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特集 みんなのCBT――社会実装の未来とニュー・フロンティア
パーソン・ベースド認知療法――生きづらさを解きほぐす
南学 正仁
1
1東京大学医学部精神医学教室
pp.152-156
発行日 2026年3月10日
Published Date 2026/3/10
DOI https://doi.org/10.69291/cp26020152
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I はじめに
「生きづらさ」という言葉を耳にする機会が増えた。日常会話にも浸透している語だが,とりわけ心の臨床家のもとを訪れる人たちは,しばしばこの言葉を口にする。「なんでこんなに生きづらいんだろう」と涙を流しながら呟く人もいれば,「生きづらさの原因を知りたいと思って来ました」と話す人もいる。考えてみれば,心の臨床家の仕事の大半は,こうした「生きづらさ」を解きほぐすことにあるようだ。身体の臨床と違って,心の臨床では初診のときから受診理由をすらすらと話せる人はいない。診察室に持ち込まれた,最初は絡まり合った糸のように得体の知れない「生きづらさ」を,話しながら少しずつ解きほぐすことで,徐々にその人の抱えていた物語が明らかになってゆくのが心の臨床である。
本稿で紹介するパーソン・ベースド認知療法(Person-Based Cognitive Therapy : PBCT)は,「生きづらさ」を解きほぐす精神療法である。PBCTは,精神病症状に対する精神療法として2000年代の英国で誕生した。技法的には,従来の精神病に対する認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy for psychosis : CBTp)とマインドフルネスの技法を融合させた治療であると端的に説明されることも多い(Dannahy et al., 2011)。しかし,PBCTの最大の特徴は,精神病症状を有するクライエントの「生きづらさ(distress)」を明確なフレームワークをもって解きほぐしていく点にある。本稿では,PBCTの歴史的背景や根底にある考え方について総論的に述べた後,その治療について各論的に概説する。

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