Neurological Surgery 脳神経外科 19巻7号 (1991年7月)

Decade of the Brain 大本 堯史
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 未来学ということが言われ始めて久しい.これは,脳死や臓器移植がそうであるように,科学技術の急速な進歩がもたらした新しい学問の領域である.21世紀における科学の進歩と発展を予測し,それが人類に与える効果を集学的に吟味する学問領域は今後も大いに発展すべきであるし,またそうなるものと思われる.The last de—cadeは21世紀の医学への序奏であり,米国では大統領宣言により,Decade of theBrainとしての国民的合意も得られている.次世紀は脳の時代といわれており,進歩が期待されている脳の科学の序曲が既に奏でられ始めているのである.

 今年の第59回米国脳神経外科(AANS, Harvey Cushing)学会は,David L.Kelly,Jr.会長によりNew Orleansで開催された.Jazz発祥の街は昼から真夜中まで街中の至る所が酒とJazzに満ちているので,つい遊び心が顔を出してしまう場所である.ここは年中Jazz祭で盛り上った街であり,会場を一歩出ると体が律動的に反応してしまう街なのである.学会のprogramはJ Neurosurg 2月号に掲載されているので,概要は既にご存知の方も多いであろう.

脳腫瘍の組織診断アトラス

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 I.名称・発生部位・頻度 母斑症(phacomnatosis)の一つである結節性硬化症(tuberous sclerosis)では,中枢神経系の特徴的病変として,大脳皮質の結節(corrtical tuber)と脳室内に隆起した脳室上衣下結節(subependymal tuber)があり,一般に後者が上衣下巨細胞性星膠腫(subependymal giant cellastrocytoma,SGCA)と呼称されている脳腫瘍である13).しかし結節性硬化症を伴わないSGCAも稀ではない2,13,14).通常,SGCAは側脳室壁,特に側脳室と第三脳室をつなぐモンロー孔近傍に好発し,脳室内に向かって緩やかに増大するが,しばしばモンロー孔を閉塞し,水頭症をもたらす.結節性硬化症の頻度は人口10万人当たり3-4人で,家族性例は14-15%と孤発性例が大部分を占める9,16).SGCAの発生率は結節性硬化症患者の3.4%から17%と報告者によって差があるものの3,8),比較的稀な疾患といえる。

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I.はじめに

 1978年Backlundら1)の1例報告上次来,諸家によりCT誘導定位的血腫吸引術の有用性が報告されている2-6,8,13,14,16,17,19).しかしながら,その手術適応に関しては,なお議論の余地があると思われる7,18,24)

 われわれは軽症被殻出血例を2群に分け,CT誘導定位的血腫吸引群(以下吸引群)と保在的治療群(以下保存群)とし,両群の比較検討を行ったので報告する.

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I.はじめに

 頭蓋内圧亢進時に使用されるマンニトールは,その頭蓋内圧下降作用により,広く臨床に使用されている.しかしながら,数10年来の臨床使用にも拘わらず,その頭蓋内圧下降の作用機序10,12),最も有効な投与量,投与方法2,6-9,12)については未だ論議が残っている.この原因は,マンニトール投与後の,体内薬物動態とそれに伴う血漿浸透圧,電解質,そして頭蓋内圧との関係が明らかでない点にあると考えられる1).今回,われわれは,成猫で中程度の頭蓋内圧亢進状態を作成し,マンニトールの体内薬物動態を,2—compartment modelにて解析した.同時に,血漿浸透圧,電解質を測定し,経時的に変化する頭蓋内圧との関係を検索して,臨床に於けるマンニトールの至適投与方法について考察したので報告する.

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I.はじめに

 頭蓋内でmass lesionにより頭蓋内圧が上昇する場合,脳血流は局所的にもまた全体的にも減少すること,またこの減少がいわゆるautoregulationの下限より高い灌流圧で起こることが報告されている2,5,6,9).この現象に頭蓋内圧上昇とともに微小血管構築の障害が関与することが推測されている5,9).しかし,圧迫に伴う脳の変形により微小血管構築がいかに変化するかについては未だ明らかではない.

 私どもは,硬膜外金属球挿入によるネコ脳圧迫モデルを作製し,圧迫による脳組織の経時的変化について既に報告したが),今回は同モデルにおける脳循環動態と微小血管構築の変化について検討したので報告する.

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I.はじめに

 Systemic lupus erythematosus(SLE)は,免疫学的異常を背景に多臓器障害を起こす慢性炎症性疾患であり,3-20%の症例で脳血管障害を合併するとされている9).その中で,くも膜下出血の合併頻度は,剖検例で15.3-30%6,8),臨床例では0.6-2%4,5)とされる.しかしその多くは脳内出血に伴ったもので6),脳動脈瘤によるくも膜下出血として発症した例は少なく,われわれが渉猟し得た範囲では20例が報告されているにすぎない1-3,5,7,10,12,13,16-20,22,25,26).今回,われわれは,SLEに合併し,くも膜下出血で発症した脳動脈瘤症例3例の臨床像及びそのうち1例で得られた剖検所見について検討したので報告する.

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I.はじめに

 小児の脳血管障害の中でも脳血管閉塞病変はCTscanの普及にともない早期に診断されることが多くなってきた.しかし,成人と異なりその閉塞性疾患の原因は一様でなく,その病態もいまだ十分検討されていない.

 そこで,われわれは今まで経験した小児脳動脈閉塞性疾患(モヤモヤ病を除く)に関して,血管写を中心にその病態像を検討したので,若干の考察を加え報告する.

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I.はじめに

 転移性脳腫瘍のなかで肉腫の脳転移は極めて稀で1.4%と報告されている1)

 われわれは,小児の下肢原発横紋筋肉腫の全身転移例を経験したが,頭部においてその転移形式が極めて特異的と思われたので若干の文献的考察を加えて報告する.

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I.はじめに

 抗生物質を用いた感染症に対する治療法の発達した今日において,化膿性の頭蓋骨骨髄炎は急性,慢性にかかわらず稀な疾患であり,われわれの治療経験そのものも乏しくなりつつある.今回,著者らは前額部皮膚欠損を伴う広範な頭蓋骨骨髄炎の1症例を経験したが,様々な手術法を検討した結果,本例に対して橈側前腕皮弁(radial forearm flap)移植術9)を行い良好な結果を得た.本法に対する国内外の報告も少なく,しかも大変有用な手術治療法と考えられるので,症例を提示し,橈側前腕皮弁移植術について若干の文献的考察4,10)を加え報告する.

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I.はじめに

 破裂脳動脈瘤の術後の合併症として,不随意運動を呈した症例の報告は極めて稀であり,われわれが渉猟し得た限りには認められない.また,不随意運動自体においても,その責任病巣あるいは発現機序は不明な点も多くあり.確立された理論には到っていない.今回われわれは,左内頸動脈分岐部における破裂動脈瘤茎部クリッピング術施行後にアテトーゼ様の不随意運動を右趾に呈した1例を経験したので,その症例を紹介するとともに,その発現機序について,若干の文献的考察を試みたので報告する.

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I.はじめに

 細菌性脳動脈瘤は全動脈瘤の2.5%から4.5%といわれ稀なものである12,20).その原因についてはintravascu—lar originとextravascular originにわけられており,多くの症例は細菌性心内膜炎によるintravascular originである.著者らはHardy術後に化膿性髄膜炎を併発し,その後細菌性脳動脈瘤を発生した1例を経験した.そこで若干の文献的考察を加えてここに報告する.

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I.はじめに

 頭蓋内germ cell tumorの神経管外転移は現在までに数十例の報告があるが,血行性遠隔転移巣としては肺が最も多く16),肝転移の報告は少ない.1913年Goldzie—her3)の記載以来7例の報告があるが,いずれも予後は不良であり,進行期症例の治療は絶望的と言われる2,46-8)

 今回,われわれはトルコ鞍部に原発したgerm cell tu—morの肝転移例を経験した.本例に対し,cisplatinとetoposide(VP−16)による併用化学療法を行い完全寛解を得たので,文献的考察を加えて報告する.

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I.はじめに

 緩徐に進行する神経症候を有し,長期間に増大傾向を示し,被膜を伴う脳内血腫症例の報告は少なく,その発生原因,臨床病態に関する詳細はよく知られていない.今回,出血を繰り返し,多房性の厚い被膜の一部にcavernous hemangiomaを有する脳内血腫の1症例を経験したので文献的考察を加え報告する.

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I.はじめに

 大脳基底核部の動静脈奇形(arteriovenous Malforma—tion以下AVMと略す)は,若年者で症状を有しているものは予後が悪く,保存的に治療すると,その50%以上が死亡,あるいは後遺症を残すといわれている15).従って外科的治療が大脳基底核部AVMに対しても望まれるわけであるが,解剖学的位置関係からこの部のAVMの直達手術は,極めて困難とされてきた.しかし,近年の血管内手術手技の進歩と相俟って今まで直達手術が困難とされていた症例に対しても,積極的な外科手術が試みられ手術成績そのものも向上してきている.

 今回,われわれは左基底核部high flow,巨大AVMに対し,超選択的塞栓術後,直達手術を行い,術後著明な神経症状の改善をみた1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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I.はじめに

 pilocytic astrocytomaは小児の小脳半球,視神経に発生することが多く,時に脳幹,第III脳室周囲組織にも見られるが大脳半球に発生することは稀である.今回精神運動発作で発症した右側頭葉のpilocytic astrocytomaの1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

基本情報

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Neurological Surgery 脳神経外科
19巻7号 (1991年7月)
電子版ISSN:1882-1251 印刷版ISSN:0301-2603 医学書院

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