medicina 58巻7号 (2021年6月)

特集 “のど・はな・みみ”の内科学

石丸 裕康
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 『medicina』誌は1964年創刊とのことであり,長い歴史をもつ内科臨床雑誌の草分けである.最近は便利なもので,電子ジャーナルで昔の論文も比較的容易に参照することができるが,その創刊号に「患者の声」として,娘が4歳時に発症した症状が,「側頸瘻」の診断に至り,手術で完治するまで14年を要したという主婦の寄稿が掲載されている.解決に至るまでの紆余曲折を振り返り,「最初にかかった医師が適切な専門医に紹介状を書いてくれていたら,14年の空費はなかったのでは」と嘆きつつ,「患者をすぐ最適な医師へ送るルートを制度化してほしい」と結ばれている.

 現在においても,日々の診療で,内科医は常にこのような問題に直面している.どこにかかればよいのかよくわからないような問題は,まず内科で相談される,といったことは読者のみなさんも日々経験することだろう.内科はその診療の性格上,幅広い問題を扱うことが求められる.真摯にそのニーズに向き合うためには,自分の専門領域の疾患の診断・治療にとどまらない,他の診療科も含めた広範囲な生涯学習を行わなければならない.

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●今月の特集執筆陣による出題です.口・のど・鼻・耳の診療に関する理解度をチェックしてみましょう!

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Point

◎内科医にとって必要な耳鼻咽喉科の知識・スキルは,各医師の働く環境によって異なる.

◎耳鼻咽喉科疾患のそれぞれの分野(のど,鼻,耳など)において,それぞれ緊急疾患(killer sore throatなど),頻度をもとに習得すべき知識・スキルを認識する.

◎実際の臨床で出会った問題について,その都度,教科書などのリソースを用いて調べることが大事である.

◎耳鼻咽喉科のスキルを習得する場として,現在は耳鼻咽喉科のシミュレーションコースやhands-onセミナーがある.

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Point

◎急性の難聴,激しい咽頭痛や耳痛,顔面痛などは早急の耳鼻咽喉科紹介が望ましい.

◎上記以外で急性発症でなければ早急の耳鼻咽喉科受診は原則必要ない.

◎咽頭違和感や鼻閉,耳痛,顔面痛,開口障害などは,漫然とした経過観察をしないこと.

◎多くは耳鼻咽喉科診療所への紹介でよいが,緊急入院の可能性がある場合は病院耳鼻咽喉科へ紹介する.

◎診療情報提供書は,冒頭に依頼目的を具体的に記載して,そのあと依頼理由や病歴を続けるとよい.

鼻鏡・耳鏡の使い方 鈴木 富雄
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Point

◎最も大切なことは,器具を持つ手の一部を患者の顔面に接触させ確実に固定して,患者の不意の動きに備えたうえで,安全に使用することである.

◎慣れないうちは,経験豊かな上級医や専門家にも同時に診てもらい,所見の評価の妥当性を高めるように努める.

◎症状の有無にかかわらず,正常な鼓膜や鼻腔の診察も含めて数多く診察を行い,経験値を高めることが重要である.

口腔

口腔衛生と健康維持 松本 朋弘
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Point

◎口はその人の全身の鏡,生活の鏡と言える.さまざまな情報に溢れている.

◎歯科疾患と全身疾患は深く結びついていることが証明されてきている.

◎高齢者のフレイル,サルコペニア問題を未然に防ぐには歯と口をしっかり守ることが重要である.

◎歯科受診は75歳を境に急激に減少し,医科外来受診は75歳を境に急激に増加する.医科外来が歯科への橋渡しになることが望まれる.

味覚障害の鑑別と治療 生井 明浩
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Point

◎常に薬剤が原因である可能性を念頭に置く.

◎他疾患と同様,多種の原因が絡み合う場合も多い.

◎4基本味(甘,塩,酸,苦)以外の機能評価は難しい.

◎治療前から血清亜鉛(できれば血清銅,血清鉄も)を経時的に測定する.

口内炎・口腔内潰瘍 吉岡 哲志
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Point

◎口腔粘膜に発生した炎症により口腔・咽頭の粘膜に発赤,腫脹などの変化をきたすが,奇形や腫瘍にはよらないものを口内炎と呼ぶ.

◎単純性(カタル性),アフタ性,潰瘍性に大別され,日常最も遭遇するのはアフタ性口内炎である.

◎ほとんどは非特異的な経過で予後良好であるが,遷延・反復する場合はBehçet病をはじめとした特異的な疾患を鑑別する必要がある.

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Point

◎舌痛症はストレス性疾患であり,症状の特徴は食事中に症状を自覚しないことである.舌周囲に症状を訴える場合もある.患者は異常でない粘膜所見を「異常」と確信をもって受診する場合が少なくない.

◎舌乳頭の萎縮を認める舌炎は鉄欠乏,ビタミンB12欠乏,葉酸欠乏で起こる.舌の痛みは食事中に憎悪することが多く,痛みは舌周囲には認めない.鉄欠乏由来の舌炎では口角炎を伴うことがある.

◎アフタ性口内炎の多くは年に3回以上発症する反復性アフタ性口内炎(RAS)である.膠原病ではBehçet病と全身性エリテマトーデス(SLE)に注意する.前者は口内病変は100%で初発後10年以上を経て診断されることも多い.後者は口内病変は50%で痛みを伴わないことがある.

◎口内炎はその形態で3つに分けることができる.通常の口内炎は中心が白く,周囲が赤い.中心が赤く,周囲が白い口内炎は難治性である.

◎舌痛症,表在性舌炎,アフタ性口内炎はいずれもストレスを背景にもつ例があり,再発・再燃を繰り返すことがある.治療にあたっては患者との信頼関係の構築が必要となる.

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Point

◎急性の開口障害は破傷風や深頸部感染など緊急性のある疾患で生じるため,迅速な評価が必要である.

◎破傷風は臨床診断.1/3の症例では受傷機転はわからない.

◎「咽頭痛+開口障害」は危険なサイン.咽頭痛診療時は必ず開口障害の評価を行う.

咽喉頭

嗄声 許斐 氏元
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Point

◎声帯の診察は,喉頭内視鏡・ストロボスコピーがないと難しいが,嗄声を聞いて確認・共有することで,まずは患者の安心が得られる.

◎嗄声発症のきっかけ・音声の使用状況や患者背景・音声に関連する既往歴や内服薬の確認が重要であり,音声疾患の推測や患者のマネジメントに有用である.

◎職業的な音声使用者は速やかな治療を要するため,早期に音声医に紹介すべきである.また,会話音声がほぼ正常である軽微な音声障害ほど診断が難しいので,音声専門施設での診察が望ましい.

◎地域のなかでストロボスコピー検査があり,音声診療を得意とする耳鼻咽喉科をあらかじめ把握しておく.

◎嗄声で緊急性が高いのは吸気性喘鳴であり,声門閉鎖による窒息回避のために気管切開を要することがある.速やかな診断・治療を要する疾患は,喉頭癌,喉頭乳頭腫,声帯麻痺(の原疾患),喉頭外傷などである.

咽頭痛/咽頭炎 宮里 悠佑
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Point

◎咽頭痛があっても,「かぜ」に抗菌薬は処方しない.

◎抗菌薬の必要な咽頭炎/扁桃腺炎と抗菌薬の不要な咽頭炎/扁桃腺炎をなるべく正しく見分ける.

◎A群溶連菌以外の咽頭炎の起因微生物についても知っておく.

killer sore throat 關 匡彦
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Point

◎killer sore throatとは咽頭痛を伴う気道緊急をきたす,もしくは敗血症に至る致死的な疾患である.

◎緊急気道確保を要するかの判断が確定診断より優先である.

◎気道緊急の可能性を考えた場合は,速やかに気道確保に長けた医師に連絡する.

咽喉頭異常感症 鈴木 賢二
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Point

◎咽喉頭の異常感は,耳鼻咽喉科領域では咽喉頭異常感症と呼ばれ,内科領域では「ヒステリー球」あるいはヒステリー球症候群または球感覚と呼ばれる.咽喉頭食道異常感症や咽喉頭神経症と呼ばれることもある.

◎局所的あるいは全身的症候に起因する症候性咽喉頭異常感症と,器質的異常を認めない真性咽喉頭異常感症がある.

◎症候性咽喉頭異常感症では原因疾患を確実にとらえ,しっかり治療するが,特にがんを看過してはならない.

◎真性咽喉頭異常感症では精神的要因が多くを占めるので,十分な傾聴と説明で不安を取り除き,やむ負えない場合のみ抗不安薬や抗うつ薬などを使用する.漢方薬である半夏厚朴湯や柴朴湯が有用なこともある.

嗅覚障害 藤尾 久美 , 荻野 枝里子
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Point

◎嗅覚障害は気道性嗅覚障害(慢性副鼻腔炎,アレルギー性鼻炎,鼻腔腫瘍,稀に鼻中隔骨折などの形態変化),嗅神経性嗅覚障害(感冒後嗅覚障害,薬剤性・中毒性嗅覚障害,外傷性嗅覚障害,開頭手術後),中枢性嗅覚障害(脳挫傷,脳腫瘍,脳出血,脳梗塞,神経変性疾患)に分類される.それぞれ障害部位が違うため治療法が異なる.

◎Parkinson病,Alzheimer病などの神経変性疾患では嗅覚障害が初発症状として出現することがある.

◎パーキンソニズムには嗅覚検査が鑑別に有用である.

鼻出血 白神 真乃
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Point

◎まずはABC(Airway, Breathing, Circulation)のチェックを行う.

◎出血傾向をきたす病気と薬をチェックする.

◎用手圧迫15分で止血を試み,だめならボスミン・キシロカインガーゼで止血する.

◎それでもだめなら耳鼻科にコンサルトする.

◎止まれば再出血予防のガーゼパッキングをして,数日以内に耳鼻科を受診するよう指導する.

副鼻腔炎 佐藤 公則
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Point

◎急性副鼻腔炎は,通常,感冒の経過中に生じる場合が多く,内科,小児科の日常診療でも常に念頭に置いておく.

◎副鼻腔炎の特殊型として,真菌性副鼻腔炎,歯性上顎洞炎,気圧性副鼻腔炎,好酸球性副鼻腔炎,副鼻腔気管支症候群を伴った慢性副鼻腔炎などがある.

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Point

◎アレルギー性鼻炎は反復性のくしゃみ,水様性鼻漏,鼻閉を3主徴とするIgEを介したⅠ型アレルギー疾患である.

◎通年性アレルギー性鼻炎で最も多い抗原はハウスダストやダニであり,季節性アレルギー性鼻炎の原因抗原の多くはスギ花粉である.

◎アレルギー性鼻炎の治療法は抗原の除去と回避・薬物療法・手術療法に主に分けられる.薬物治療では症状の程度に合わせて鼻噴霧用ステロイド薬,抗ヒスタミン薬,抗ロイコトリエン薬などを組み合わせて処方する.

耳痛 斉藤 有佳 , 鎌田 一宏
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Point

◎問診と丁寧な診察により耳痛の原因疾患を診断する.

◎耳介,外耳道,鼓膜の異常所見の有無で疾患を絞り込む.

◎耳痛の原因は耳疾患だけとは限らず,耳の所見に乏しい場合は,さまざまな原因を考える必要がある.

◎特に鼓膜所見があまりない症例は注意すべきである.

内科における難聴診療 高岸 勝繁
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Point

◎内科に難聴を主訴に受診することは少なく,難聴は拾い上げる症状である.

◎難聴は「耳の疾患」以外に,末梢神経障害や微小血管障害の側面ももつ.

◎自己免疫疾患に伴う難聴もある.ステロイドにより改善する可能性が高いため,重要である.

耳鳴 南 修司郎
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Point

◎耳鳴の有症率は人口の10〜15%と推定され,日常生活に支障をきたすような重症耳鳴の頻度は0.5〜1%程度と見積もられている.

◎耳鳴そのものを消失させる効果のある薬剤や治療方法の,高いエビデンスはまだ示されていない.

◎tinnitus retraining therapy(TRT)は音響療法と教育的カウンセリングにより成り立っており,順応が起きることで耳鳴に対する苦痛を軽減させる方法である.

耳性めまい 船曳 和雄
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Point

◎耳性めまいは各種疾患ごとに特徴的な病歴があり,問診は極めて重要となる.

◎良性発作性頭位めまい症(BPPV)は,後半規管型,外側半規管型,長脚型,短脚型,クプラ型およびそれらの合併などvariationが多い.これらの診断は頭位眼振検査で行う.

◎めまい疾患で最も頻度が高いのはBPPVであり,その治療は半規管に迷入した耳石をもとの耳石器に戻す理学療法である.

◎内耳機能評価は,head impulse test,回転検査など頭部運動に対して起こる眼球運動(前庭眼反射)の定性的観察または定量的計測で行う.

◎めまい以外の神経学的所見に乏しい例でも歩行障害があれば,小脳虫部病変など脳血管障害の可能性を念頭に置く必要がある.

中耳炎 兼定 啓子
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Point

◎小児の急性中耳炎は,鼓膜所見・病状からスコア化され,軽症・中等症・重症に分類され,ガイドラインに沿って治療を行う.

◎成人の急性中耳炎は,まずは肺炎球菌ムコイド型(ムコーズス中耳炎)を念頭に置き,ペニシリン系抗菌薬投与とする.

◎小児の滲出性中耳炎は,聴力低下の大きな原因となるので耳鼻咽喉科へ紹介する.

◎気管支喘息に中耳炎(急性・滲出性中耳炎)発症の場合,好酸球性中耳炎を考える.

◎急速に聴力低下する中耳炎は,ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)を念頭に置く.

外耳道炎 木村 百合香
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Point

◎外耳道炎は外耳道に発生する炎症性疾患の総称で,急性限局性外耳道炎,びまん性外耳炎,外耳道真菌症,Ramsay Hunt症候群,悪性外耳道炎などが含まれる.

◎外耳道の診察には耳鏡を用いるが,観察を容易にするためには耳介を後上方に引くとよい.

◎Ramsay Hunt症候群,悪性外耳道炎は緊急性を要する疾患であり,その存在に留意する.

その他

嚥下障害の評価と対応 津田 豪太
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Point

◎嚥下は「先行期」「準備期」「口腔期」「咽頭期」「食道期」の五期に分類されるので,症例ごとにどの部位がどのように障害されているかを検討する.

◎診断には嚥下障害の存在を疑う問診が重要であり,不顕性誤嚥を疑う場合には「食後しばらくしてから咳や痰が出る」かどうかに注意する.

◎スクリーニング検査で嚥下障害が強く疑われると嚥下内視鏡検査もしくは嚥下造影検査を行い精査する.いずれの検査も一長一短があるので,症例の精査したい部分を考えて検査を選択する.

◎治療は,軽症例であれば食事場面への配慮であり,中等度以上であれば言語聴覚士を中心にした嚥下リハビリテーションを行い,重症例・難治例には耳鼻咽喉科医による外科的治療(嚥下機能改善手術・誤嚥防止手術)を考慮する.

耳鼻咽喉科領域の悪性腫瘍 宮﨑 眞和
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Point

◎耳鼻咽喉科領域の腫瘍は発声や咀嚼・嚥下,知覚に関連した器官から発生するため医療者の五感で得られる所見を呈することも多い.

◎耳鼻咽喉科領域では炎症性疾患の頻度が高いが,症状の時間経過(2〜3週間以上の持続)に留意して,生検施行のため専門医への紹介を考慮する.

◎喫煙や飲酒,特に“フラッシャー”と咽喉頭,食道の多発癌には関連性があり,field cancerizationと呼ばれる.

◎ヒトパピローマウイルス(HPV)に関連した中咽頭癌は“low T, high N”という性質があり,原発巣が小さくてもリンパ節転移が多く,そのCT画像は囊胞様を呈する.

◎咽頭腫瘍を直接観察する場面は一般内科診療では限られるものの,舌の動きなど口腔内などから得られる所見で“見えない”病変を想像することが大切である.

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Point

◎甲状腺腫瘍は簡便で侵襲の少ない超音波検査で評価し,悪性が疑われた場合には穿刺吸引細胞診を施行する.

◎悪性腫瘍であれば病期診断を行い,病理組織分類別フローチャートに沿って治療方針を立てる.

鼻腔・外耳道の異物への対応 梅木 寛
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Point

◎異物除去が容易でない場合には無理せず,早めに耳鼻咽喉科に紹介する.

◎ボタン電池などの特殊な異物は緊急処置が必要.

◎鼻腔異物は気道異物を作ることは避ける.

◎外耳道異物は鼓膜損傷を避ける.

◎小児の異物は保護者への事前の説明が重要である.

連載 読んだら,ちょいあて! POCUSのススメ・3

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 子宮や卵巣の異常は内診や経腟エコーでしかわからないと思いがちですが,実は経腹エコーでもわかる異常がたくさんあります.今回の症例は,新型コロナウイルスによって増えている「微熱」の主訴から始まります.

 

*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年5月31日まで公開)。

連載 フレーズにピンときたら,このパターン! 鑑別診断に使えるカード・18【最終回】

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総論

 急性視力障害は眼科医が対応するケースが多いかと思いますが,時間外/夜間などすぐに対応できない場合や内科へのコンサルトがあることもあり,鑑別を整理しておく必要があります.急性視力障害の鑑別には表1のようなものがあります.

 視力障害の鑑別のアルゴリズムを図1に示します.両側性の視力障害については次項で扱います.また眼科手術後の視力障害は眼科コンサルトが必要です.

連載 ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・3

脳出血①錐体路障害 難波 雄亮
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 神経疾患に苦手意識がありませんか? その原因は,羅列された神経診察所見と難解な神経回路の両方がうまくリンクできていないことです.過去の本誌連載『見て,読んで,実践! 神経ビジュアル診察』では,臨床で実践できる診察方法を解説しました.その内容をフルに活用して,「神経疾患の病巣診断をする」のが本連載の狙いです.「この神経所見があれば,この神経回路がダメージを受ける」といったように想像し,神経回路をビジュアル化して,どの場所に病巣があるかクイズ感覚で考えていきます.また,臨床に役立つパールも毎回掲載していきます.皆さま,ぜひ楽しんで読んでください.

連載 目でみるトレーニング

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 新興医学出版社から,このたび,きさらづてんかんセンター・センター長の岩佐博人先生による『てんかん臨床に向きあうためのシナリオ』が出版されました.主たる編著者の岩佐先生は,精神科の立場から臨床てんかんのみならず実験てんかん,脳波のダイポール解析などを長年積み重ね,現在まで日本てんかん学会の理事,財務担当理事を長年務めてこられました.

 先生の今までの幅広い経験のなかから,本書は書名のとおりに,てんかん臨床に向きあう時の精神科的視野とアプローチの視点の重要性を,症例を交えながら解説されており,日々てんかん臨床に向きあう精神科以外の診療科の先生に対して,いかに精神科視点が重要か,また,それがいかに診療の幅と医師と患者の関係に重要であるかを教えてくれます.これはもちろん一般診療に通じることでも重要ですが,特にてんかん診療では欠かすことができない内容であるということが,ケースを読み進めていくと実感できます.

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 EBM(evidence-based medicine,根拠に基づいた医療)という言葉が医療界で初めて提唱されたのが1992年.提唱者を個人的に知っていた私は,その直後から,わが国においてEBMの普及に努めてきた.そのような私にとって,心の重荷を下ろし,希望の灯と映ったのが,本書である.

 理由は,次のとおりである.EBMとは「最も信頼できる研究成果(エビデンス)を知ったうえで,患者に特有の病状や意向・価値観(個別性),医師の経験や医療環境(状況)に配慮して医療を行うこと」であり,最も信頼できるエビデンスを踏まえる点に最大の特徴がある.今や,わが国においても,診療現場では当然のごとくエビデンスについての議論が正しく行われ,エビデンスに基づいた診療ガイドラインも普及し,医療の質が向上したことは疑いがないところである.ところが,私自身,当時新規性のあったエビデンスに注意を引き付けようとするあまり,「患者に特有の病状や意向・価値観に配慮する」という部分の実践手順を普及しようとする意欲には欠けていて,EBM普及の達成感とは裏腹に,何とも言えない心の重荷になっていたところである.

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 医学書院から別冊『呼吸器ジャーナル』として『COVID-19の病態・診断・治療—現場の知恵とこれからの羅針盤』という本が出版された.多くの臨床医の興味を引きつけるテーマである.私自身,『呼吸器ジャーナル』の編集,および執筆に携わったことがあるものの,これまでの企画とは異なるスタイルの本であると感じた.

 まず,Ⅰ章ではCOVID-19に関する総論を,Ⅱ章ではCOVID-19を理解するために必要な基礎知識を示している.Ⅲ章では,各論として疫学・診断・治療を示している.これらの章からCOVID-19に関する基礎知識を学ぶことができる.なかなか見ることができない病理像まで紹介されている点に感心した.また臨床医の関心の高いワクチンの開発状況も参考になった.

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 私は増井伸高先生に嫉妬している.そりゃそうでしょ,こんなに毎回毎回読みたくて仕方がない本を書かれるのだから.心電図,神経救急,さらに骨折,おっと忘れてはいけない救急隊向けの本から外国人診療の本まで…….「こんな本を書きたいな」と思ったら,そのはるか上をいく素晴らしい本を私のスマートフォンがしつこく薦めてくる.私は対面でお目にかかったことはないのだが,講演をオンラインで拝聴したことはある.これまた面白い,そしておそらく増井先生はいい人だ.知らぬ間にファンになっていた.そんな増井先生の最新作『高齢者ERレジデントマニュアル』,読まないわけにはいかない.

 救急外来を訪れる多くは高齢者であり,そのマニュアルとならばとんでもなく分厚い本になりそうだが,この本は全34項目で構成され,各項は数ページから多くても10ページ程度とコンパクトにまとめられている.この薄さにもかかわらず知りたい情報,私にとっては知識の再確認と後輩指導に役立つ情報は網羅されているのだ.私も数冊救急関連の本を書いているが,どうしても経験が浅いが故に記載の根拠として多くの論文を引用し,それを自慢気に記載してしまいがちだ.大切なことは読者の行動をよりよい方向へ向けることであり,多くの情報が紙面上で羅列してあると重要な点が伝わりづらいものである.本書の特徴・利用時の留意点には,あえてボリュームダウンしたと記載があり,その量が「上級医が高齢者ERを若手に教育するときの情報量としてちょうどよい塩梅」だとある.私にとってドンピシャの本だったわけである.

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2021年6月〜12月開催内科関連学会情報

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58巻7号 (2021年6月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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