特集 アディクション支援のフロントライン
依存症に対する治療共同体エンカウンター・グループの実際と意義
引土 絵未
1
1日本女子大学人間社会学部社会福祉学科
pp.73-78
発行日 2025年6月5日
Published Date 2025/6/5
DOI https://doi.org/10.69291/pt51070073
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Ⅰ 治療共同体とは
治療共同体(Therapeutic Community:以下TC)とは,世界各国で展開される支援モデルの一つであり,イギリスの精神科病院における民主的な取り組みに端を発した精神科領域でのTC,アメリカの薬物依存症からの回復を目指した当事者による共同体を原型とするアディクション領域におけるTC,そしてこれらが適用された刑務所内でのTCに大別可能である。本稿が射程とするのは,アディクション領域におけるTCである。アディクション領域のTCプログラムは1960年代に全米に拡大し,その効果とともに世界各国で展開され,発祥国であるアメリカでは代表的な長期入所プログラムとして位置づけられている(NIDA, 1995)。アメリカの著名なTC研究者であるDe Leon(1995)はその特徴を「方法としてのコミュニティ」であるとし,以下の点が含まれるとする。①共同体生活やグループ活動への積極的な参加を活用し,個人の変化と回復を促すこと。②社会的学習とセルフヘルプに重点を置き,メンバーは仲間の回復の責任の一部を引き受けることである。 近年,日本国内においても,官民協働刑務所でのTCユニットの導入(毛利・藤岡,2018),当事者による依存症回復支援施設などでのTCモデル(栗坪,2009),また,TCモデルを基盤としたグループの導入(引土他,2018)など,実践レベルでのTCモデルが散見されるようになっている。

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