形成外科 68巻11号 (2025年11月発行)

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特集　形成外科における脂肪幹細胞治療

企画にあたって関堂　充 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1155-1155

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脂肪幹細胞治療における基礎と再生医療関連法水野　博司 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1157-1163

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はじめに

　「再生医療等の安全性の確保等に関する法律（以下，安確法）」が制定されて10年が経過したが，この間わが国においては多種多様な再生医療等が患者に提供されてきた。なかでも脂肪幹細胞は極めて多くの再生医療等の細胞源として利用されるに至っている。その一方で，エクソソーム（exosome）をはじめとするような法の対象外となっている製剤も登場し，エビデンスの脆弱な再生医療も自由診療下で展開されるなど，いくつかの問題点も抽出されつつある。

第三種再生医療等における脂肪幹細胞を用いた脂肪注入渋谷　陽一郎 , 菅井　かれん , 今井　裕季子 , 関堂　充 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1164-1170

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はじめに

　脂肪由来幹細胞（adipose-derived stem cells：以下，ADSCs）を併用した脂肪注入（cell-assisted lipotransfer：以下，CAL）は，注入脂肪の生着率向上を目指した方法として，再建や美容領域において近年注目されている 1）2）。われわれは，吸引脂肪組織からADSCsを単離する前段階の，ADSCsを豊富に含む細胞分画である間質血管細胞群（stromal vascular fraction：以下，SVF）を用いた軟部組織再建治療を行っている。わが国においては，本治療は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律（以下，再生医療等安全性確保法）」のもとで第三種再生医療等として提供される。審査を受けた提供計画に基づいてSVFの利用を行うこととなる。対外的な法的・倫理的手続きおよび院内諸手続きを適切に遂行したうえで実施する必要がある。

　本稿では，われわれの施設で本治療を実施するにあたり経験した手続きおよび実際の治療について述べる。

第二種再生医療等提供計画における培養脂肪幹細胞を用いた乳房再建森　弘樹 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1171-1176

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はじめに

　脂肪の生着率を高めるとされる幹細胞付加脂肪移植術には術中に一部の脂肪から幹細胞を含む分画を抽出して，それ以外の脂肪細胞と混合して幹細胞の割合を高めた脂肪移植を行う方法と，術前に少量の脂肪細胞を採取し，幹細胞を分離して培養し増加させ，後日，改めて吸引した脂肪と混合して移植する方法の2種類がある。本稿では，第二種再生医療等提供計画に相当する後者について述べる。

難治性潰瘍における脂肪幹細胞治療素輪　善弘 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1177-1183

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はじめに

　難治性潰瘍は，創傷治癒機構が正常に機能せず治癒に至りにくい病態である。これらの一部は既存の保存療法，血行再建や外科的治療に対して反応が乏しく治療に難渋するため，状況を打開できる治療法の開発が望まれる。低侵襲で容易に採取できる脂肪から生成できる脂肪由来幹細胞（adipose-derived stem cells：以下，ADSCs）はさまざまな創傷治癒促進能を有することから新しい組織再生治療ツールとなり得る。免疫調整や倫理的制約を受けにくいなどの利点を有し，さまざまな形態とアプローチで投与することで，有望な新規治療選択肢となり得る。

　本稿では，難治性潰瘍に対する組織修復ツールとしてのADSCsの治癒促進効果と，そのメカニズムや応用法について概説する。

脂肪幹細胞を用いた虚血肢に対する治療田中　啓二郎 , 力丸　英明 , 佐々木　健一郎 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1184-1192

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はじめに

　重症下肢虚血（critical limb ischemia：以下，CLI）とは，末梢動脈疾患（peripheral arterial disease：以下，PAD）に起因する慢性虚血性安静時疼痛と潰瘍もしくは壊疽を有する患者の症状が，2週間以上持続するものである。背景にある生活習慣病，特に糖尿病や腎不全の増加といった疾病疫学的構造の変化を踏まえ，より包括的に下肢病変に対応するため，2019年の米国血管外科のガイドラインにおいて包括的高度慢性下肢虚血（chronic limb-threatening ischemia：以下，CLTI）という概念が提唱された。これらは予後不良であり，四肢切断後はQOLが著しく低下し，心血管系合併症による死亡率も著明に上昇する。一方，2002年に骨髄単核細胞（bone marrow mononuclear cells：以下，BM-MNCs）移植による血管新生療法（therapeutic angiogenesis by cell transplantation：以下，TACT）の臨床試験結果が初めて報告され 1），虚血肢に対する再生医療への関心が高まった。そして近年では脂肪幹細胞（adipose-derived stem cells：以下，ADSCs）が，採取が容易で細胞数も多く，より実用的な細胞源として注目されている。

　本稿では，当院における虚血肢に対する再生医療によるTACTの実際と，その有用性について概説する。

顔における脂肪幹細胞を用いた脂肪注入海野　早織 , 成田　圭吾 , 辻　直子 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1193-1201

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はじめに

　自家脂肪注入は手術瘢痕をほとんど残さずに自家組織による軟部組織の増大が可能であり，皮弁と比べ低侵襲で形態形成の自由度が高く，皮下脂肪が豊富にあれば採取は容易で繰り返し施行しやすい。かつて生着率の不安定さや脂肪壊死による囊胞や石灰化のリスクが問題視されたが，近年では脂肪の採取，処理，注入技術における進歩に伴い形成外科や美容外科領域で広く行われており，特に顔面への注入は整容的な観点からニーズが高い 1）2）。生着率の向上を図るために脂肪由来幹細胞（adipose-derived stem/stromal cells：以下，ADSCs）を注入脂肪へ付加する方法はYoshimuraらによってcell-assisted lipotransfer（以下，CAL）として考案され 3）～5），顔面における有用性の報告も増えてきている 6）。

　本稿では，当院におけるCALを用いた顔面の陥凹変形に対する再建を中心に解説する。

毛髪再生における幹細胞治療鎌倉　達郎 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1202-1209

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はじめに

　近年，脱毛症に対する関心は男性のみならず女性においても確実に増加傾向にある。一方，わが国における脱毛症治療の一般的な選択肢として，「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」 1）によると，男性には複数の治療法の選択肢があるのに対して，女性にはミノキシジルの外用と低出力レーザー照射のみとなっている。

　2011年，Festaら 2）は皮膚に存在する脂肪前駆細胞が毛包幹細胞を維持すると同時に活性化し，毛が休止期から次の成長期へ移行するのに重要な役割を果たすことを示した（図1）。当院では豊胸術での脂肪移植術の生着率を高めるために，2007年より幹細胞を含む脂肪組織由来再生細胞（adipose-derived regenerative cells：以下，ADRCs）を使用し 3），毛髪再生治療にも応用してきた。本治療法では，移植用脂肪は真皮直下，ADRCs用脂肪から抽出したADRCs液は真皮内に同時に注入する。理由として，成熟脂肪細胞と脂肪幹細胞が存在することで脂肪幹細胞の増殖や分化に影響を与える可能性があり，結果として脂肪前駆細胞が増加し，脂肪前駆細胞が毛包幹細胞の活性化に寄与していると考えられているからである。本治療法は男性型脱毛症に対しても有効であるが，本稿では治療の選択肢が少ない女性型脱毛症を対象としたADRCs治療についてバンキングシステムも利用した「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が施行される2014年以前の症例も含めて報告する。

連載　随想

続「オキナワン・スピリッツ」西関　修 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1153-1153

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連載　みんなで考えよう！足病カンファレンス Season2

case 19　膠原病性CLTI治療における麻酔科ペインクリニックとの連携辻　依子 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1210-1213

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連載　形成外科NEXT—次世代の本音—

令和7年現在の美容外科の実情と形成外科出身の先生方への期待小川　英朗 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1214-1215

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連載　教室だより北～南

No.131　福島県立医科大学医学部形成外科学講座 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1216-1219

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連載　ザッツ形成外科！

Vol.23 共通の話題中村　優 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1221-1221

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投稿論文　特別寄稿

睫毛乱生に対するMillingen変法長西　裕樹 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1222-1230

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はじめに

　睫毛乱生は，睫毛の反りの向きや生える位置が通常より結膜側に寄ることで，角膜刺激症状を呈する疾患の総称である。1960年ごろまではクラミジア感染による慢性結膜炎に続発する病態が主であったが，抗菌薬が発達してまれな疾患になった。しかし，近年は現代ならではの原因（アレルギー性結膜炎，緑内障治療薬の副作用など）で発症していると考えられる高齢患者が増えている。治療法は，概念的には乱生毛の除去か移動であり，臨床的にはいくつかの選択肢があるが，その適応と選択に関するエビデンスは乏しいのが実情で，改善の余地がある。

投稿論文　原著

眼窩容積計測による眼窩壁骨折整復精度の評価—三次元実体モデルの有用性— 長谷川　祐基 , 櫻井　裕之 , 正宗　賢 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1231-1238

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はじめに

　眼窩壁骨折では眼窩容積変化と眼球陥凹の相関関係が知られており，2020年のシステマティックレビューでは，眼窩容積が1 cm 3増加すると眼球陥凹が0.8 mm進行するという相関が報告されている 1）。また，正常眼窩では左右の容積は比較的等しいことも知られており，健側と患側の眼窩容積差を眼窩壁骨折における整復精度の指標とすることができる 2）。

　三次元実体モデルを基に再建プレートを作製する眼窩壁骨折手術では高い対称性をもった眼窩再建が可能であり，この有用性は内壁・下壁の合併骨折で特に発揮されると考える。眼窩容積の変化を検討することで，シミュレーション手術が整復精度に及ぼす影響を検討する後ろ向きコホート研究を行ったので，これを報告する。

投稿論文　症例

15年間の長期追跡結果が得られた複合自家組織による隆鼻術の1例水野　力 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1239-1244

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はじめに

　わが国の美容外科における隆鼻術では，主としてⅠ型シリコンインプラントが用いられている 1）。一方，自家組織は生体適合性のある移植材料であるが，吸収や弯曲変形などの合併症および採取部の犠牲があるなどの欠点があるため十分に普及していない。

　自家組織による隆鼻術において，1種類の自家組織を外鼻全体の隆鼻術に使用するのではなく，複数の自家組織を使い分けることでそれぞれの自家組織の欠点を相殺できると考え，著者は2018年，本誌に鼻内法での複合自家組織による隆鼻術（以下，本法）について20例の短期結果を報告した 2）。今回，15年間の長期追跡結果が得られた1例を経験したので報告する。

OTSC（over-the-scope clip）で治療困難であった難治性胃瘻閉鎖不全に対し局所麻酔下にhinge flapを用いて治療した1例杉山　優弥 , 石瀬　久子 , 西本　聡 , 河合　建一郎 , 中島　考陽 , 垣淵　正男 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1245-1250

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はじめに

　近年，経皮的内視鏡的胃瘻造設術（percutaneous endoscopic gastrostomy：以下，PEG）は広く普及しているが，臨床経過で胃瘻が不要となり抜去することがある。抜去後に自然閉鎖しない場合，胃液が漏出し難治性瘻孔となり治療に難渋することがある 1）。今回，著者らは，胃瘻抜去後の難治性胃瘻閉鎖不全に対し，神経ブロックおよび局所麻酔下に局所皮弁を用いて瘻孔閉鎖を施行し，良好な結果を得たため報告する。

鉄剤による異物沈着症に対するレーザー治療の1例河原﨑　彩子 , 中村　寛子 , 沼尻　敏明 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1251-1256

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はじめに

　鉄欠乏性貧血に対していくつかの鉄剤 1）が使用されるなか，静注鉄剤の使用上の注意には，血管外漏出が起こると漏出部位周辺に炎症および長期にわたる色素沈着を起こすことが報告されている 2）。このような異物沈着症に対する治療報告が散見されるが 3）～9），経過を詳細に記した国内における報告は少ない 10）。今回，貧血の治療目的に用いた鉄剤の漏出により出現した鉄剤沈着症という病態に対して，色素斑の改善目的にQスイッチレーザー治療を行い，奏効したので報告する。

その他

目次 68巻11号 , 2025年11月

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欧文目次 68巻11号 , 2025年11月

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PRS 目次邦訳 Vol.156 Issue 3 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1257-1260

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Information 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1261-1261

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投稿規定 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1264-1267

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次号予告／編集後記 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1270-1270

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バックナンバー 68巻11号 , 2025年11月

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定期購読ほか　申込みシート 68巻11号 , 2025年11月

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その他　書評

乳房再建update　患者とともに選択するための確かな技術寺尾　保信 68巻11号 , 2025年11月 , pp.1263-1263

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基本情報

形成外科
68巻11号
(2025年11月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0021-5228 克誠堂出版

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