特集 アディクション支援のフロントライン
医療用麻薬の不適切使用に対する治療
山口 重樹
1
,
武村 尊生
2
1獨協医科大学医学部麻酔科学講座
2獨協医科大学医学部麻酔科学講座
pp.206-214
発行日 2025年6月5日
Published Date 2025/6/5
DOI https://doi.org/10.69291/pt51070206
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Ⅰ 医療用麻薬
医療用麻薬はオピオイド受容体に作用,侵害受容伝達の抑制や下行性疼痛抑制系の活性化によって,強力な鎮痛作用を発揮する。一方,オピオイド受容体は神経系広範囲に存在するため,認知,行動,感情,起伏,性格等にも影響を及ぼし,精神的,スピリチュアルな辛さを含む全人的苦痛をも緩和してしまう(山口他,2023)。
要するに,医療用麻薬は感覚(身)にも,情動(心)にも作用してしまうことが乱用,依存の本質であることをわれわれは理解しなければならない(図1)。そのため, 医療用麻薬は適切に使用されれば,多くの痛みを和らげ,患者の生活の質(quality of life:QOL)を改善する一方,その不適切使用は患者のQOLを容易に低下させる。本稿では,「麻薬及び向精神薬取締法」に指定されているオピオイド鎮痛薬である医療用麻薬を対象に記載する。

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