作業療法 34巻5号 (2015年10月)

  • 文献概要を表示

要旨:実用的な上衣の着衣には,動作の可否だけでなく,着衣に要する時間も関わる.本研究の目的は動画撮影した健常成人の上衣着衣の所要時間の測定を行い,その検者間・検者内信頼性を明らかにすることである.着衣の動画は,健常成人22名を対象に,前開きシャツの着衣を撮影した.所要時間の測定は,検者3名がその動画をみて計測した.分析は,Intraclass Correlation Coefficient(以下,ICC),Bland Altman分析を用いた.検者間・検者内のICCは0.90以上であった.Bland Altman分析では,系統誤差は認めなかった.これらのことから着衣の所要時間測定は,良好な検者間・検者内信頼性がある.

  • 文献概要を表示

要旨:軽度認知症者を対象とした単語記憶課題において単語の意味や定義を提示する概念的符号化の有効性が報告されている.しかし,これらは机上の研究であり,日常生活場面で必要な記憶に関して,概念的符号化の有効性を検討した研究は少ない.そこで本研究は,日常生活場面におけるものと場所の記憶時に概念的符号化が有効であるかを検討した.健常若年者60名を,視覚と聴覚を用いた知覚的入力を行う群,文字記述で入力を行う群,意味や定義などの概念的要素を付与し,ものと場所の文脈付けを行う群の3群に分け,記憶に対する効果を検討した.その結果,概念的要素を付与し文脈付けを行う条件は,ものと場所を記憶する際に有効であることが示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨:本研究は在宅要支援・要介護高齢者の尿失禁と情緒的サポートや孤独感の心理・社会的要因の主観的健康感への影響を検討した.調査は札幌市手稲区の在宅要支援・要介護高齢者を対象に2,500名を無作為抽出し,郵送法にて1,512名(60.5%)から回答を得た.二項ロジスティック回帰分析の結果,尿失禁の主観的健康感への影響は認められず,心理・社会的要因である情緒的サポートの受領ならびに孤独感が低いことが影響していた.要介護度の影響は認められなかった.高齢者が家庭や地域で人とのつながりを維持・再構築し,心配ごとや悩みごとを相談できる情緒的な人間関係を有することが,主観的健康感を高めるうえで重要と考えられる.

  • 文献概要を表示

要旨:自記式作業遂行指標(以下,SOPI)は,作業参加の状況を評価できる尺度として開発された.本研究の目的は,デイサービスを利用する地域在住高齢者221名に対して,SOPIの転用可能性を検討することであった.併存的妥当性,構造的妥当性,仮説検証では,先行研究と同様に健康関連QOL(HRQOL)と正の相関があることや3因子斜交モデルで良好な結果が得られた.しかし,内的一貫性や項目特性の結果からは,各因子の項目順を離して用いるなどの改良の余地がある点も示された.本研究によって,臨床の作業療法で関わる地域在住高齢者に対して,作業参加の状況という視点で評価と介入を行える基盤ができあがったと考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨:信念対立とは,立場や価値観の相違から生じる争いや対立であり,人間関係に支障を来たすと言われている.本研究の目的は,回復期リハビリテーション病棟に入院中の患者は,作業療法士に対し信念対立をどう経験し,対処しているのかを明らかにすることである.そのため20名の患者に対してインタビューし,構造構成的質的研究法を用い分析をした.その結果,信念対立の構造は4個の大カテゴリー,14個のカテゴリー,38個の概念で構成されていた.信念対立は,適切に対処されず【自責】,【衝突】,【失望】に至るが,【価値の相対化】を図ることにより低減させることが可能と考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨:地域づくりによる介護予防戦略の開発に向け,地域在住高齢者のIADL低下者割合などの市町村間格差とその関連要因を検討した.日本老年学的評価研究データを用い,88,370名(53市区町村)を対象に,老研式活動能力指標IADL 5項目いずれかの非自立者割合と関連要因の地域相関分析を行った.前期高齢者のIADL低下者割合は市区町村間で7.9〜23.2%の差があり,関連しうる心理社会的指標など多指標でも2〜17倍の差があった.特に女性でスポーツや趣味の会への参加者割合が高い市町村はIADL低下者割合が低いという負の関連を認めた.今後多面的な検証は必要だが,作業療法が重視する趣味や集団活動を促す地域づくりが,介護予防に寄与すると考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨:人工呼吸器を装着した筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者に対し,生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)を用いて,患者にとって意味のある生活行為である「普通の風呂に入りたい」を目標に,作業療法を実践した.MTDLPを活用し,作業療法士を中心に多専門職種がチームとなって,動作・介助方法の検討や環境調整を行った.患者は一般浴槽での入浴が軽介助で可能となり,達成度・満足度とも向上した.MTDLPを用いたことで,チーム医療の方向性を示すことや患者のチーム参加が容易になった.チーム医療の力が発揮でき,患者のQOL向上につながった.

  • 文献概要を表示

要旨:今回,家族機能が低下したことにより不登校になっていた中学1年の生徒に対し,訪問支援を中心に介入を行った.本症例の不登校には母親の要因が関係していると考えられたため,①関心のある作業を用いた本人への個別的支援,②SSTなどを用いた母親への個別的支援,③母子で共有できる作業活動を用いた支援を実施した.その結果,家族の関係性が変化し,本人の再登校が可能になった.変化の要因には,作業活動の精神療法的作用,関係性を構築しやすい作業活動の特性が働いていたと考えられた.以上から,作業活動を適切に活用して本人を含めた家族全体に関わることは,不登校の介入に有用と考えられる.

  • 文献概要を表示

要旨:本報告は,ラクナ梗塞を発症した男性を対象に箸の操作性と満足度を改善させることを目的とした.介入手段として,①中田らの「箸操作パターンの分類」に基づき箸操作に必要な手の構えと手指の動きの要素的訓練を段階づけたこと,②中田らの「箸の使い方」を参考にして作成した質問紙をもとに,問題点を共有したこと,③箸操作訓練前後における満足度の変化を確認することとした.結果,箸の操作形態としてAI型の質的改善やAV型の一部獲得が得られ,食材によって両者を使い分けることとなった.満足度は45点から75点まで向上を示した.また,AV型の近位箸の固定方法として,母指指腹面と環指指尖部の対立位で固定する方法が有効であった.

  • 文献概要を表示

要旨:我々は,高次脳機能障害を呈した脳卒中患者のアウェアネスと動機づけをモデルや理論に基づいて捉え,それらの状態に応じた介入を行った.本報告では,アウェアネスを3段階に分類する階層モデル,動機づけを4段階に分類する自己決定理論を基に,それらの状態を評価する基準を操作的に設定した.症例のアウェアネスや動機づけに介入することで,社会参加や職場復帰への積極的行動の変化が見られた.アウェアネスや動機づけの変化が理論上で改善方向にあるのかを判断し,その変化がどのような要因で促されたのかを検討できた.アウェアネスや動機づけをモデルや理論に基づいて捉えることは,作業療法の支援の質を高めるために有効であると考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨:本研究では,閉じこもりと判定された福島県只見町の旧特定高齢者(現;二次予防事業対象者)23名を対象に,作業質問紙を用いて夏と冬の1日の作業や作業の認識(領域,有能感,価値,興味)を調査し,季節間で比較検討した.その結果,①上位11種類のうち,農作業と除雪以外は季節間で変わらない,②作業の件数は冬に減少する,③仕事とADLでは,興味の得点は冬の方が有意に高いことが明らかとなった.本研究より,作業の種類や件数,興味を季節間で検討する際は,地域特性の視点から検討する必要があると思われた.

--------------------

■欧文目次

基本情報

02894920.34.5.jpg
作業療法
34巻5号 (2015年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

文献閲覧数ランキング(
3月23日~3月29日
)