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はじめに――大学病院から外傷教育を再興する意義
日本の整形外科手術の約半数は骨折関連である.外傷は整形外科の原点であり,診断,治療計画,手術手技を総合的に学べる最良の教育の場である.しかし多くの大学病院では外傷治療への関与が乏しい.専門分化の進行,救急部門の独立,診療報酬の制約に加え,外傷を専門とする教授が全国的にほとんど存在しないという構造的欠陥がある(図1).教授ポストは脊椎,関節,腫瘍などのサブスペシャルティに偏在し,外傷を主領域として教育・研究を牽引するリーダーが大学に不在である.このため,整形外科専門医カリキュラムで骨折治療が強調されていても,体系的教育と実症例に基づく指導を担う人材配置は脆弱である.
若手医師の外傷教育は実質的に関連病院に委ねられているが,教育の質は施設・指導者により大きく異なる.術前計画,術式選択,周術期管理にわたる「判断の教育」が体系的に継承されにくく,外傷の核心である初期評価から再建戦略までを一貫して学ぶ機会が失われている.優れた指導者に恵まれれば属人的教育でも成果は出るが,そうでない場合には教育が散発的かつ不均質となり,外傷診療の本質は伝わらない.
筆者の専門は感染,偽関節,変形癒合など骨折後合併症であり1),患者の多くは他施設からの紹介である.避けがたい難治例もあるが,稚拙な初期治療が原因と思われる例も少なくない.紹介患者はアライアンスの中核であるべき大学病院を経由せず直接紹介されてくるので,教授自身が関連病院での骨折治療レベルを把握できていない.これは教育機関としての大学が役割の一端を放棄していることを意味し,整形外科基盤教育の空洞化を招いている.本稿では,大学病院が外傷教育を再構築すべき理由とその設計指針を提示する.

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