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特集 悲嘆の精神療法
遷延性悲嘆症治療(PGT)――治療の理論と概要
中島 聡美
1
1武蔵野大学人間科学部
pp.331-338
発行日 2026年6月5日
Published Date 2026/6/5
DOI https://doi.org/10.69291/pt52030331
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はじめに
悲嘆が“治療”の対象になったのは,近年のことである。そもそもFreudが,その著書『喪とメランコリー』(Freud, 1917)の中で,「喪には正常な生活態度からのはなはだしい逸脱がともなうにもかかわらず,わたしたちは喪を病的な状態とみなして医師の治療に委ねようなどとは少しも思わない。(Freud, 1917, p274)」と述べているように,悲嘆は病気ではないというという観念が強かった。そのため,心理的ケアやサポートの対象であっても,精神医学が取り扱う問題ではないとされていた。したがって,ごく最近まで精神医療における遺族の問題は,うつ病や心的外傷後ストレス症(Posttraumatic stress disorder : PTSD)であって悲嘆ではなかった。しかし,1990年代以降,急性期の悲嘆が長引いた状態は,「複雑性悲嘆(Complicated grief)(Prigerson et al, 1995)」という呼称で,研究が進められるようになった。現在,複雑性悲嘆は,ICD-11(2026),DSM-5-TR(2022)に「遷延性悲嘆症(Prolonged grief disorder : PGD)」として精神疾患に含まれている。精神疾患に位置付けられたことで,今後精神科医療の現場で有効な治療へのニーズが高まることが予想される。この論文では,遷延性悲嘆症治療の動向を振り返り,代表的な治療である遷延性悲嘆治療(Prolonged Grief Therapy : PGT)(Shear & Simon, 2025)注1)について紹介することで,今後の精神科医療の現場に役立てられればと思う。

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