特集 アディクション支援のフロントライン
十代における市販薬の乱用,依存―当院における実践
矢島 達朗
1
,
中島 直
2
,
森 秀徳
3
1多摩あおば病院
2多摩あおば病院
3多摩あおば病院
pp.215-220
発行日 2025年6月5日
Published Date 2025/6/5
DOI https://doi.org/10.69291/pt51070215
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Ⅰ はじめに
近年,本邦において,10代,20代といった若年層の市販薬の過量服薬の問題が深刻となっている。高校生に対する調査では,違法薬物の中で最も高値を示した大麻で,過去1年経験率が0.16%である一方,咳止め,風邪薬,解熱鎮痛薬などのいずれかの市販薬の過去1年乱用経験率は1.6%であった(嶋根他,2021)。つまり,市販薬乱用は,大麻の10倍に及び,60人に1人がその経験があると返答したこととなる。「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患実態調査」によると,10代の薬物依存症患者における「主たる薬物」としては,2016年より導入された『市販薬』のカテゴリーが,同年には全体の25%だったものが急増し,2022年には65.2%となっている(松本他,2022)。しかし,こうした事態に対し,その実態や対応策は充分に明確になっているとは言えない。
当院では2022年3月より児童思春期病棟が立ち上げられた。入院してくる子どもたちのうち,市販薬の過量服薬の問題は散見されており,死亡事例もあった。本稿では,本邦および世界的なこの問題の状況を概観するとともに,当院での実態の調査も踏まえ,児童思春期の市販薬依存,乱用について考察する。

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