作業療法 37巻1号 (2018年2月)

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要旨:日本の作業療法において重要な意味を持つフランス・イギリスの精神科作業療法の現在を紹介し,2ヵ国との対比を通して,日本の作業療法の現状の課題を考察した.フランスでは治療の継続性を主目的とした地域医療セクター制を,イギリスでは国営医療サービス事業を中心に地域医療が展開され,作業療法士が施設や形態にとらわれず柔軟に活動していた.両国の作業療法では,臨床活動・研究・教育いずれの領域においても,臨床的視点に重点が置かれ,経験をevidence based medicineのために蓄積しようとする意識が非常に高い.作業療法の実践の場に軸足を置いた研究や臨床の姿勢は,日本の精神科作業療法にとって,改めて参照すべき重要な点である.

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要旨:これまでに「参加」の評価法に関して,日本における文献研究の報告は見られない.今回,対象者の「参加」に関して使用されている評価法と,その特徴を明らかにするため文献研究を行った.加えて,主な評価法についてICF「活動・参加」の分類との対応を検討するとともに,信頼性と妥当性について批評的に検討した.結果,27の評価法が見出され,使用頻度上位6つの評価法はOSAⅡ,自作,TMIG,SF-36v2,MOHOST,ICFであった.本研究により「参加」の評価法の種類,ならびに特徴と問題点を見出すことができた.本研究の意義は,「参加」に関する評価法選択における情報を提供する点である.

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要旨:本研究の目的は在宅生活を送るCOPD患者の社会生活状況と主観的な生活認識を明らかにし,その関連を検討することである.社会生活状況と生活認識の評価には,Frenchay Activities Index(以下,FAI)と作業質問紙(以下,OQ)を用いた.FAI得点とOQ得点の相関から二側面の関連を検討し,FAI得点は同年代健常者と変わらない結果だった.一方,仕事・遊び・休息と認識された活動は,否定的で不満足な認識であった.FAIとOQの得点には,正の相関rs=0.39(p<0.05)が確認され,特に生活で高い興味を有する人ほど社会生活状況が充実していることが予測された.COPD患者の生活の困難さは生活の遂行状況よりも否定的な認識にあることが示唆された.

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要旨:本研究の目的は,運動機能障害がある子どもの母親が外出時に抱える問題とその解決のプロセスを探索し,必要としている支援について検討することである.運動機能障害がある子どもの母親15名に半構造化インタビューを実施し質的解析を行った.その結果,母親は運動機能障害がある子どもを連れて外出することへの身体的・心理的な負担を感じ,心理的な自己解決や子ども同伴での外出を最小限にするなど,様々な方法で問題の解決を図っていることがわかった.また自己解決が困難な問題に対する支援として,バリアフリー環境の整備と充実したレスパイトサービスの提供を必要としていることが示された.これらは今後,作業療法士が貢献すべき課題であると考える.

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要旨:本研究の目的は,半側無視(以下,UN)に対する机上検査とCatherine Bergego Scale(以下,CBS)による行動評価の関連性,そして両者間でUNの乖離が起こる要因を検討しCBSの臨床的意義を再検討することである.脳卒中右半球損傷患者44名に机上検査と行動評価を実施し,UNにおける両者の関連性を後方視的に調査した結果,29.5%の対象者で机上検査と行動評価の間でUNの乖離がみられた.UNの乖離がみられた群では,ADLで自己身体空間や遠位空間のUNが目立っていた.さらに乖離の要因として無視空間の違い,認知機能によるUNの代償可能性が考えられ,UNに対しては机上検査だけでなくCBSによるADLでの行動評価を並行して実施する必要がある.

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要旨:研究の目的は,ペアレント・トレーニングの効果について,母親の子どもに対する認識の変化を様々なチェックリストによって検証することである.対象は,ペアレント・トレーニングに参加した15名の母親であった.その結果,COPMにおいて,全ての事例で子どもの標的行動に対する満足度が向上していた.要因として,子どもの行動が変化したこと,母親の養育に関する認識が変化したこと,子どもの問題行動に対する母親のストレスが減少したことが影響したと考える.また,これらの変化は,討議場面における記録を用いた振り返りの影響と考えられる.

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要旨:当院地域包括ケア病棟におけるテープ付き紙おむつの日中使用の因子と,ADL,転帰先への影響を調査した.入棟時の属性,身体拘束,FIM,Vitality Index,転倒危険度スコア,Rapid Dementia Screening Test,Short Physical Performance Battery(以下,SPPB)を調査した.テープ付き紙おむつの日中使用はFIM,SPPB,身体拘束が有意に影響しており,使用群は退院時FIMが低く,自宅退院が少なかった.身体拘束はテープ付き紙おむつの日中使用に影響する因子と考えられ,身体拘束を軽減する取り組みが必要と示唆された.

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要旨:今回,筆者は家族に対する心労から,うつ病を呈した主婦の事例に関わる機会を得た.本介入では,うつ病の心理教育とセルフモニタリングシートの導入により,事例の病識の乏しさにアプローチし,また外泊訓練時の家事体験を通して,主婦役割の再獲得に向けて介入した.さらに,うつ病の再発防止に向けてクライシスプランを作成し,また近隣住民への対応について個別SSTを用いて練習を繰り返すなど,事例とともに検討を重ねた.この結果,事例の家庭復帰に繋げることができた.

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要旨:特別支援学校の教員は作業療法士(以下,OT)に,生徒の指導について日常的に相談できる状況を求めている.本研究では,OTの技術を特別支援教育に効果的に反映させる方法として,OTと6名の教員が,月に1回,合計6回の事例検討会と4回の講義を行い,教員が生徒指導の方向性を見出したプロセスを検討した.その結果,教員がOTのスーパーバイズのもとで生徒指導の方向性を見出すことができた事例が6例中3例あり,それらは生徒の評価,問題点の抽出,目標の設定,解決方法の提案のプロセスを確認でき,解決方法が見出せた事例であった.また教員からの評価は,生徒への対応が改善した,教員のできる介入が増えたことが挙げられた.

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要旨:高次脳機能障害の中で記憶障害は頻回に出現し,認知機能回復と代償手段の習得が治療の目標となる.病院や施設という構造化された環境では代償手段としてのメモリーノート(以下,MN)の使用が可能となっても,自宅退院後には使用しなくなり,社会生活に困難を示すことも少なくない.今回,前脳基底部健忘症例に対してMNの社会生活への汎化を目指し,誤りなし学習と試行錯誤学習を目的別に導入し復職に至った経験をした.MNや補助具の扱い方を学習する際や携帯の習慣化を促す段階,つまり補助具利用開始時は誤りなし学習による介入が,さらに障害への気づきを高めMNを生活・就労へ汎化させるためには試行錯誤学習による介入が有効と示唆された.

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要旨:回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中後上肢麻痺を呈した対象者に対し,病棟実施型Constraint-induced movement therapy(以下,CI療法)を看護師と分業して実施したので,結果を報告する.当院の病棟実施型CI療法の適応を満たした6名の亜急性期片麻痺患者に対して,1日40分の病棟実施型CI療法を10週間毎日行った.上肢機能評価は,Fugl-Meyer Assessment(以下,FMA),Motor Activity Log(以下,MAL)を介入前後に採取した.結果,FMAとMALは,介入前後にかけて有意な変化を認めた.病棟実施型CI療法は有用なアプローチである可能性がある.

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要旨:MP関節伸展位拘縮の主因は側副靭帯の短縮と言われている.我々はスプリント素材で側副靭帯を牽引できる回転型動的牽引スプリントを考案し用いてきたが,従来装具の問題点改善のため,脱着が容易な人工筋(PAM)を用いた新しい屈曲型動的牽引スプリント(以下,DTF)を考案した.今回,拘縮解離術後の患者2名に術後翌日からDTFを使用し,術中可動域を術後8週時にも維持できた.DTFは,拘縮解離術後の患者が自主的管理,訓練機器(CPM)のみ使用,可動域練習のみ実施の場合と比較して,可動域の改善がほぼ同様もしくは上回った上に,可動域改善までの期間も短縮した.DTFは,術後早期に可動域改善を図る有用なスプリントの一つであることが示唆された.

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要旨:我々は3軸加速度計の特性に着目し,更衣動作の経時的運動特性としての姿勢制御を測定することを試みている.今回,更衣動作において上部体幹と下部体幹に貼付した3軸加速度計から身体的特徴を検出し,評価指標として有用であるかを検討した.対象者は,安定した座面と片麻痺を想定した不安定座面にて,同一手順で更衣動作を実施した結果,一連の更衣動作における体幹の立ち直り反応の出現と,更衣動作の健常パターンと片麻痺想定のパターンの違いが検出できた.以上より,更衣動作における身体動作戦略の違いを検出することが可能であり,体幹姿勢制御のパターンも推察でき,体幹機能の側面からみた更衣動作評価は有用であることが示された.

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■欧文目次

基本情報

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作業療法
37巻1号 (2018年2月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

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