書評
—増井 伸高 著—高齢者ERレジデントマニュアル
坂本 壮
1
1総合病院国保旭中央病院救急救命科
pp.1007
発行日 2021年6月10日
Published Date 2021/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402227674
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私は増井伸高先生に嫉妬している.そりゃそうでしょ,こんなに毎回毎回読みたくて仕方がない本を書かれるのだから.心電図,神経救急,さらに骨折,おっと忘れてはいけない救急隊向けの本から外国人診療の本まで…….「こんな本を書きたいな」と思ったら,そのはるか上をいく素晴らしい本を私のスマートフォンがしつこく薦めてくる.私は対面でお目にかかったことはないのだが,講演をオンラインで拝聴したことはある.これまた面白い,そしておそらく増井先生はいい人だ.知らぬ間にファンになっていた.そんな増井先生の最新作『高齢者ERレジデントマニュアル』,読まないわけにはいかない.
救急外来を訪れる多くは高齢者であり,そのマニュアルとならばとんでもなく分厚い本になりそうだが,この本は全34項目で構成され,各項は数ページから多くても10ページ程度とコンパクトにまとめられている.この薄さにもかかわらず知りたい情報,私にとっては知識の再確認と後輩指導に役立つ情報は網羅されているのだ.私も数冊救急関連の本を書いているが,どうしても経験が浅いが故に記載の根拠として多くの論文を引用し,それを自慢気に記載してしまいがちだ.大切なことは読者の行動をよりよい方向へ向けることであり,多くの情報が紙面上で羅列してあると重要な点が伝わりづらいものである.本書の特徴・利用時の留意点には,あえてボリュームダウンしたと記載があり,その量が「上級医が高齢者ERを若手に教育するときの情報量としてちょうどよい塩梅」だとある.私にとってドンピシャの本だったわけである.
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