Neurological Surgery 脳神経外科 17巻10号 (1989年10月)

脳死 米増 祐吉
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 脳死についての日本における社会的関心は今やほとんど臓器移植と切り離せない状態であるが,脳神経外科医としての関心はどうなっているであろうか.又世間では脳神経外科医がどのように考えているのか理解されているであろうか.

 厚生省脳死研究班の判定基準の発表以来,臓器移植を目指して大学病院等の倫理委員会などで,竹内基準に更に条件を加えたり,臓器移植のsimulation大会が行われたり,脳死・脳蘇生研究会という,脳死が蘇生でもするかのような誤解を招きかねない名称の会ができたり,混乱の度を深めているようにみえる.脳死状態の心臓活動を長期間維持したり,ホルモン分泌活動の説明,手足が動いたという報告などは報告者の意図とは異なると思われるが,少くとも一般の人からは,あるいはマスコミから脳死が種々異論のある状態であるという印象を深める結果になっていることは否定できないであろう.

脳腫瘍の組織診断アトラス

(7)Meningeal Sarcoma(髄膜肉腫) 堤 啓
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 中枢神経系に発生する肉腫は,髄膜,血管,血管周囲結合組織,脈絡叢間質結合組織等を構成する間葉系細胞に由来し,髄膜と関係して発生したものは一括して髄膜肉腫meningeal sarcomaと呼ばれている.髄筋芽腫やリンパ・造血系の腫瘍は別に取扱われている.

 髄膜肉腫の細分類,命名に際しては,軟部組織や骨に発生した肉腫と同じ基準に則り,腫瘍として増生している細胞種に従って命名しなければならない3,6,21).低分化な腫瘍ではその構成細胞種の同定が困難なため,細胞の外形から紡錘形細胞肉腫spindle cell sarcomaや多形細胞肉腫polymorphic cell sarcomaと単純に命名されているが,より新しい検索法が開発されることにより,かかる細胞種の同定が可能になってこれらの病名が使用されなくなることが望まれる.

解剖を中心とした脳神経手術手技

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I.はじめに

 頭蓋外椎骨動脈狭窄の原因としては動脈硬化によるものが最も多いが,動脈硬化性病変以外の原因によるものも日常診療において遭遇することがある.われわれは動脈硬化性病変による6,7)あるいは動脈硬化性病変以外の原因による8-10)頸蓋外椎骨動脈狭窄に対する血行再建について報告した.本稿では動脈硬化性病変以外の原因すなわち機械的圧迫およびkinkingにより頭蓋外椎骨動脈狭窄をきたした症例にわれわれが行った血行再建をもとにその手術方法,手術に必要な解剖を中心に文献的考察を加え述べる.

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I.はじめに

 1982年,われわれは遷延性意識障害患者に対して意識の回復を目的に頸髄硬膜外刺激を試み著効を得たことを報告した7).その後,諸施設で追試が行われ,有効例がつぎつぎと報告5,12)されるようになってきた.しかし,いかなる部位の障害による遷延性意識障害が本法の適応になるかに関しては未だ議論のあるところである.

 今回,大脳,脳幹など種々の障害による遷延性意識障害患者に対して慢性的に脊髄硬膜外刺激(Spinal CordStimulation以下SCSと略記する)を加え,治療効果を検討したので報告するとともに,本法の適応に関してもわれわれの考えを述べる.

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I.はじめに

 近年本邦でも脳虚血発作の原因として頸部頸動脈病変の増加が指摘され,頸動脈分岐部の高度な狭窄性病変にもしばしば遭遇するようになり,この病変に対し積極的な外科的治療(carotid endarterectomy,以下CEA)が行われるようになってきた.しかし,CEAは機能的な手術の要素を多分に有しているにもかかわらず,頸動脈の遮断や内膜剥離等に関し安全性が充分に確立された外科的治療法に至っていないのが現状かと考える.

 著者らは,CEAを安全かつ確実に行うため,全例にシャントシステムを使用し,手術中に頸動脈血流量の検索,stump pressureの測定,体性感覚誘発電位の経時的な測定を行っている.本稿ではこれらの術中モニタリングによる脳循環動態および脳機能について検討したので報告する.

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I.はじめに

 難治性複雑部分発作(いわゆる側頭葉てんかん)の手術に関する報告1-7,9)は多く,しかも手術成績が比較的良好なことより,近年わが国でも注目されるようになった.しかし,手術後も発作が消失せず再手術が行われた症例に関する報告はこれまでにない.われわれは,Mon—treal Neurological Institute(MNI)での脳神経外科において,複雑部分発作の診断で手術及び再手術を受けた症例を分析し,興味ある結果が得られたので報告する,

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I.はじめに

 定位脳手術はCT用定位脳手術装置の開発14,18),およびコンピューターの発達2)により精度が増し,適応が拡大している.高血圧性脳内血腫の定位的除去術は安全で,侵襲の少ない優れた手術法である.しかしながら,出血発作早期における硬い凝血の除去法については未解決の課題である.この問題を解決する目的でAqua-stream and Aspirator(AS & A)9)の嘴管を定位脳手術用に改良・工夫したStereotactic Aqua-stream and Aspirator(SAS & A)を開発した10).これは発症後24時間以降の急性期における硬い凝血を細い高圧の噴射水により粉砕し,血腫内容の80-98%を吸引除去できる優れた手術装置である.新しいSAS & Aの機構を紹介し,臨床治験を報告する.

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I.はじめに

 脳組織に対する放射線の影響を検討した報告の多くは,放射線壊死や大線量照射に関するものであり3,16),脳循環代謝を長期間にわたって評価した報告2)は未だ少数である.

 今回,1回180-200cGyで週に5回の照射法の影響を評価するために,放射線化学療法後の局所脳循環および酸素・糖代謝を経時的にpositronemission tomography(PET)で定量解析したので報告する.

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I.はじめに

 多発性脊髄腫瘍の発生頻度は少なく全脊髄腫瘍の1.2%−9.5%との報告がある1,2,4,8)がvon Reckling—hausen氏病を伴うものが,その約半数を占める8,13)

 われわれが過去5年間に経験した脊髄腫瘍は31例であり,そのうち神経鞘腫は11例であったが,その中で3例は多発性で,いずれもvon Recklinghausen氏病を伴っていなかった.これら3症例につき臨床症状,神経放射線学的所見を報告し,多発性脊髄腫瘍に関する文献的考察を加えた.

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I.はじめに

 脳嚢虫症は,有鉤条虫の幼虫である有鉤嚢尾虫の頭蓋内寄生によるもので,本邦では稀な疾患である.今回われわれは,脳底槽に多房性の嚢胞を形成した脳嚢虫症の1例を経験したので,そのCT所見,MRI所見等を示すとともに,若干文献的考察を加え報告する.

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I.はじめに

 子宮内の胎児は羊水という聖域内に存在し,従来は妊娠20週を過ぎてようやく胎児心音の聴診によって胎児の生存をうかがい知ることができた.しかし近年の超音波診断技術はわれわれに多くの胎児情報をもたらすようになった.なかでも胎児の形態的異常については,新生児早期からの治療の必要性あるいは胎児期からの治療の可能性が求められるようになった.脳神経外科領域においてもこれらの異常を胎生期に予め知り対策,治療態勢を整えて出産にのぞむことにより,可及的早期に治療を行い神経脱落症状の進行阻止と合併症発生を防止できるものと考えられる.しかしこれら胎児奇形への対応は未だ完全に一致した見解はなく,関連する産婦人科と新生児科においても課題が数多い現状である.私たちは最近出生前胎児に中枢神経系奇形が診断された7症例を経験した.これらの症例の出生前診断と出生後の追加診断を検討し,出生後直ちに外科的処置が必要とされる水頭症に対する私たちの対応と若干の知見を報告する.

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I.はじめに

 閉鎖性血管外傷のうちで椎骨動脈損傷は非常に稀なものである.一般的に,閉鎖性椎骨動脈損傷では内膜剥離,intramural hemorrhageなどによる血管閉塞,動脈瘤形成,動静脈痩形成が多く11),血管断裂を呈した症例は少なくわずか14例が報告されているに過ぎない.そのうち,死亡前に診断のついたものは2例のみであった6,7)

 われわれは,閉鎖性外傷によって第6,第7頸椎骨折と同部位の椎骨動脈が断裂し,頸部の皮下血腫を形成した症例を経験した.対側椎骨動脈の血行が良好であったために断裂部を結紮手術することによって根治しえたので報告する.

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I.はじめに

 Fibromuscular dysplasia(以下FMD)はLeadbetter12)が腎動脈において初めて記載し,その後腹腔動脈,腸間膜動脈,頭蓋外内頸動脈,頭蓋内動脈にも同様の病変が存在することが知られている.われわれは今回"もやもや"病様症状にて発症し,血管造影にて前大脳動脈と頭蓋外内頸動脈に本症を疑わせる所見を認めた症例について報告する.

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I.はじめに

 脊髄髄内腫瘍に脊髄空洞が合併する割合は25-58%で脊髄空洞に脊髄腫瘍を伴う割合は8-16%とされているが1),脳腫瘍と脊髄空洞の合併の報告は少ない.今回われわれは天膜部髄膜腫に伴った無症候性脊髄空洞の1例を経験したので,脳腫瘍に合併する脊髄空洞という観点に的を絞り,その発生機序と脊髄空洞症の分類上に占める位置づけについて考察する.

報告記

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 本年6月1日韓国ソウル市でTHE FIRSTJAPANESE AND KOREAN JOlNT CONFERENCEON SURGERY FOR CEREBRAL STROKEが行なわれました.本会は,日本と韓国の脳神経外科医が一堂に会し,Scientific Meetingを行なった最初の会合と思われます.本会の設立は1987年5月脳卒中の外科国際シンポジウムが仙台で行なわれ約40名の韓国脳神経外科医が参加され,その際に,日本脳神経財団が韓日神経外科友好昼食会を主催したことに端を発します.無論,長年に渡る関係諸先輩の努力により両国の交流が種々の学会,研究会等で多くなり,それにつれ国際会議の開催の機運が盛り上がってきておりました中,非常に時を得た会議であったと思います.

基本情報

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Neurological Surgery 脳神経外科
17巻10号 (1989年10月)
電子版ISSN:1882-1251 印刷版ISSN:0301-2603 医学書院

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