連載 医療・病院をめぐる文献ガイド・8
医事法について知るための文献
小西 知世
1
1明治大学法学部
pp.628-631
発行日 2016年8月1日
Published Date 2016/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210301
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■医事法領域の動向
「医事法? ああ,医療法ですね! 学生時代,関係法規で学びました.」─私が自己紹介をするたびに返ってくる回答である.残念ながら,この返事はちょっとズレている.医療法という返事は,おそらくは医療にかかわる法律という意味で理解してくれているのだろう.医事法とは,狭義では医学および医療に関する法のことをいうから,その限りで間違ってはいない.だが,「医療法」という名前の法律が実際に存在するため,普通,混乱を避けるために医療法という言葉をそのような形で使わない.では,関係法規はどこがズレているのだろうか.職種ごとに学ばなければならない関係法規の範囲は変わってくるが,衛生法規といわれる法令のカテゴリーがその中心的なものであることは今も昔も変わらない.衛生法規は,もちろん医事法に含まれる.しかし,医事法は衛生法規よりも射程が広い.例えば,インフォームド・コンセント.むろん医事法でとり上げられるテーマではあるが,衛生法規の中にこれを正面から規定する法令は存在しない.医療事故訴訟で用いられる法律は,主に民法や刑法である.これらは衛生法規に位置づけられる法律ではない.
では,今回の文献ガイドのテーマである医事法とは何か注).
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