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連載 脂質栄養学を盛り上げる 最新研究トピックス⑥
脂肪酸代謝創生学が切り開く 脂質代謝多様性とその生理学的意義
津川 裕司
1
,
岡田 洋平
2
,
江口 晃弘
3
,
宮本 潤基
2
,
馬谷 千恵
2
Hiroshi Tsugawa
1
,
Yohei Okada
2
,
Akihiro Eguchi
3
,
Junki Miyamoto
2
,
Chie Umatani
2
1京都大学 大学院薬学研究科
2東京農工大学 大学院農学研究院
3東京大学 先端科学技術研究センター
キーワード:
脂肪酸代謝物
,
脂肪酸代謝創生学
,
リピドミクス
Keyword:
脂肪酸代謝物
,
脂肪酸代謝創生学
,
リピドミクス
pp.344-350
発行日 2026年9月1日
Published Date 2026/9/1
DOI https://doi.org/10.32118/cn149030344
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- 参考文献 Reference
はじめに
脂質は,エネルギー源,シグナル伝達分子,細胞膜の主要構成成分として機能する,生命活動の維持に必須の代謝物群である.臨床栄養学の領域においても,総脂質摂取量に加え,飽和脂肪酸,不飽和脂肪酸,n-3系およびn-6系多価不飽和脂肪酸の摂取バランスは,血清脂質,慢性炎症,動脈硬化性疾患をはじめとする生活習慣病の発症・進展と密接にかかわることが示されてきた.したがって,脂質代謝を理解することは,疾患予防や先制的介入を考えるうえで重要な基盤となる.一方で,近年の質量分析技術と情報解析技術の発展により,従来「脂質」と一括りにされてきた分子群には,想像以上に大きな構造多様性が存在することが明らかになってきた1).たとえば,同じ炭素数と不飽和度をもつ脂肪酸であっても,二重結合位置異性体,シス・トランス異性体,分岐鎖構造の有無,水酸基や酸化修飾の位置異性体などが存在する.また,アミノ酸や糖などとの結合様式が異なれば,生体内での局在,代謝経路,さらには生理機能も大きく変化しうる.すなわち,脂質の栄養学的意義をより深く理解するためには,単に脂質量や脂肪酸組成,すなわち炭素数や不飽和度を観測するだけでは不十分であり,個々の脂肪酸代謝物の構造,起源,機能を分子レベルで理解する必要がある.筆者らは,この課題に対して「脂肪酸代謝創生学」という新しい学術領域を提案し,脂肪酸代謝物の多様性およびその生理学的意義の理解をめざした研究を進めている.
本稿では,脂肪酸代謝に関するこれまでの知見と臨床栄養との接点を概説するとともに,現在取り組んでいる最新の研究事例を紹介する.

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