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はじめに
日本では多死社会を迎えつつあり,大切な人との死別を経験する遺族の数は今後さらに増加することが予想される。身近な人との死別は,人生における最も深刻なストレス体験の一つとされ,死別による喪失感に対する反応は悲嘆反応と呼ばれ,誰しも経験し得る正常な反応であり,頻度や強弱には個人差があるものの6カ月程度をピークに軽減するといわれている(Maciejewski et al, 2007)。しかし,悲嘆反応の程度や期間が通常の範囲を超えて日常生活に支障をきたし,うつ病や遷延性悲嘆症(Prolonged Grief Disorder : PGD),心的外傷後ストレス症,身体症状症,アルコール関連症などの精神疾患を発症する場合がある。実際,遺族ではうつ病の有病率が高いことが報告されており(Barry et al, 2002),うつ病に罹患すると脳・心血管疾患や自死による死亡のリスク増加とも関連することが示されている(Stroebe et al, 2007 ; Zisook et al, 2014)。加えて,遺族はうつ病のみならず,PGDや心的外傷後ストレス症(posttraumatic stress disorder : PTSD)を併発する可能性が高いことも指摘されている(Simon et al, 2007 ; Komischke-Konnerup, 2021)。
遺族のうつ病に対する治療についての実証研究は世界的に限られているものの,日本で初めて策定された遺族ケアガイドラインでは,精神療法を中心とする非薬物療法が有効な介入となり得ることが示されている(Akechi et al, 2022)。また,遺族への支援介入の効果を検討したシステマティックレビューでは,個人精神療法は悲嘆症状や抑うつ症状を改善する効果があり,中程度のエビデンスが示された。一方,専門家主導のサポートグループは抑うつ症状改善に一定の効果があり,低度のエビデンスが示された(Ahluwalia et al, 2026)。
うつ病に対して確立されたエビデンスを有する精神療法の一つとして,対人関係療法(interpersonal psychotherapy : IPT)(Klerman et al, 1984)が挙げられる。死別の文脈におけるうつ病(死別関連うつ病)に対してIPTを実施する場合には,「遷延した喪のプロセスの促進(カタルシス)」に加え,「故人との関係を含めた対人関係や興味・関心の(再)構築」を治療目標とすることが提案されている(Weissman et al, 2017)。一方で,死生観や悲嘆の表現様式は文化的背景によって異なるため,IPTを実践する際には文化的文脈を踏まえた調整が必要であるとも指摘されている(Moayedoddin & Markowitz, 2015)。本稿では,日本における遺族支援に資する精神療法として,対人関係療法について概説する。

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