作業療法 37巻4号 (2018年8月)

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要旨:本研究は,脳損傷者の就労支援における作業療法士の役割について,就労支援を1年以上経験している作業療法士10名を対象に,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて質的分析を実施した.逐語録の分析結果から17概念を生成し,そのうちの13概念から5個のサブカテゴリーを経て,「就労支援に関わる自覚」,「就労のための準備」,「就労定着へ関わる」の3つのカテゴリーを生成し,支援領域と支援の形成プロセスを作成した.作業療法士は,職業準備性支援を進めていく中で,当事者の就労定着に必要な要因を模索すると同時に,職業リハビリテーション専門職業人との連携を図ることで,就労定着へ関わっていることが明らかになった.

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要旨:認知症高齢者35名を対象に心拍変動解析による自律神経活動測定値でBPSDが把握し得るか,またBPSD発現時の自律神経活動特徴を検討した.BPSDをNeuropsychiatric Inventory(NPI),自律神経はTAS9VIEWで計測しNPIの中央値で2群に分け自律神経活動測定値を比較後,ROC曲線を作成し曲線下面積でNPIの高低値を判別できるか確認した.次にLow Frequency(LF)/High Frequency(HF)で2群に分けNPI項目得点を比較した結果,Total power,HF,LFでBPSDと関連を認め,副交感神経優位群のNPI合計得点,無関心,異常行動が有意に高かった.BPSDは自律神経活動測定値により把握可能で,発現時は副交感神経活動にも着目する必要性が示された.

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要旨:本邦では,Trail Making Test(以下,TMT)の用紙を縦で行う方法と横にして行う方法がある.本研究の目的は,TMTの2つの測定方法間における測定誤差の種類とその程度を明らかにすることとした.高齢者36名を対象に,TMTの用紙を縦にする方法と横にする方法について測定間隔を90分あけて1回ずつ測定した.2つの方法の測定値に対し,Bland-Altman分析を実施した結果,TMT part Aでは加算誤差と比例誤差の両方が認められ,TMT part Bでは加算誤差のみ認められた.本研究の結果から,TMTの2つの方法間には系統誤差が存在し,その測定誤差も大きいため,どちらの方法で実施したかの確認とカルテへの記載が必要であることが明らかとなった.

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要旨:日本の作業療法領域におけるグラウンデッド・セオリー・アプローチ(以下,GTA)による研究の現状と課題を文献検索で検討した.使用されているGTAの種類の調査,内容分析による研究目的の分類,Consolidated Criteria for Reporting Qualitative Research(COREQ)を使用した報告内容の分析を行った.2001年から2016年にかけて33文献が検索され,GTAの種類は,修正版が21件と最も多かった.研究目的は8カテゴリーに分類され,クライエントやその周囲の人の思い・経験に焦点を当てたものや,家族や他職種との社会的相互作用が挙げられた.報告内容の分析から,研究結果の信憑性や正確性に関わる複数の記載不足が,研究の質を高めるうえでの課題であった.

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要旨:本研究の目的は,統合失調症長期入院患者の認知機能障害を,外来(デイケア)患者との比較によって明らかにすることである.入院群(n=33)は外来群(n=30)より,年齢,累積入院期間,服薬量,簡易版陽性・陰性症状評価尺度(Brief PANSS)の妄想が有意に高く,機能の全体的評定尺度(GAF)と統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版(BACS)の言語性記憶,ワーキングメモリ,運動機能,注意と処理速度,遂行機能,総合点が有意に低かった.入院群の認知機能障害には,長期入院や慢性経過を背景とする全般的な心理社会的機能の低下や抗精神病薬服用量などが,関連している可能性が推測された.

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要旨:外出は社会参加としての役割を果たす重要な作業であるが,発達障害児と家族は外出を満足に行えていない現状がある.そこで,本研究では外出時に抱えている困りごとや必要としている支援を具体的に把握するための質問紙開発に向け,質問紙の採用項目を決定することを目的とした調査を実施した.研究Ⅰでは,発達障害児の養育者9名に対し半構成的インタビューを行い,KJ法にて分析した結果107項目を生成した.研究Ⅱでは,発達障害児の養育者108名に対しDelphi法に基づき各項目の重要度を問う3回のアンケート調査を実施し,その結果95項目を質問紙項目として採用した.今後は回答尺度や使用方法の検討を進め,質問紙開発を目指す.

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要旨:本研究の目的は,集中治療室(以下,ICU)に関連した作業療法の現状をシステマティック・レビューにて明らかにすることである.MEDLINEや医学中央雑誌など6つのデータベースとハンドサーチから,ICUの作業療法に関連したランダム化比較試験を実施している論文を抽出した結果,海外26論文から3論文が抽出された.対象は,ICU入室中2論文,ICU退室後1論文であった.アウトカムは,人工呼吸器管理日数やADL,せん妄,認知機能,握力などで評価され,作業療法の専門性が発揮された実践内容や介入効果が示されているものもあった.今後は,本領域における作業療法の報告数の増加や有用性の検証が課題である.

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要旨:筆者らは,巡回型学校作業療法の方法を検討し実践を重ねてきた.本稿では事例を通し,その内容を報告する.事例は9歳の女児で,友達や先生とうまく行かず,相談室にてソーシャルワーカーと1日を過ごしていた.作業療法士は,ADOC for Schoolを通して教員と保護者が届けたい教育(友達との交流)の実現でつながる協働関係を作り,この実現に向け必要な作業遂行上の情報を提供し,支援方法は教員と保護者に考えてもらった.そして,どういう支援があればできるのかという表現方法でGoal Attainment Scaleを作成し,段階的な作業可能化を促しながら保護者,学校関係者,本人の主体性を引き出した.

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要旨:脳幹出血により右片麻痺,四肢と体幹に運動失調のある重度要介護者に対し,訪問作業療法を実施した.当初はADLにほぼ全介助を要したが,介入10ヵ月後,起居動作が自立し徐々にADLの改善が見られた.12ヵ月後,排泄動作を立ち上がって移乗する方法から座位横移動に変更し,17ヵ月後に通所リハビリテーション,20ヵ月後に安全のためポータブルトイレが動かないよう足部4点に滑り止め素材を貼るなどの環境調整をした.さらに訪問介護と連携し,22ヵ月後には排泄動作が自立した.訪問作業療法は重度要介護者の身体機能,ADL動作,生活環境を評価して多職種連携を行い,生活場面に直接介入し生活行為向上のため在宅生活を支援できることが示された.

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要旨:再生医療の治験を受けて5ヵ月が経過しても重度上肢麻痺を呈した慢性期脳卒中患者に,装具療法と電気刺激療法を併用した課題指向型アプローチを22週間(1日1時間,週3回)実施した.結果,対象者のFugl-Meyer Assessment, Motor Activity LogのAmount of useが,過去の研究で示された慢性期のMinimal Clinically Important Differenceを超えて変化した.先行研究では,再生医療による慢性期脳卒中患者における上肢機能への大きな効果は,実施後3ヵ月程度と報告されている.よって,本症例においては,多角的な練習が上肢機能を改善させた可能性がある.

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要旨:発症前より活動性と体力が低下していた軽度急性期脳出血を有する個人クライアント(以下,CL)に対し,作業療法開始日から作業療法介入プロセスモデルに基づいた作業中心の実践を展開した.作業療法初回時にCL中心の遂行文脈を確立し,その後COPMとAMPSを対比させながら介入計画を導き,4回目から介入した結果,AMPSのプロセスロジットが0.4から0.7ロジットに改善した.さらに,「退院後に自宅で散歩する」という退院後に必要な作業の可能化が達成され,CLの主観的評価も高まった.以上より,脳血管障害由来の障害が軽度なCLに対して発症直後から作業中心の実践を行うことは,退院後に必要な作業の可能化を図る有益な方法のひとつであると考える.

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要旨:注意障害と弛緩性上肢麻痺を呈する患者に対し,上着の袖通しアプローチである下垂法と手繰り法を比較して介入した.結果,両アプローチともに平均袖通し時間が短縮したが,手繰り法よりも下垂法の方が有意に短時間であった(p<0.01).これは,手繰り法よりも下垂法の方が袖口の探索がしやすかったこと,上肢の固定性が得られやすかったことが影響していたと考えられた.今後,作業療法士は症例の状態に合わせて下垂法,手繰り法など複数の袖通し方法を準備し,動作の特性や違いを考慮して指導していく必要がある.

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要旨:麻痺手の機能改善に比べて,実生活での使用頻度の改善を認めなかった軽度片麻痺上肢に対して修正CI療法を実施した.事例は50歳代の男性,右片麻痺である.介入3週間で上肢機能は良好に回復してきたが,生活での上肢の使用頻度は改善しなかった.そのため,上肢用作業選択意思決定支援ソフトを用いて目標設定を行い,修正CI療法による介入を行った.結果,Fugl-Meyer Assessment,簡易上肢機能検査,Motor Activity Logが改善し,目標設定した多くの項目が麻痺手を利用して達成された.さらに,退院後も継続して上肢機能の改善が認められた.

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要旨:脳卒中患者183名を対象として,発症からの期間別における認知行動観察評価表(Cognitive Behavioral Rating Scale;以下,CBRS)とMini-Mental State Examination(以下,MMSE)との関連を分析した.CBRSを独立変数,MMSEを従属変数とした単回帰分析の結果,対象者全体の決定係数はR2=0.53(p<0.001)であった.発症から30日以内群の決定係数はR2=0.49(p<0.001),発症から31日以上群の決定係数はR2=0.54(p<0.001)であった.CBRSは,発症から30日以内の場合より,発症から31日以上経過した方が,高い精度でMMSEを予測できる可能性が示唆された.

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■欧文目次

基本情報

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作業療法
37巻4号 (2018年8月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

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