特集 みんなのCBT――社会実装の未来とニュー・フロンティア
おとなの自閉スペクトラム症のCBT(ACAT)――特性と社会の折り合いをつける
大島 郁葉
1
1千葉大学子どものこころの発達教育研究センター
pp.157-162
発行日 2026年3月10日
Published Date 2026/3/10
DOI https://doi.org/10.69291/cp26020157
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I はじめに
クライエントがCBTを選ぶ理由は,基本的には「自分のため」である。感情のコントロール,怒りのマネジメント,対人関係をよりスムーズにする方法など,必要なスキルを身につけたいから,という動機が多いだろう。
ところが,ときどきクライエント以外の人が別の動機で「CBTを受けさせたい」というケースがある。私はこれを便宜的に「色気のついたケース」と呼んでいる。たとえば,学校に適応できない子どもを「適応できるようにしてほしい」と親や教師が望む場合,職場でうまくいかない部下を「もっと会社に馴染むようにしてほしい」と上司が望む場合などである。
こうしたとき,カウンセラーが最初にすべきことは明確だ。クライエント本人の希望を丁寧に確認することである。CBTは「本人が自分のために行う練習」だから,周囲の都合や期待が治療の中心に入り込んではならない。
この点は,自閉スペクトラム症の臨床でも核心にあたる。親や教師が「もっと普通になってほしい」「このままでは将来が心配だ」と不安や期待(いわゆる“欲”)を語ることはある。しかしカウンセラーは,周囲との協力関係を保ちつつも,周囲の“欲”に自動的に動かされてはならない。治療の主体は,あくまでクライエント本人である。
以下に架空事例を挙げる。

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