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Ⅰ eスポーツとゲーム行動症の関連
この20年くらいの期間で,世界中で娯楽としてビデオゲームを行うことが増えてきている。eスポーツ(electric sports)は,種々の定義はあるが,大まかにはオンラインを含めたビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称となっている。プロとしてのeスポーツ競技は,大会の賞金額やその視聴も含め世界中で巨大なマーケットにもなり,特に思春期から青年期の若者の間で人気が高くなっている。そして,eスポーツ活動は,競技活動のレベルから日常生活の延長であるレクレーション活動のレベルまでの広がり,更には高齢者の活動(Takano,2021)としても行われ年齢的な広がりもみられるようにもなり,幅広い層が参加できうる活動となってきている。その反面,eスポーツ活動からビデオゲームの過剰な使用となることによる心理的苦痛や機能障害への懸念が示されている(Chung et al.,2019)。現在,議論はあるものの,日常生活へ影響を及ぼすようなビデオゲームの過剰な使用を嗜癖行動の一つとみなし,国際疾病分類第11版(ICD-11)ではゲーム行動症(Gaming Disorder;GD)として収載され,米国精神医学会が作成した精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)では,疾患ではないものの「今後の研究のための病態」としてインターネットゲーム障害(Internet Gaming Disorder;IGD)が収載されており,公衆衛生および精神保健の問題として認識されている。eスポーツとGD,IGDといった問題のあるゲームの使用との関連については,まだ報告は限定的であるが,eスポーツのプロプレーヤーが,問題のあるゲームの使用となりやすいことが推測されている。Maldonado-Murcianoら(2022)は,COVID-19パンデミック前に行った年齢と性別が一致するプロのゲームプレーヤー2,867名と非プロのゲームプレーヤー2,867名(平均年齢21.47歳,女性が6.94 %)を対象としたオンライン調査で,プロのゲームプレーヤーのほうが,非プロと比較してゲームに費やす時間が長く,GD,IGDの評価についてはどちらも有病率が高いことを報告し,プロのeスポーツ選手がGD,IGDに罹患しやすいことを示唆している。
eスポーツの広がりにあわせ,高等学校でeスポーツ部が創設され活動が行われるようになってきている(eスポーツの窓口, 2024)。筆者らは,地域における高校のeスポーツ部活動の創設にあたって学生のゲームの過剰使用を含めた精神面の健康調査を行った。本稿では,高校におけるeスポーツ部活動における精神面の健康調査の結果やその活動の様子から,高校生のeスポーツ部活動の現状を提示し,GDやIGDの予防に注視したeスポーツ活動のあり方について考えてみたい。

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