬物動態学および薬力学の知識に加えて,各薬物における薬物動態,すなわち血中濃度の推移,吸収,分布,代謝,排泄などの特徴を理解することが求められる.さらに,相互作用や併用注意薬に関する考察を行ったうえで,薬剤の選択および用法用量を決定することになる.このような科学的根拠に基づいた薬物療法により,安全かつ効果的な治療を患者に提供すべきである.

専門医のための泌尿器科基本手術

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ポイント

・化学療法後の後腹膜リンパ節郭清は,泌尿器で扱う手術のなかでも,難易度が高い手術の1つである.

・後腹膜リンパ節郭清術の主要な合併症の1つに射精障害がある.若年,壮年男性にとってQOLを大きく損なうことになる.

・化学療法後であっても可能な限り神経温存を試みるが,大きな腫瘍や癒着が高度である場合には,神経温存に固執せず,根治性を優先すべきである.

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ポイント

・腹部の広範囲を操作するため,腸管や血管,その他の腹部臓器の解剖をよく理解しておく必要がある.

・腸管や血管との高度の癒着が疑われる場合は,事前に合同のカンファレンスをもち,協力要請を行っておく.

・腹部の主要な血管はすべて剝離して,浮かせた状態にする.その目的の途中で,神経温存や腰動静脈の処理も行う.

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 尿路感染症(UTI)による播種性血管内凝固症候群(DIC)に対する遺伝子組換えトロンボモジュリン(rTM)の有効性について検討した.rTM投与12例(rTM群)とrTM非投与16例(非rTM群)で,治療前後の血算や凝固系マーカーの変化を後ろ向きに検討した.非rTM群では白血球数,血小板数およびCRP値が,rTM群ではCRP値とFDP値が有意に改善していた.非rTM群と比較してrTM群では,DICスコアが有意に改善していた.以上より,rTMはUTIによるDIC症例に対して,rTMを投与しない従来の治療法よりも同等以上の効果があると思われた.

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 54歳女性.腹部超音波検査で右の高度水腎症を指摘されて来科.逆行性腎盂造影検査および腹部CT検査にて右尿管の狭窄と尿管内腫瘤を認めたため,右尿管腫瘍の診断にて右腎尿管全摘除術を施行した.尿管病変の病理組織診断結果はポリープ状尿管子宮内膜症であった.本疾患は非常にまれな良性疾患であり,ホルモン補充療法を行っている閉経後の女性で骨盤内臓器にポリープ状病変を認めた場合には,鑑別が必要な疾患と思われた.

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次号予告

編集後記 大家 基嗣
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 マニアックなクイズを1つ.「次のなかから,仲間外れはどれですか?─①全力少年,②閃光少女,③透明人間,④コンビニ人間」

 正解は④です.①〜③は楽曲のタイトルですが,④のみは楽曲のタイトルではなく,本のタイトルです.2016年下半期の芥川賞に輝いた村田沙耶香さんの受賞作です.主人公は大学時代からコンビニのバイトを始め,18年間定職に就かず,かといって結婚もせず,パートでコンビニ店員を続けています.マニュアル通りに完璧に仕事をこなし,明るく客に対応し,日々コンビニ食を食べ,夢のなかでもレジを打っている「コンビニ人間」の物語です.

基本情報

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臨床泌尿器科
71巻1号 (2017年1月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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